「おまめ」

「「そして呼ばれて飛び出た我ら地獄の門番牛頭馬頭!!」」

「ぶつけるのよ、十六夜!!」

「(((゜ロ゜)))」

まめはくち

呼気鋭く叫んだボクと下弦に、十六夜はきょとんとしながらも、枡に盛られたおまめを牛頭と馬頭に投げた。

「ひぎぃっ、痛いっ!!真冬の最中に素肌に豆は、地味に本気で痛いっ!!」

「ふもぉっ、しかもかなり本気で投げられている!!力の入りようが半端ない!!」

びしびしと音を立てて当たったおまめに、馬頭も牛頭も情けない悲鳴を上げる。

十六夜が困ったように、ボクと下弦を見下ろした。

「いたいっていってる……」

「<(`^´)>」

「下弦の言うとーりよ、十六夜。痛くするのが目的なの。ボクらは彼らに、ヨロコビを与えているのよ」

「ヨロコビ………」

十六夜はわずかに引きつって、ひいひい言う馬頭と牛頭を見た。

腰みのいっちょのまちょ男。頭がうまとうしだけど。

そのまちょ男に、痛み=ヨロコビ。

「……っっ」

「(-"-)」

「そうよ、引いちゃダメよ、十六夜!!これぞ日本の伝統行事、『まめまき』!!今日この日は、全国各地にいる鬼という鬼に、自分の被虐趣味を思い出させ、ご主人さまへの帰依を誓わせる日!!容赦すれば、ご主人さまを見いだせなかった哀れな被虐趣味の鬼が残り、ノラ鬼となった彼らはご主人様を求め、」

「やめんか、狛共!!」

言い募る途中で、ボクと下弦の頭におまめがぶつけられた。

「祓うぞ、貴様ら!!十六夜に適当なことを教えるなと、あれほど!」

「朔」

同じく枡を持った朔が、まさに鬼の形相でボクたちを睨む。わあ怖い。

そのまま、朔はきりっとして、ヘンタイに怯えてしっぽが股に入り気味の十六夜を見上げた。

「今日は鬼祓いの日だ。聖なる豆をぶつけ、社から鬼を祓う」

「おにばらい……」

「そう、いくら追い払ったところで、うちの祀神がロクデナシのズボラだから、すぐにまた入り込んでくるんだがな………っ」

きりきりと奥歯を鳴らすと、朔は再びおまめを掴んだ。

期待に震えながら見つめる牛頭馬頭に投げつける。

「おぉにぃはぁあああああっっそとぉおおおおおおっっ!!」

「「ぃぎぃいいいいいいいいいっっっ!!」」

「(((+_+)))」

ほんとね、下弦。凄まじいまでに日頃の恨みつらみが篭もったおまめだわ………!!

十六夜のときとは比べものにもならない音を立ててぶち当たったおまめに、二頭はごろごろと転げ回る。

「さ、朔………!!」

十六夜が、慌てて朔と牛頭馬頭の間に入った。

「だ、だめだよ、いくら鬼祓いの日でも………こんなふうにいじめるなんて」

「十六夜。退け。こなたも俺の式神となった以上…」

「おにくはすとれすかけ過ぎると、固くなってまずくなるって言ってたよ!!そうでなくても筋肉質なんだから、これ以上まずくしたら、朔が食べられなくなっちゃう!!」

「………」

朔は黙りこみ、ボクと下弦は未だに畳で転がっているまちょ男を見た。

まあ、うま頭でうし頭よね。頭はね。頭は。

瞳をうるるんと潤ませた十六夜は、お祈りするように手を組んで、言い募る。

「俺は、俺は、ちょっとくらい筋肉質でも、おにくだったらなんでもおいしく食べるけど、朔は違うでしょやわらかくって、脂ののったおにくじゃないと、食べられないでしょだから、だから……!!」

懸命に言い募る十六夜に、朔は深くふかくため息をついた。おまめを掴む。

「朔………!」

「こなたがそこまで言うなら、仕方ない」

言いながら、朔はずかずかと牛頭馬頭に近づくと、ようやく身を起こした二頭の口に、おまめを突っこんだ。

「がふがふっ?!」

「ごふごふっ!!」

朔は次から次へと、牛頭馬頭の口におまめを突っこんでいく。

「ええっと、朔………なにしてるのかしら?」

訊いたボクに、朔は渋面で振り返った。

「畑の肉と言われる大豆を食わせて、健康的に太らせている」

「(゜ロ゜)」

「……………ええ、そうね、下弦………」

どこまでも、十六夜には甘いわ……………それも無意味な方向で。

うれしそうに笑った十六夜が、自分の枡に入ったおまめを朔に手渡した。