「ひまよーひまなのよー十六夜、あそぶのよー!!」

さけびながら、上弦が廊下をはしってくる。

廊下はついさっき、顔がうつるくらいぴかぴかにみがきあげたとこで、つまり。

三十三間堂

「ひぃやっほほほほーうう!!」

「(@○@)!!」

なんかへんな声をあげて、上弦はつるつるすべって俺をおいこしていった。その上弦のあとから、下弦もつるつるとすべっていく。

そして、つきあたりの壁にどっかんこ!

「わあぁ、だいじょうぶ?!」

「いったぁあああいわよぉ!」

「(>_<)!」

――と、いいながら、上弦と下弦はまたも廊下をはしる。

俺をぬいて、つるつるるんとすべっていって、今度は廊下をまがりきれずに、欄干にぶつかって庭へと、あたまからおちていった。

「あああちょっと、上弦、下弦?!」

「ぃいいいったぁああああい!」

「(ToT)」

で、また廊下にとびのると、つるつるつるるん…どっかんこ!、のくりかえし。

「ちょっと、上弦も、下弦もあぶないおあそびしちゃだめーっ!」

さけぶけど、あたらしいおあそびにむちゅうになっちゃったお子さまたちはぜんぜんきいてくれない。

そもそもこの、あそびたい盛りのおとこのこふたりに、カンタンにいうこときかせられるって考えがまちがい。

俺がおろおろとするあいだにも、つるつるどかーん、つるつるどびゅーんと、元気いっぱいはしりまわってすり傷だらけあざだらけになっていく。

「ああもう朔っ、朔ぅーっ」

半べそでさけんだところで、部屋でおべんきょしていた朔が出てきてくれた。

眉間にいっぱいシワをよせて、つるつるどっかんこをくり返す上下をにらむ。

朔は上下を追いかけるわけでもなく、ぶつぶつと口のなかでつぶやき、指をへんなカタチにうごかした。

「おひょぉおおお?」

「((+_+))!」

つるつるすべーんとしていた上下が、ぴったり止まる。

朔はずかずかとあるいてきて、うごき途中で止まっちゃった上下のくびねっこをつかんだ。

「十六夜泣かせんじゃねえんだよ、狛ども。遊ぶのがこなたらの本分だから多少は大目に見てやるけどな」

「だってたのしいのよーつるつるすべすべどっかんこするの、すっごくたのしいのよー!!」

「(>o<)」

口だけは自由になるみたいで、上弦がすっとんきょうな声でさけぶ。下弦もそうだそうだと主張。

朔が、きりきりとつりあがった目で廊下と上下をみくらべた。

「ときめきとこうふんなのよ、こんなぴっかぴかをみのがすなんてありえないんだわっ」

「\(◎o◎)/!」

「…」

コーフンしていいつのる上下に、朔はだんまり。眉間のシワが、ぴくぴくしている。

「…朔?」

ちょっぴりいやな予感がして声をかけたけれど、おそかった。

ぽい、と上下をほうりだすと、朔はもっのすっごくいきいきとした顔で廊下をはしりだした。

「いぃええええええい!!」

「わあああん、朔ぅううう!!」

つるつるん、どっかんこ!つるつるん、どびゅーん!

「ちょ、朔ぅ朔ぅう、さぁあくぅうう朔は上下とちがって人間なんだからほんとにあぶないぃいいいい!!」

さけぶ俺の声も、あそびたい盛りのおとこのこにとどくわけがない。

朔はあざだらけになって、ついでに自分の家もこわしまくりながら、あぶないおあそびにむちゅう。

そのうしろを、上下がつるつるどびゅーんとついていく。

おくの部屋から出てきた蝕が、ぐすぐすとべそをかく俺の肩をたたいた。

「オノコはやんちゃなくらいがちょうど良いぞ。なに、ケガをしてなんぼだ。大丈夫じゃ、そうそう壊れやせぬ。家もあれも、どちらもな」

「蝕ぅ~」

いちばんの年長さんらしくおちついている蝕は、目の前をすごい速さでとおりすぎようとした下弦のくびねっこをひょいとつかんで、胸にだきこんだ。

ばたばたあばれる下弦のあたまをよしよしとなでる。

「あまりひやひやさせるでない。そなたらが頑丈なことはわかっておるが、だからといって乱暴に扱うものではないぞ」

「<(`^´)>」

やさしくいいきかせる目のまえを、朔が光のようにすぎていく。

どっかーん、のあとにはなぜか、けたたましい笑い声。

「さくぅうう…!」

ぐすっ、とはなをすすった俺に、蝕は下弦をなでなでしながら苦笑い。

「子ども扱いは厭じゃというても、これではのう…」