温泉に行こう!-03-

「ん………は、ぁう………」

押さえこまれたカイトの体は、びくびくと跳ねる。

一度目の放出だ。だというのに、敏感に尖り過ぎたせいでなかなか落ち着かない絶頂感に叩きこまれてしまったカイトは、涙の浮かぶ瞳をきゅっときつく閉じた。

口を押さえる手にも力を込めて、体の中を荒れ狂う感覚に、懸命に耐える。

しかしそういった努力に頓着してくれないのが、恋人だ。

恋人はカイトのことを溺愛していて、基本的にはやさしい。

やさしいが、溺愛している。

気持ち良さの中に蕩かして浸けこんでやれるなら、生涯そうしておいてやりたいとすら、思っている節がある。

カイトが気持ち良さにのた打っているなら、さらに快楽を与えようとするのが、恋人――がくぽだった。

「………」

口に受け止めたものを飲みこまず、ぴちゃりと鳴らしたがくぽは、さらに下へと顔を潜らせた。

極めたことで、きゅうきゅうと伸縮して、ないものを締めつける動きを見せる場所に、くちびるを寄せる。

「んっ、んんぅっ」

ぴちゃ、と殊更に水音が立って、受け入れることを覚えさせられた窄まりに、がくぽの舌が触れる。

ぐ、と押しこむ軟体動物とともに、とろとろと濡らされる感覚。

口に受け止めたカイトのものを、がくぽは押しこむ舌とともに、そこを濡らすことに使っているのだ。

「んんんっ、ぁ、んっ、んんっっ」

カイトはきゅっと太ももを締め、がくぽの頭を押さえつけるようにしてしまう。

ロイドだ。人間とは違うから、本来的にそこに前戯は必要ない。

それでもがくぽは、羞恥が極まったカイトが泣いて嘆願するまで、丹念に解し、濡らすことを好んだ。

「が、がく………っ」

口元を押さえる手を離し、カイトは下半身に埋まるがくぽの頭に伸ばした。出来るだけ痛くないようにとは思いつつ、きゅ、と髪を引っ張る。

「じ、時間………」

「………」

――興醒めといえば興醒めな言葉だが、場所が場所だ。

家ではなく、旅館。

言われて時計を見れば、朝食を頼んだ時間まで、そろそろだ。

ご家族さま、という扱いで、来ている。

七人一部屋にはしたくないから、成人している兄たちだけが別の部屋で、未成年の面倒を、マスターと年長の姉が見ていると。

著しく間違っているわけではないが、明確にされていない関係がある。

「……………がくぽ」

「………仕方ない」

震える声に、がくぽは苦々しくつぶやいた。

マスターは、大抵のことはフォローしてみせるとは言っていたが、まさか新婚でもあるまいし、朝から兄弟が睦み合っていましたとか、どうフォローするというのか。

――いや、新婚であっても、温泉旅館で朝からどうのこうのしないだろう。

「ここまでに、カイト?」

体を起こそうとしたがくぽの髪を、カイトはきゅううっと引っ張った。

痛い、とわずかに抗議する色を込めて見たがくぽに、がくがくと震えるカイトは、涙目を向ける。

「こ、ここでほーりだされたら、おれっ………なにするか、わかんないっ」

「…………………」

思わず妹たちに倣って、「わーお」と感嘆の声を上げるところだった。

まさか、貞淑であることを第一とするカイトから、そんな言葉が聞けるとは。

えっちな俺はいやだよぅと、未だに泣くこともあるというのに。

そこまで仕込んだのは、もちろん――短いようで、長い日々だった。

密かに感慨に耽りながら、がくぽはちょこんと首を傾げてみせた。無邪気さを装って、涙目で震えているカイトを見つめる。

「………やはりお主、寂しかったのだろう。俺が気がついて触れることを、期待していたのではないか?」

「っっ」

意地の悪い問いに、カイトは涙目を大きく見張る。長い睫毛に乗った雫が、ぱっと散った。

しかしカイトはすぐにくしゃくしゃと表情を歪めると、がばりと体を起こした。無邪気そうな表情を晒すがくぽに抱きつくと、体を擦り寄せる。

「ま、ってた、よっも、がくぽが、いつ気がついて………っこういうことしてくるのか、ひやひやだったっ」

「カイト」

「だっこして、腰とかさわって、ぱんつの感触ないはずなのに、へーぜんとしてて………いつだろういつだろうってっ」

「……………」

ようやくこぼされた恨み言に、がくぽはかえって微笑んだ。

まったくなにも期待していなかった、と言われるようでは、恋人として日々、イヤラシイことに励んでいる甲斐がない。

カイトの無邪気さも、無垢さも、得難い資質ではあるが、それはそれ、これはこれだ。

自分にだけは、奔放な姿を見せてくれてもいい。

自分にだけなら。

「済まなかった」

「す、まないで済むなら、ケーサツいらないのっ!」

「ああ。悪かった」

「わらわないっ!!」

「………」

――誘ってきている恋人に気がつかず、手を出しませんでした、で警察沙汰になったら、大変だ。

大変だが、仕方ないと、諦めそうな気もする。

その程度には、自分でも悔しいし、怒られたい。責められて、詰られたい。

とはいえ、現状。

「…………カイト。時間」

「ぁ」

端的に示された現実に、カイトははっと我に返った。

ごたごたしているうちに、さらに朝食の予定時間が刻々と迫っている。

がくぽにしがみついていた腕から力を抜き、カイトはおろおろと顔を覗きこんできた。

「ど、どうしよ」

「んああ、まあ」

「ええ、ゃ、ちょっ?!っひぁうっ」

涼しい顔と声でしらりとつぶやいたがくぽは、カイトの腰を浮かせると、素早く肌蹴た自分の腰の上へと強引に落とした。

挿入のときにはさすがに勢いを殺したが、いつもより性急に、がくぽのものがカイトの腹の中に納まる。

「ぁ、だ、がくぽっ。う、うそっ」

「いや、嘘もなにも。そうする以外にあるまい?」

「あ、あるま、…………ほんと、にっ?!ぃ、ぁあぅっ、ん、んんーーーっっ」

「………」

驚きのあまりに声を殺すことを忘れているカイトのくちびるを、がくぽは己のくちびるで塞ぐ。跳ねる体にがっしりと腕を回すと、自由に動き回れないように押さえこんだうえで、突き上げ始めた。

「っっ、っ、んっ、んぅっっ、んんっ」

「………っ」

声も出せず、体も自由に動かせないとなると、カイトは募る快楽をうまく逃がせない。

浴衣越しではあったが、苦しさのあまりにがくぽの背にぐりぐりと爪を立てた。

それでも逃しきれない熱と気持ちよさに、いつも以上に内襞がうねる。食い千切られるかと思うほどに締めつけ、かと思えば追いだそうともがき、そのすべてががくぽとカイトの双方を追いこむ。

「んっ、ぅーーーーーーっっ」

「っっ」

ややして、忍耐強さのあまりに猟奇の冠を戴くがくぽとしてはかなり早く、そして煽られ過ぎたカイトは当然のこととして、二人は短時間のうちに同時に快楽を極めて震えた。