今日でテスト週間も終わりだ。

結果の惨敗さ加減は、すでに双魔の思考にはない。

今日まで封印してきた趣味関係の本を存分に読みこむぞ、と――意気揚々と家に帰って来たのが、昼時。

いただきますのそのあとに

「あれ、神無…………めずらし、こんな時間に家にいる」

「いたら悪いか」

素直な感想をこぼした双魔を、リビングのソファにそっくり返って座っていた神無は、微妙に不機嫌に睨んで来た。

考えてみれば、神無と双魔は同じ学校に通っている。双魔がテスト明けで早帰りできるなら、神無も同じだ。

ただ、そういった常識的な判断とは別に、神無が昼間、家にいるのは珍しい。そもそも、きちんとテストを受けていたのかどうかも。

「悪くないけど」

もごもごと気弱につぶやいて、双魔は鞄を放り出した。昼は適当にパンでもつまむだけのつもりだったが、神無がいるなら話は別だ。

なにかしらの食べ物を、きちんと用意しなければならないだろう――調理能力などなきに等しいから、冷凍食品を温めるだけだが。

双魔はさっさとブレザーも脱ぐと、同じく放り出した。

「チャーハンでいい?」

駄目だと言われても、それ以外に用意できるものはない。答えがどうあろうとチャーハン以外にするつもりもなく、双魔はリビングを出た。

キッチンに行くと、まずはエプロンを掛ける。

冷凍庫からインスタントのチャーハンを出し、冷蔵庫からは刻みネギの入ったタッパーを出した。これは台所を預かる父親が、常備菜のひとつとして切り置きしているものだ。

単なる冷凍のチャーハンとはいえ、そこに生の刻みネギを足して炒め直すと、格段に味が上がる。

つまらない小細工ではあるが、しないよりはいい。

多少ご機嫌で、双魔ははなうたでもうたいだしそうな風情でフライパンを出して、油を引いた。適当に熱したところで、チャーハンと刻みネギを放り込む。

しばらく炒めて、全体に温まったところでコンロの火を消した。

「お皿…………………?」

「………………」

振り返ると、キッチンの戸口に神無が立っていて、じっと双魔を見ていた。瞬間的に竦んだ双魔だが、神無がそれ以上、なにか言うでもするでもない。

眼光の鋭さこそ気になるものの、それに引っかかっていると、そもそも神無といっしょには暮らしていられない。

双魔は首を傾げたが、特になにを言うでもなく、食器棚の前に行った。

「んっと………っわっ?!」

食事の管理は父親がしている。食器の管理も同様だ。

チャーハンに適した皿がすぐに見つからず、探して目を彷徨わせていた双魔を、いつの間にか近づいていた神無が後ろから抱きしめた。

驚いて振り返った双魔に、神無は下半身を押しつける。

「やらしい恰好してんじゃねえ」

「や………らしい?!んっ」

意想外な言葉に瞳を見開いた双魔は、すぐにくちびるを噛んだ。

抱きしめた神無の腕がエプロンの中に入りこみ、シャツの上から胸を撫でている。その手は平らにならされた胸から乳首をつまみ出して、きゅっと捻った。

「ゃ、かんな………っ」

揺れた腰に、押しつけられる神無の熱がある。ごりっとした硬い感触に、双魔は再び震えて、神無の腕に縋った。

「神無……っ」

「新妻か、おまえは」

「え……?!」

つぶやかれる言葉に、双魔は眩む頭で疑問符を飛ばした。振り仰ぐ双魔に、神無はくちびるを吊り上げる。

凶悪な笑みに、双魔はびくりと固まった。

「定番の台詞でも吐きそうだ。『ごはんかお風呂か、それとも』」

「え……?」

言っていることが、さっぱりわからない。

つままれて弄ばれる乳首がじんじんして、腹がきゅうっと締まる。がくがくと震えるだけの双魔を、神無は軽々と抱き上げた。

「言えよ。『ぼくにする?』って」

「神無……?」

笑い声とともに吹きこまれた言葉が、双魔の中では意味が繋がらない。抱き上げられてキッチンから連れ出され、神無の部屋のベッドに転がされても、双魔は戸惑うばかりだ。

「神無………ごはん………」

「だから、訊け。『ぼくにする?』って」

「ぼ………ぼくに、する?」

それは訊けと言われるままに訊いたというより、それってどういう意味だ、と問うものだった。

しかし神無は莞爾と笑い、ベッドに転がした双魔に伸し掛かった。

「ああ。おまえにする」

「え…………って、あ……っ!!」

答えられて、双魔はようやく神無の話を繋げることが出来た。

新妻→『ごはんにするお風呂にするそれとも、あ・た・し☆?』→『おまえにする』。

「って、なんで新妻?!ぼくなにしたの?!!」

慌てふためく双魔に、神無はエプロンの紐を軽く引いた。

「エプロン……?!」

双魔は自分の姿を見下ろし、さらに混乱した。

確かにエプロンはしている。しかし、いわゆる『新妻』仕様のふりふりエプロンではなく、ごくシンプルでシックな、男向けのエプロンだ。

これで新妻の発想はない。

混乱する双魔に、シャツを脱ぎ捨てながら、神無は吐き出す。

「帰って来て人の顔見るや、飯の支度に行きやがって。まるっきり嫁だ」

「ええ………?!」

なにが神無の琴線に触れたのか、双魔にはさっぱりわからない。

とはいえこれは、いつものことだ。双子だというのに、神無がなにに心動かされ、衝動を抱くのか、双魔にとっては常に理解不能。

そして戸惑う間に、転がされて脱がされ、――

「か、んな………んっ」

するの、と訊く前に、くちびるをくちびるで塞がれた。上半身を脱いだ神無が伸し掛かり、エプロンの下に潜りこんだ手が双魔のシャツのボタンを外していく。

エプロンが抜かれ、シャツが開かれた。露わにされた肌はうっすらと朱色に染まり、そこにさらに赤く染まった蕾が、つぷんと勃ち上がっている。

「無防備だよな、おまえ」

「なにが………んんっ」

ちゅっと音を立てて乳首を吸われ、双魔はびくりと竦む。

神無の口は双魔の胸を舐め辿り、手は下半身に掛かった。躊躇いもなくズボンが抜き去られ、下着も取られる。

神無が言う以上に無防備な姿にされた双魔は、ぎゅっとシーツを掴んだ。

神無の指が締まる窄まりを押し、襞を撫でる。

「んく……っ」

「いつまで経ってもきつきつだな」

「……っ」

つぶやきに、双魔はさらに真っ赤に染まった。

ぎゅっと目を閉じて枕に顔を埋めた双魔を見下ろし、神無は肩を竦める。一度立ち上がって離れると、机から専用ジェルを取り出して戻ってきた。

「力抜いてろ」

「ぅ………っんんっ」

言われて咄嗟に瞳を開いた双魔は、すぐに竦んで、再び瞳を閉じた。押し当てられたチューブから、腹の中へと冷たいものが押しこまれる感触――

「ゃ………ぁんん………っっ」

「とりあえずは、いいか………」

「ふ……っ」

双魔は涙目で、神無を見る。下半身がぐちゅぐちゅして、気持ち悪い。

蠢く襞を見ていた神無は、ふと目を上げて、そんな双魔を笑った。

「痛いの嫌いだろうが。大体にして……」

「んっ」

ぴんと指で弾かれたのが、震えながら勃ち上がり始めている双魔のものだ。

「こうしておいて、嫌も糞もない」

「ぅ……っ」

「力抜け。指入れるぞ」

「ぁ…」

双魔がなにを言う暇もなく、神無は濡れるそこに指を入れる。ぬめった中を掻き回されて、双魔はくちびるを戦慄かせて仰け反った。

「かん、なぁ………っ!」

「ぎゅうぎゅうに食いついてくる。大人しい顔して、おまえは……」

「ゃ、あ……っ神無………っ」

甘い声で悲鳴を上げる双魔を見つめ、神無はごくりと咽喉を鳴らした。

細い体だ。運動をしない以上に、発育が悪い。

そこに赤い蕾を勃ち上がらせ、腹をきゅうっと絞めて、ピンク色をしたかわいらしい男の証を突きだしている。

大きな瞳が潤んで熱を含み、小さな口から舌が覗く。つまむとふんやりとやわらかい頬が赤く染まり、咬むと必ずかわいい声を上げる耳朶までが色づいている。

「………本当に、無防備だ、おまえは……」

「神無ぁ……っ」

甘くあまく呼ばれて、神無は指を抜いた。ズボンを寛げると、触れることなく硬くなった自分を取り出す。

ひくつきながらジェルをこぼす場所に、自分を押し当てた。

「ぁ……っ」

びく、と一瞬引きつった双魔だが、神無は構うことなく、腰を押し進める。

「ん……っぁ、ぁあ………っぁ、かん、なぁ………っ」

「手を回せ」

シーツを掴んで仰け反る双魔に、神無は低く命じる。命じられても、双魔は咄嗟に応じられない。

神無はやわらかく、しかし強引にシーツから双魔の手を取り、自分の背中に回させた。すぐに爪が立ち、縋りつかれる。

「かんな………かんなぁ……っ」

「きついな…………いつやっても、食い千切られそうだ」

「んん……っ」

ささやきながら首を舐められ、さらに双魔は神無を締めつける。笑って、神無は腰を動かした。

「美味いか、双魔?」

激しく突き上げられながら訊かれ、しがみつく双魔はぼろぼろと快楽の涙をこぼして頷いた。

「ん……っぉいし………っ神無、おぃし……い………っ」

「中に入れてやるからな。たっぷり食えよ?」

「ぁ、んん………っ」

痣が出来そうなほどに激しく、神無は腰を打ちつける。そうでなくても大きいものが腹の中でさらに膨れ上がり、太さと硬さを増して、掻き混ぜられる。

しがみついて背中に爪痕を残しながら、双魔は立てた膝で神無の体を挟みこんだ。

「ィく、………っかんなぁ、イっちゃう………っ」

「いいぞ、イけ………」

「んん……っ」

一際深く抉られて、双魔は大きく震えると絶頂に達した。腹の間に挟まれて揉まれていたものから、白濁した体液が迸る。

自分の体を自分で汚した双魔は、腹の中の神無をきつく締め上げた。

「出すぞ……」

「ぁ………っぅう………っ」

耳元で低くささやかれたと思った瞬間、双魔は腹の奥で熱が爆ぜるのを感じた。

「は………っ神無……っ」

「双魔………」

びくびくと震える双魔の頬に、神無はくちびるを落とす。そのまま辿って耳朶を撫でると、やわらかいそこを噛んだ。

「ぁ……っ」

「…………」

縋りつく双魔に、神無は吐息をこぼす。残滓まで吸い取られるように、双魔の内襞は締まり、蠢いている。

入れている限りは何度でも復活出来そうな気がするが、神無はとりあえず一度、双魔の中から出た。

「ん……っ」

抜けていく感触にも煽られて、双魔はさらに大きく体を跳ねさせる。

体を起こした神無は、双魔の足元に座った。ひくつく場所に指をやり、軽く開く。こぽりと白いものが溢れ出てきて、神無は陶然と瞳を細めた。

「神無………ゃだ…………っ見ないで………」

羞恥に掠れる声で乞われ、神無は笑って指を離す。安堵に緩む体に伸し掛かると、濡れる目尻にキスを落とした。

「双魔」

「ん………」

名前を呼ぶと、双魔は手を伸ばした。神無の首にかけ、引き寄せてくちびるにキスをする。

触れるだけのやさしいそれで離れ、双魔は神無に擦りついた。

「だいすき、神無………」

こぼされた言葉に満足そうに瞳を細めると、神無は双魔を抱きしめ返した。

「ごちそうさん」