しとしとぴっちゃん。しとしとぴっちゃん。
雨、見てると。
天の泪
「なにか思い出しでもしたか」
縁側に座って雨を見ていた俺に、かたわらに立った朔が、静かに訊く。
でも。
思い出すって、なにを?
「…いい。別に、思い出したわけじゃないなら」
「?」
見上げた朔の顔は、なんでか、歪んでかすんで。
ゆらゆら、揺らいで、流れて。
「しあわせか、十六夜」
「うん」
うなずくと、朔の手が俺の頭をいいことなでた。
小さい手だ。
でも、あったかくて、力強くて、たのもしい。
俺の手を引いて歩いてくれる、俺にしあわせを呉れる手だ。
「ならば、いい。好きなだけ泣け。赦す」
「…っ」
泣いてる?
ああ、そうか。
俺、泣いてるから、こんなに視界が悪くて。
「ふえ」
自覚したとたん、もっともっと涙がぼろぼろこぼれて止まらなくなった。
「ふええ、ふえええ」
声を上げて泣く俺の頭を、朔のちっちゃい体がやさしく抱きしめてくれた。
「こなたの主は寛容だ。胸を貸してやる」
「ふぇえええ」
頭をなでられて、あったかい胸にくるまれて、俺は涙が止まらない。
俺が泣き止むまで、朔はずっとずっと、俺のことを抱きしめていてくれた。