「ん……っふ、ぁ、ぅ………っ」

がくぽの舌が口の中に入りこみ、やわらかに、けれど強引に舌を誘き出される。

粘膜の中でも特に感覚の尖っているところを的確に刺激されて、ベッドに転がされたカイトは瞳をきつく閉じた。

He got into Bed &...

「ぁ、は………っ、ぁ、ふ………っく、ぁ、だんなさ……っんんっ」

焦って呼ぼうとする言葉も、すぐにくちびるに飲みこまれる。

深く酩酊を呼ぶキスのほかにも、がくぽの手はカイトの体を撫で、器用に服を開いて行って肌を晒させる。

「ん、ゃ……っぁあっ、ふぅ………っ」

キスで尖り出していた胸の飾りをつままれて、カイトの体は電流でも通されたように跳ねた。

体中が痺れたが、特に下半身には来た。

カイトは膝を立てると、伸し掛かる旦那様の腰を挟み、自分へと招くようにしてしまう。

「ふ」

「んん………っ」

それまでカイトを追いこむことに懸命だったがくぽが堪えきれずに笑いをこぼし、カイトは愚図るように洟を啜った。

「だんなさまぁ………っ」

「よしよし……」

宥めるように、あやすように言いながら、がくぽはわずかに身を起こし、自分の着物を寛げる。

その瞬間。

「っっ!!」

「あー……………仕舞った」

一際大きな雷音が轟き、蕩けかけていたカイトは大きく体を震わせた。

のみならず、いつも湖面のように揺らいでいる瞳が涙を湛えて、まるで本物の湖面のようになる。

「だんなさま………っっ」

「ああ、ああ……よしよし、大丈夫、大丈夫だ………」

涙声で呼ばれて、がくぽは上半身を脱いだだけで再びカイトに伸し掛かり、震える体を抱きしめてやった。

――がくぽがやって来るまでは、雷を怖いと思ったことはなかったというカイトだ。

しかし旦那様を迎え、互いの想いが通じ合ってより心が近くなってからというもの、どうしてか雷に怯えるようになった。

いや、どうしてか、というのは、カイトの考えだ。

がくぽが思うには、カイトはそもそも、それほど雷が得意ではなかった――けれど、仕事のあるマスターは不在のことが多く、通いのハウスキーパーの奏も、そうそう頻繁に家にいるでもない。

頼れる相手も縋れる相手もいなかったカイトは、自分の『こわい』という思いに蓋をして、心の奥底に仕舞いこんでしまったのだ。

その『こわい』が、がくぽという頼れる旦那様を得て、甘えることを覚えた結果、蓋が開いて顔を覗かせた。

怯えて震えている奥さんを、ひとりだけで放っておく旦那様ではない。

必ず傍にいて、抱きしめて、守ってくれる――その信頼感の上に成り立つ、『こわい』の感情だ。

推測できるがくぽとしては、怯える奥さんがうれしいの半分、哀れなの半分。

そうまで愛され頼りにされるのはうれしいことだが、怯えて震えるカイトの姿は純粋に心が痛む。

どうにかして、『怖くない』に変えてやりたい。

少なくとも、身を固くして動きもままならないほどの恐怖からは、救ってやりたい。

――という考えがあって、がくぽは雷が鳴るたびに、いろいろと試した。

ついでの一案としての、雷の間中の夫婦の営みだ。

ロイド自ら『→頭がおかしい』と結論するようなマスターによって、うたうことにのみ特化し、他の機能を限界まで削ぎ落としたカイトだ。

普段から端然と、現実離れして茫洋としているが、旦那様との夫婦らしい営みの間は、その感覚に溺れることを知っている。

それこそ溶け崩れるほどに濃厚に愛してやれば、最中に雷が鳴っていても気が回らないのではないか。

――と、言い訳をつけてみたが、つまるところ、がくぽにしても奥さんに触れるいい口実だ。

口実などなくても好き勝手に触ってはいるが、それはそれ、これはこれ。

触れる機会が増えるのはいいことだ。

そうやって、奥さんを寝室に連れ込み、押し倒したがくぽだったのだが。

「ふ………っだんなさま………ぁ」

「よしよし………」

現実に返ってしまった奥さんは、啜り泣きながらがくぽに縋りつく。

営みどころではなく、がくぽは縋られるままに震えるカイトを抱きしめ、あやした。

「ぅ………っふ………っ」

「大丈夫、大丈夫だ………俺がいよう………?」

宥めささやきながら、がくぽはカイトの首筋に顔を埋めた。恐怖で体温が上がっているのだろう。香りがいつもより強い。

「…………」

「…………っが、くぽ……っ」

「まあまあ……」

非難されるように呼ばれたが、がくぽは誤魔化す言葉を吐きながら、カイトに腰を擦りつけた。

「ゃ、あ………ぁ、だんなさ………っぁ、ふ………っ」

非難していたカイトの声が、甘さを帯びて、熱を含み、快楽に潤む。

がくぽの裸の背中に爪が立って、責めるように、先を促すように引っ掻いて行った。

「………まあ、仕方ないな……」

「ぁ、ぁあ、ふ……っゃ、だんなさま……っ」

擦りつけられるがくぽの熱と硬さに再び溺れだしたカイトだが、最中にも雷は鳴っている。

またなにかしら空白を作れば、すぐにも我に返って怯えるだろう。

遊ぶ余裕はない。

惜しい気持ちを抱きながらも、がくぽは性急にカイトの下半身へと手をやり、未だ慎ましい状態の窄まりへと指を押しこんだ。

「っ、ぁ、あ………っ」

「今、埋めてやるゆえな……」

「ぁあ、ふ………っ」

がくぽのささやきに、カイトは中を掻き混ぜる指をきつく締め上げた。

この場所を堪能したい気持ちはあれ、がくぽはとりあえず指を抜くと、すでに固くなりだした己を取り出した。

その間にも、カイトの首に咬みついたり吸ったり、くちびるを塞いだりと、思考を削ぐ行動に余念はない。

間断なくカイトを蕩かしながら、がくぽはまだ硬度の足らなかった己を軽く扱き、硬さを増した。そのうえで、やわらかいと言い切るには少しばかり固いカイト蕾の中に押し入る。

「ぁあ………んっ」

「カイト、わかるであろう。俺がそなたの腹の中におる………存分に食らわしてやるゆえ、堪能しろよ?」

「ぁあ、ん…………はい、だんなさま……っぁ、ぁあっ、ふぁあっ」

カイトの返事を待つことなく、がくぽは腰を使い始める。

落ち着かないうちに粘膜を擦り上げられて、カイトは身悶え体をうねらせて、悲鳴紛いの嬌声を上げた。

常に比べると多少乱暴に、がくぽは腰を使う。

とにかく今は、カイトを追いこむことが急務だ。

一度追いこんでしまえば、空白が出来たところですぐさま我に返るということもないだろう。

「ぁ、ぁあっ、ふっ、ぁ………っ、あ、だんなさま………っはげし、はやぃ……っぁあっ」

「ふ………っカイト…………っ」

激しい快楽に逃げを打つ腰を抱えこみ、がくぽは自分もまた快楽に歪みながらカイトを追いこむ。

「ぁあっ、んっ、ゃあ、だんなさま………っゆるして、ぁあ、も、ぁ……っゃ、イきます………っ、も、もぅ………っぁ、イっちゃ…………っっ」

「……っ」

一際大きく震えて仰け反り、カイトは腹の間に挟まれて揉まれていた己から、白濁した蜜を吹き出した。

同時に腹の中がきつく締まり、がくぽもまた、自分の欲望を吐き出す。

「ぁあ、ん………ぉなか………に、だんなさま………の……」

陶然と吐き出される言葉に、がくぽは薄く笑みを浮かべ、カイトの額にくちびるを落とした。

「そうだ………気持ち良かろう?」

茶化すように訊くと、カイトは未だに快楽に飛んだ瞳のまま、素直に頷いた。

「ん………はぃ、気持ちいい……です………ぁ、旦那様……の………」

「よしよし………」

奥さんの答えに満足して笑い、がくぽはもうひとつ、頬にキスを落とす。

がくぽとしては立て続けてしたいが、カイトには立て続けの行為は負担が大きい。

次のタイミングを計ってカイトの様子を窺いながら、がくぽは軽いキスをくり返して落とした。

ついばむようなやわらかなキスの雨に、幸福に染まったカイトが笑う。

がくぽもまた微笑みを返し。

「っっ、っひっ?!!」

「………ふ……っ」

行為に没頭している間に遠ざかるどころか近づいていた雷が、頑丈に造られたマンションすら揺らがすほどの大音響を轟かせた。

宥められて快楽から醒めつつあったカイトは一瞬で竦み上がり、竦み上がったことでまだ腹の中にいるがくぽを締め上げてしまって、その感触にまた竦んだ。

食い千切られそうなほどにきつく締め上げられたがくぽのほうも、瞬間的にくちびるを噛む。

しかしすぐに、その顔が淫蕩な笑みを刷いた。

「ぁ、あ………っ、ゃ、あ、は………っかた……ぃ……っぁ、どう、すれば………っゃあぁ………っ」

「カイト………」

締め上げて感覚を刺激され、怯えで自由を失った体は緩めようにも言うことを聞かない。

緩めようとしては締め上げ、締め上げた反動で緩み、粘膜全体が勝手に旦那様のものを味わってしまう。

突き上げるのは恐怖でも、確かに腹の中に旦那様がいて、その硬さと熱を意識するたびに体が快楽に溶けてさらに貪欲さを増す。

ある意味悪循環に陥ったカイトは、涙に潤む瞳で、笑う旦那様を見つめた。

「がくぽ………っ」

「仕方のない妻だな、カイト……そうも熱を入れて強請られれば、夫として応えぬわけにはいくまい?」

意図するところとは微妙にずれて請け合い、がくぽは体を起こすとカイトの腰を掴み直した。

「そなたからのおねだりゆえな。満足させてやれぬでは、夫とは名乗れん。気を入れて愛してやろう?」

「ゃ、ちが………っぁ、ああっ、んんっ、は、だんなさま………っ」

頭を振るカイトに知らぬふりをして、がくぽは一度放出したことでぬかるむ場所を再び掻き回し始めた。