蜜日蜜夜

このたび、およめさんを貰いました。

俺なんかにはもったいないくらいのいいひとです。細かいことにもよく気がついてくれるし、そのフォローの仕方のさりげなさとか、半端ないです。

しかもこまねずみみたいに、っていう言葉がありますけど、そんな感じでこまこま動き回るのを苦にしないひとなんです。いつもにこにこ笑顔で、くるくるくるくる立ち働いてくれるのを見ると、なんかもう、ああほんといいよめさん貰ったなー、俺もがんばんなきゃって。

そのうえ、こんな気立てのいいおよめさんなのに、顔もきれいなんです。もう、芸能人とか霞む感じで。

ちょこん、と首を傾げて、

「高鳴さん」

なんて呼ばれると、そのかわいさで三日間くらい寝ずに働けます。

スタイルもよくって、無駄な肉が全然なくて、すごく引き締まっていて。

胸なんか真っ平で、むしろ胸板がしっかりしている感じですけど、そこもいいです。腰はくびれてないですけど、余計な脂肪がついてなくて、きれいなラインを描いています。

もう、ほんと俺にはもったいないすてきなおよめさんなんです。褒め言葉だけで、本が二、三冊書けます。

けど。

いっこだけ、ちょっと、その。

よく、わかんないことがあって。

「えっと、あの、時生さん」

夜です。

新居には、ちょっとがんばって買ったクイーンサイズのベッドがひとつ。

ここに夫婦二人で並んで寝ますけど、まあ、寝るだけじゃ済まないのも夫婦です。

俺もそれは重々承知してますけど。

「はい、なんですか、高鳴さん」

薄明りの中で、およめさんがうっとり微笑んで、ちょこんと首を傾げます。すっごくかわいくって、俺のいけない雄はそれだけでずくんって疼きます。

疼くんですけど…。

「あのその、時生さんは俺のおよめさんですよね?」

「その通りですよ。まさか、違うとおっしゃるつもりですか、旦那様?」

ちょっぴり悲しそうに眉をひそめて、およめさんは俺をじっと見ます。

ああ違うんです、そんな、否定したいとかそんなつもりじゃなくて!

俺は慌てて、首と手を振ります。

「まさか、そんなそうじゃなくて…」

「はい」

およめさんは、おとなしく俺の言葉を待ってくれます。俺はうろうろ視線を彷徨わせて、ちょっと首を傾げました。

俺がそんなことしても、およめさんみたいにかわいくはならないんですが。

「あの、それだったら、どうして俺は毎回まいかい、押し倒されているんでしょう…?」

「…」

クイーンサイズのベッドの真ん中で、俺はごろんと転がされています。その上にはまだパジャマを羽織ったままのおよめさんがいて、俺の体をしっかりと組み敷いています。

組み敷いているといっても、およめさんのほうが小柄ですし、華奢なので、乗っかっていると言ったほうが近いかもしれませんが、俺がおよめさんを乗っけたわけではないのです。

およめさんが俺を押し倒して、その上に乗っかったのです。

俺の質問に、けぶるみたいなきれいな瞳をきょとん、と見張ったおよめさんは、しばらくするとくすりと笑いました。夜の薄明りの中で見ると、月下美人みたいな、いけない色香に満ちた笑みです。

そして、ごはんを作ったり繕いものをしたり、器用にいろいろしてくれる指で、するりと俺の胸を撫でました。

「押し倒されるのに飽きましたかでも、騎乗位では…俺が高鳴さんを抱えきれる自信がないんです。非力な身ですから」

「あ、えっと、騎乗位とか正常位とかいう話ではなくですね…っ、その、俺が、あの、毎回、ええと、時生さんにツッコまれているのは、…その…時生さん、およめさんなのに…」

しどろもどろになって言った俺に、俺の体に跨ったおよめさんは、くすくす笑いました。

腰を浮かせると、胸を撫でていた手を俺の下半身へと回します。

細い指が、潤うことはない俺の窄まりを軽く押しました。

「…んっ」

それだけなのに、馴らされた体は鈍痛にも似た感覚を走らせて、俺は小さく震えました。

およめさんは、そのまま、やわやわと入口を揉みます。

「それはね、高鳴さん。あなたが、ここに、いれられるのが好きだからですよ。いれられて、ぐちゃぐちゃに掻き回されるのが、大好きだからです」

「ぁ、時生、さんっ」

入口を揉まれているだけなのに、俺の雄ははしたなく勃ち上がっていきます。そこを揉むだけではなく、中に入れて掻き回してほしくて、むずむずします。

腰が揺れそうになって、俺は懸命に呼吸を継ぎました。

そんな俺を見下ろして、時生さんはくすくすと笑います。

「高鳴さん、いれるよりいれられるほうが好きなんですもの。それも、ちょっと痛いくらいのほうがお好きでしょう?」

「ぁ、そんな、ことっ」

「あるでしょうほんとは、あんまりほぐさないでほしいんですよね。強引にいれられて、擦られるのがいいんでしょう」

「そんなっ」

囁かれる言葉に声が上擦りそうになって、俺は手のひらで口を覆いました。

実際、確かにちょっと乱暴なくらいのほうが感じますけど…そんなふうに言われると、まるで俺が変態みたいに聞こえませんか?

およめさんは愉しそうに笑うと、ひくつき始めた窄まりから手を離しました。

「ぁ…」

物足らなさについ、およめさんをじっと見てしまいます。

きれいなおよめさんは、また俺の腹の上に座ると、パジャマの裾を持ち上げました。

ぬめるような白い肌の下に、そこだけ卑猥な色をしたものがびくびく脈打ちながら反り返っています。

俺の咽喉がごくりと鳴りました。

どこもかしこも細くて華奢なつくりのおよめさんですけど、持ち物は立派です。今も十分大きいですけど、中に入って爆ぜるときには、もっと大きくなって、太くなって。

「ほしいでしょう、高鳴さん?」

「はい…」

訊かれて、俺は素直に頷いてしまいます。脈打つおよめさんのものから目が離せません。

これが俺の肉壺を引き裂いて入って来て、膨らみながら、脈打ちながら、粘膜を擦り上げて。

奥の奥のほうに、内臓が爛れそうなほど熱い精を掛けられることを考えるだけで、イきそうになります。

触られる前から、思い出だけでイきそうなくらい反り返っている俺の雄を感じているはずなのに、およめさんはちょっぴりいじわるに笑いました。

いじわるに笑っても、やっぱりおよめさんはきれいでかわいいです。俺のいけない雄がびくびく震えます。

「だめですよ、高鳴さん。そうじゃないでしょう?」

「え…」

「おねだりの言葉は、きちんと教えて差し上げたでしょう?」

「…っ」

およめさんはねっとりと囁き、パジャマの裾から手を離すと、俺の上へと伸び上がって来ました。

おねだりの言葉。

は、もちろん、覚えていますけど。

「ぁう…」

恥ずかしくて顔を背けた俺に、およめさんが至近距離で笑います。窄まりを揉んでいた指が、今度は俺の胸の突起をくるくるとこねくり回し始めました。

くにくにと指先で揉まれているだけで、突起が硬くしこっていきます。つん、とたち上がると、ちょっと痛いくらいにきゅ、とつままれました。

「んぁっ」

痛みとともに走った快感に、俺の背が仰け反ります。

およめさんが小さく笑って、もう片方の突起にくちびるを付けました。ぬめる舌でねろねろと舐められて、ミルクも出ないのにちゅうちゅうと吸われます。そのたびに背中から下半身へと電流のように快感が走って、俺はびくびく震えました。

はじめはこんなじゃなかったはずです。胸を触られても、くすぐったいくらいでした。

でも、およめさんが根気強く愛撫を続けて、今ではここも立派な性感帯です。

「高鳴さん、痛いのお好きなんですよね」

胸に口を付けたまましゃべられて、吐息と撫でられる感触だけで俺は泣きそうになります。

その俺に、およめさんはにっこり笑いました。

「高鳴さん、ほら」

「え…っぁあああっ!!」

真珠のようなおよめさんの歯に突起を齧られて、俺は悲鳴を上げました。

痛いです、ひどいです。

でも、痛みと同時に、体を走ったのは紛れもない快感です。それも、頭の中が真っ白になるほどの。

「ひ…っ、ぁああ……」

瞳を見開いて、浅い呼吸を継ぐ俺に、胸から顔を上げたおよめさんが伸び上がってきて、愉しそうに顔を覗きこみます。

「ほら、高鳴さん。痛いのお好きですね」

「そんな」

否定しようとした口を、およめさんのくちびるが塞ぎました。

ねとつく舌が潜りこんできて、俺の口の中を探ります。伸ばした舌を吸い上げられて、歯列をなぞられて、俺は苦しさにおよめさんの細い体にしがみつきました。

「だって、高鳴さん…ほら」

そんな俺をあっさりと放して、およめさんは少しだけ体をずらします。白魚のような手が、ぶるぶる震えて汁をこぼす俺の雄をきゅ、と掴みました。

「触ってないのに、こんなにして…。痛くされて、感じてしまったんでしょう?」

「あ…」

隠しようもない事実を指摘されて、俺はぐす、と洟を啜りました。

あたたかい手で俺の雄を撫で扱くおよめさんは、ひどく愉しそうに、今にも弾けそうな俺を見ています。

「もうちょっとすれば、きっと、胸だけでイけるようになりますね。そうだ、試してみましょうか?」

「時生さん…!」

そんなまるきり変態みたいなこと、嫌です。

無言で訴えた俺を、およめさんはうれしそうに見返しました。

「どうして高鳴さんが淫乱な変態さんになるなんて、とってもすてきなことでしょう俺の夢なんですからね、淫乱で変態な高鳴さん」

「時生さん!」

そんな夢抱かないでください!

悲鳴を上げた俺に、およめさんはくすくす笑いました。俺の雄を握る手に、わずかに力が篭もります。

「んっ」

耐えられない疼きが走って、俺は震えました。咄嗟に瞳を閉じて堪えた俺の耳に、およめさんのくちびるが当たります。

「だって、高鳴さん…。こんな感じやすくて、痛いのが好きで、なんて…。これで淫乱の変態さんを目指さずに、なにを目指すんです?」

「なにも目指さなくていいです!」

叫んで、俺はちょっとだけ威厳を込めておよめさんを見つめました。

「あと俺は、痛いの好きじゃありません!」

「…」

そんなことを認めたら、ほんとに変態です。

きっぱり言った俺を、およめさんはきょとんと見つめ。

にっこり、すごくうれしそうに笑いました。

「じゃあ、今日は、いーっぱい、ローション使いましょうか。時間をたっぷりかけて、高鳴さんの体がどろどろに蕩けるまで、ここをほぐして」

「ぁう」

雄を掴んだのとは別の手で、窄まりを押されて、俺は小さく呻きました。

入口をやわやわと揉みしだきながら、およめさんは愉しそうにたのしそうに言葉を続けます。

「すっごく、やさしくやさしく、してあげましょうか。女のひとみたいにびちゃびちゃになるくらいまで、たくさん濡らしてあげて」

「ひぅ」

「そうだ、ゴムも付けましょうね。夫婦だから要らないかと思って付けてませんでしたけど、あれを付けると、挿入がスムーズになりますよ。すべるみたいで、全然引っかからなくなります」

入口から手を離して、およめさんは俺の雄を両手で握りました。きゅ、と搾り上げるように扱きながら、とろとろと汁をこぼす先端をやわらかく撫でます。

「ちっとも、痛くないですよ」

「ひぁあっ?!」

言葉とともに、親指が先端にめり込んで、全身に痛みが走ります。それと同時に堪えようもなく快感が募って、俺の頭が白く弾けました。

およめさんの手の中で、俺の雄が精を吐き出します。

「ぁ…は…っはぁ…っ」

びくびく震えながら息を継ぐ俺に、およめさんが伸び上がって来て、至近距離でにっこり笑いました。

「俺だって、愛する旦那様に痛い思いなんかさせたくないですからねそうしましょうか、ね?」

「ぅ……」

意識が飛びそうなほどの快感の余韻で、俺の頭はうまく働きません。

それでも、およめさんに、すごくいじわるなことを言われたのだけはわかっています。

「ゃ…です…」

「はい?」

小さく言った俺に、およめさんは首を傾げます。

ほんとにかわいいです。

イったばかりなのに、俺の雄はまたずくん、と疼きました。

俺は深呼吸をくり返して荒れる息を押さえると、およめさんをじっと見つめました。

「ぃやです……っ」

「んー」

およめさんが、困ったように顔をしかめます。

「なにがいやでしょう?」

「…」

訊かれて、俺は口ごもりました。

それを、はっきり言え、と。

よく気がつくおよめさんなんだから、口にしなくても、ぜったいにわかっているはずなのに。

ベッドの中では、およめさんはちょっといじわるになると思います。

ぐす、と洟を啜って、俺はおよめさんを見つめました。およめさんはやさしい顔で見返してくれます。

でも、わかった、とは言ってくれません。

「…ぃたいの、すきです……らんぼうなの、きもちいいですぅ……」

泣きそうになりながら、小さい声で言いました。これで、聞こえません、なんて言われたら、本気で泣きます。

でも、およめさんはそこまでいじわるじゃありませんでした。

「そうですよね。よく言えました」

「んん…っ」

褒め言葉といっしょに、くちびるが降って来ます。

ちゅ、ってかわいいキスをされて、俺は真っ赤になりました。

こっちのほうがいやらしくないのに、なんだか、ずっとずっと恥ずかしいです。

およめさんはにっこり笑って、濡れた指を後ろの窄まりへと回しました。

「高鳴さんは、痛いほうがお好きなんですよね。あんまり濡らさないで、あんまりほぐさないで」

「ぅう…っ」

「切れそうなくらいに激しく突かれると、堪らないんですよね」

「ひぅ……」

そこまではっきり言うと、やっぱり俺がすごく変態みたいです。

でも、心はしくしく痛んで泣きたいのに、俺のはしたない雄が、びくびくと震えながら悦んでしまいます。

「変態さんですね、高鳴さん」

「あぅっ」

濡れた指が、とうとう、粘膜の中に入って来ました。

華奢で細い指ですけど、はじめはやっぱり違和感と痛みがあります。でも、その痛みを感じると、おなかがぞわぞわして、さっきとは別の意味で泣きそうになります。

「んんぅ…っ」

「高鳴さんが変態でよかった」

俺の粘膜の中を探りながら、およめさんがぽつりとつぶやきます。

「だって、こんなかわいい姿見たら、俺、余裕ないですからね。どろどろに蕩かすまでなんて、とても待てません。今だって、すごく我慢してるのに」

苦しそうに言うおよめさんのものは、びっくりするくらい大きくなって反り返っています。

無意識に、俺の咽喉が鳴りました。あれをいれられて、掻き混ぜられて、突かれて。

「高鳴さん……っ」

「ふぁ、時生さん……っ」

切ない声で呼ばれて、俺の体に痺れが走ります。

ああもう、なんてかわいいんでしょう。そんなに俺のことを欲してくれるなんて。

俺みたいに、ちっともかわいくなんてない男のことでも、そんなふうに求めてくれるなんて。

「あ、もう……」

愛しさが募って、今すぐおよめさんが欲しくなった俺を、およめさんはやさしく見ます。

「もうなんですか?」

「時生さん…いじわるしないで……」

ここまで来て、そんなこと言うなんて。

鼻声で訴えた俺に、およめさんは撫でられているねこみたいな顔になりました。

「おねだりの言葉は教えて差し上げたでしょう?」

「んふぁっ」

指がぐりり、と前立腺を押して、俺は抵抗も思いつかずに腰を跳ね上がらせました。そのまま、爪が食いこむほどに強くつよく、押されます。

「ね、高鳴さん。なんて言うんでしたっけ」

「んん……っ」

俺は首を振ります。

きちんと一語一句残らず覚えてます。だって、およめさんが教えてくれたことですから。

でも、途轍もなく恥ずかしいんですけど!

「高鳴さん」

やわらかに呼ばれて、俺は震えるくちびるを開きました。

「時生さんのおっきくてふとい……を、お、俺の淫乱な……にいれて、いっぱい掻き混ぜてください……っ」

言いました!

死ぬほど恥ずかしいです!

でも、言った瞬間に閃いたおよめさんの笑顔は、それはそれはうれしそうできれいで、俺のいけない雄はびくびく震えて大きくなってしまいます。

「いい子ですね、高鳴さん。ご要望どおり、俺の、高鳴さんの中にいれてあげますからね」

「はぅう……」

手に持ったそれを軽く振られて誇示されて、俺の頭が霞みます。

およめさんは軽くローションを垂らすと、まだほどけきっていない俺の窄まりに雄をあてがいました。

「受け入れてくださいね、旦那様」

言葉とともに、大きくて太いものが押しこんできます。

「んぁああっ」

およめさんのことは全部受け入れたいのに、体が勝手に逃げます。それを懸命に戻して、堪えて、俺は仰け反って痛みに耐えました。

体に汗が吹き出します。痛みによるいやな汗です。

でも、それと同時に、俺の雄は痺れるくらいの快感に震えました。おなかの中があつくて、じんじんして、目が開けていられません。

「ぁあ、高鳴さん……」

どうにか全部収めきったおよめさんが、熱い吐息をこぼします。

開けていられない目を懸命に開けて見つめると、およめさんはうっとりした夢見心地の顔で、俺を見返しました。

「高鳴さんの中、あっつくてきつくて、なのにやわらかくって、俺のものうれしそうに咥えこんで、とっても気持ちいいです…」

「ふぁあ……ぁうぅ……っ」

悦んでくれている。

それがわかって、俺のおなかがますますじんじんと痺れます。頭の中があっつくてあっつくて、息ができなくなりそうなくらいです。

「動きますからね」

「はぃ…はぃい……っ」

もつれる舌で、なんとか返事します。

およめさんはゆっくりと、気が遠くなるくらいゆっくりと抜き差し始めました。ぐるりと腰を回して、奥だけ揺らして。

そんなふうなことを、ゆっくりゆっくり、俺の粘膜がほぐれるまで続けます。

「ふぁ……突いて……っ、もっと、はげしくしてくださいぃ……っ」

あんまりにももどかしくて、俺はつい、そう叫んでしまいました。

「もう、高鳴さん……ほんと、我慢の利かない子ですね」

甘く詰られて、俺はぐすんぐすんと洟を啜ります。いいんです、どうせ俺、痛いの好きなんですから。

「いいですよ、ほら…っ」

「あ、ぁあっ、ひぁあぅっ」

あまり潤されなかった粘膜を無理やり擦り上げて、およめさんが激しく腰をぶつけてきます。

入口が引きつれてぴりぴりした痛みが走ります。無理やり拡げられる粘膜も、叩かれるような鈍痛を訴えます。

でも、それ以上にある快感。

「ぁあ、ああう、時生さん、時生さん…っ」

「ふぁあ、気持ちいい、ぁあん、高鳴さぁん」

腰を打ちつけながら、およめさんが甘く啼きます。その声でまた煽られて、俺の体がずんずんと熱を増していきます。これ以上熱くなったら、ほんとに全身蕩けてしまうんじゃないかと思うほどに。

「高鳴さぁん、ぁあぅ」

「ぁあ、時生さん……」

さっきイったのに、俺はもう、頭がぴりぴり痺れます。白い光が掠めては、堪えようと首を振りますけど、限界は近いです。

「イっちゃぃます、時生さん、イっちゃいますぅっ」

「ぁあ、高鳴さんっ」

叫んだ瞬間、俺は堪え性もなくイってしまいました。おなかの中のおよめさんをぎゅううう、と締めつけます。

「んん…っ」

一際奥まで押しこまれたおよめさんのものが、弾けます。内臓が爛れそうなほど熱いものが迸って、叩きつけられる感触に、俺はまた震えて仰け反りました。

「ぅあ……」

息もうまく継げないほどの快感に、俺は天井を見つめてただ震えます。懸命に浅い息を継いで、どうにか意識を保って、爆発しそうな鼓動を宥めます。

「高鳴さん…」

こちらも息を上げたおよめさんが、そっと俺の体の上に倒れてきます。伸び上がって顎にキスすると、いれたままのそれをまた、ぐるりと回しました。

「ひぁっ」

「もういっかい」

かわいらしくねだられて、俺は頷きました。

およめさんを拒絶するなんて、どうしてそんなことできるでしょう?

およめさんはその夜、「もういっかい」をあと二回、ねだりました。

***

「高鳴さん、朝ですよ。起きてください」

「ふぬぬぬぬ……」

重い瞼と格闘して、俺は呻きます。

「ほら、高鳴さん。会社に遅刻してしまいます」

やさしい声で言って、およめさんは食いしばる俺のくちびるに軽くキスを落としました。

「ね、朝ごはん出来てますから」

「ふぁ…っけほほっ」

応えようとして、俺は咳きこみました。咽喉ががらがらです。

「けほ、けほほっ」

「ああ、高鳴さん…」

「あ、えと…」

大丈夫です、と言おうとしたのに、声がうまく出ません。

心配そうな顔のおよめさんが、かわいらしく首を傾げました。

「…昨日、啼かせ過ぎちゃいましたね」

「ぇえっと…」

そのとおりと言えばそのとおりなんですけど。

気恥ずかしさに視線を泳がせた俺に、およめさんはやさしく笑いました。

「しょうが湯をおつくりしますね。葛としょうがをたっぷり使って」

「はぃ…」

ほんとによく気の回るおよめさんです。それに、こまめで、面倒見がよくて。

「あ、あの…蜂蜜も、いっぱい入れて……」

「はい、もちろんです」

掠れた声でお願いした俺に、およめさんは頼もしく頷いてくれました。

「先にお台所に参りますから、高鳴さんはきちんと起きてくださいね」

「はい」

また、軽いキスをくれて、およめさんは寝室から出て行きました。

俺はゆっくりとベッドから起き上がります。

体の節々が痛いです。でも、いちばん痛いのはなんといっても。

「…ふぬぬぬぬ」

気合いを入れると、俺は立ち上がりました。とても、しゃんと背筋は伸ばせませんが。

がんばって食卓に行くと、朝から煌びやかな光景が展開されています。

食卓を埋め尽くす朝餉はどれもこれもつくりたてで、ほかほかの湯気を立てています。

でも、それだけじゃありません。

およめさんは朝早く起きて、俺が寝ている間にお掃除も終わらせてしまっているのです。

俺は清潔な部屋で、ほかほかのごはんにありつけるのです。

昨日、寝た時間はいっしょなのに、およめさんのほんとに気まめなこと。

「はい、高鳴さん。熱いですからね、火傷しないように気を付けてください」

「あ、ぁりがとぅござぃます…」

しょうが湯を渡されて、俺は照れながらも笑いました。

「あの、時生さん」

「はい」

掠れ声では、ちっとも様になりませんが。

「愛してます」

「…」

それでもできるだけはっきり聞こえるように言うと、大きな瞳をますます大きく見張って。

「はい。俺も愛してます」

およめさんは、疲れも吹き飛ぶかわいい笑顔でそう応えてくれました。

ああ。

ほんと、いいおよめさんを貰いました。

俺は、しあわせものです。