「ね、にーに」

「こら待て、カイト………んっ」

いたずらっぽく笑ったカイトが、がくぽのくちびるに吸いついてくる。躊躇いもなく、即座に舌が伸びてくちびるを舐めた。

うちのおとーとは、とってもやんちゃです→

「にーにぃ…………くちあけて」

「待て…………んんっ」

「んふ………ぅ」

制止しようと言葉を発したのが間違いで、カイトは即座に舌を潜りこませてきた。そしてぴちゃぴちゃと、たどたどしくがくぽの口の中を舐める。

「ぁ、にーにぃ………にーにも、して…………えっちなキス、ちゃんとして………?」

「話を聞きなさい、カイト」

「んぅっ」

言葉で制止しようというのが、そもそも無理だった。

がくぽは諦めると、大きな手で弟の頭をがっしりと掴んで、押さえつける。

「ゃ、にーに」

「聞きなさい、カイト。兄弟では、えっちなキスはしない。兄弟でするのは、挨拶のキスまで」

もがくのを押さえつけて言い聞かせると、カイトは手の下でぷくっと頬を膨らませた。

「………カイトにえっちなキスを教えたの、にーになのに?」

「ぅ」

呻いたがくぽに、カイトはさらに畳み掛ける。

「それにカイト、知ってるんだよにーにたまに、寝てるカイトにえっちなキスするよね。寝てるカイトにはえっちなキスするのに、起きてるカイトとえっちなキスできないのは、なんで?」

「ぅうっ」

がくぽはカイトの頭を押さえたまま、わずかに仰け反る。

苦しい表情で、手の下の弟の顔をちらちらと見た。

「………なんの話だか」

「にーに、しらばっくれてもいいけど、カイトのココロの傷を考えてね?」

「ぅぐっっ」

がくぽはさらに仰け反り、表情が隠れている弟から顔を逸らした。

「………………………悪かった」

「悪くないけど」

気まずく吐き出したがくぽに、カイトはあっさりと言う。

「寝てるカイトに手ぇ出しちゃうくらい、にーにに愛されてるんだって思ったら、すっごい幸せだし。でもにーに出来ればカイトは、寝てるときじゃなくて起きてるときにも、にーにとえっちなキスしたい」

「……」

そういうことを言う弟の、『ココロの傷』具合がよくわからない。

しかし後ろめたいことは確かだ。

がくぽは仕方なく、カイトの頭から手を離し、その手で背中を撫でた。

「少しだけだぞ?」

「ん」

カイトがうれしそうにくちびるを寄せる。がくぽもまた、弟のくちびるに舌を伸ばした。

触れると素直に開く口に、舌を差しこむ。

「ぁ………んんぁ」

「カイト、舌を出して」

「ん………にーに………」

「にーにの舌に絡めてご覧」

「んん………んく………ぅく………」

カイトは覚束ない動きで、がくぽの舌を味わう。さりげなくリードしてやりつつ、がくぽからは積極的に動かない。

「ぁ……にーにぃ……っ」

もどかしさに懸命に縋りついてくるカイトに、がくぽのくちびるの端が持ち上がった。

かわいらしい。

確かに、寝ている弟では味わえない愉しさだ――正確に言えば、寝たふりをしている弟、だろうが。

「にーにぃ………んん、んんふ………ぁ………っ」

膝の上で身を起こしたカイトが、すりり、と下半身を擦り寄せる。硬くなっている場所を感じて、がくぽはわずかにキスを解いた。

「………カイト」

「んん……やめちゃやぁ…………」

「少しだけだと言ったのに」

「ぁふっ」

呆れた素振りで言いながら、がくぽの手がカイトの下半身を撫でる。びくりと震えて縋りついてきたカイトに、がくぽは小さく笑った。

「こんなに硬くして………」

「ぁ、んんっ………に、にーにだって………っ」

笑い声を吹きこまれ、カイトの手ががくぽの下半身に伸びる。微妙な力加減で探られて、がくぽは瞬間的にくちびるを噛んだ。

「………カイトに負けないくらい、かたくなってる………ぁあ………ふ、も……これ、ほしい………」

「少しだけと言っただろう。上げてしまったら、『少し』ではなくなる」

「ゃ、にーにぃ………ちょぉだい、にーに………少しなんていわないで………いっぱいにーにのこと、ちょぉだい………」

「カイト…っ」

強請りながら、カイトはがくぽの膝から下りた。床にへちゃんと座りこんで屈むと、手で探っていた場所に、すりりと顔を擦りつける。

「にーにの………」

「こら、カイト…」

陶然と言いながら、カイトはさっさと着物の前をくつろげ、がくぽのものを取り出す。制止されるより早く、ぱっくりと口に咥えた。

「…っ」

「んん………んちゅ……はふ、んー………」

「………まったく…」

夢中になって啜るカイトに、がくぽは肩を落とす。

キスだけ、と言って、キスだけで我慢できた試しがない。

「にーに……おっきくなってる………にがぃのもでてきたよ……」

「ああ……カイトの口が、気持ちいいからな……」

「はふ………っ」

言ってやると、カイトはうれしそうに微笑んだ。再び顔を戻して、がくぽのものを舐めしゃぶる。

懸命な姿に、がくぽは瞳を細めた。舌が覗き、ちろりとくちびるを舐める。

「カイト……」

「んんっ」

屈む弟の双丘に手を伸ばし、スラックスの上から押した。びくりと竦んだカイトが、咥えたまま視線を上げる。

くちびるが窄まって、先走りをちゅう、と吸った。

「欲しくはないか?」

「……」

「口もいいが、ここに……」

「ふ、ぁ………っ」

さらに揉まれて、カイトが口を離す。もぞりと下半身を蠢かせ、がくぽの手から逃げるように動いた。

逃げた分を追って、がくぽはスラックスの上からカイトの下半身を探る。

「ぁ、にーにぃ………っ」

切ない声で啼いて、カイトはがくぽのものをきゅっと握りしめる。わずかに走った痛みに顔を歪め、がくぽはカイトの手を取った。

小柄な体を再び膝に抱き上げると、濡れるくちびるに舌を伸ばす。

「ん……んん……っふ……っ」

「にーにが欲しいんだろう口がいいのか?」

「ぁ……っはぅ……っ」

痙攣する弟から口を離すと、がくぽはスラックスへ手をやる。ボタンを外してファスナーを下ろし、下着ごと下半身から抜き去った。

「こっちのほうには欲しくないか、カイトにーにの、おなかのなかに入れて欲しくないか?」

「ひぁ……っぁ、にーに、ゆび……っ」

耳に吹きこみながら、指を奥へと潜らせる。びくりと引きつったカイトが、下半身を探るがくぽの腕を掴んだ。

しかし、引き離す動きにはならない。押さえつけるように、さらに奥へと誘うように動いた。

「ぁ、あ……っにーにの、ゆび……っぁんっ、ぁ、きもちぃ………っぁ、なか、ぐるぐるしてる……っ」

「カイトはこっちのほうが、好きだろう?」

「ん、すき……っにーにに、おなかぐちゃぐちゃされるの、すき……っぁ、ぁあんっ」

がくぽの指が弱いところをきつく押し、カイトは体を跳ね起こす。手を掴んで押さえたまま、束の間逃げるような、微妙な姿勢になった。

がくぽは構うことなく、こりこりした場所を揉み続ける。

「ゃ、ぁあ、あ、だめ……っ、だめ、にーに、そこ……っそこばっかり、ゃ、ぁあ、だめ……っ」

「カイト、だめなら、にーににおねだりしてご覧。なにがだめで、なにをして欲しいのか、言ってご覧?」

「ぁあぅ……っ」

がくぽの膝から下りたカイトは、手を掴んだまま、足を広げる。掻き回される場所を兄へと開き、潤む瞳で見つめた。

「にーに………にーにの、おっきいの、カイトのおなかに入れて………指じゃなくて、にーにの………カイトが舐めて、おっきくしたの、入れて………」

「よしよし」

素直なおねだりに、がくぽは微笑み、カイトの額にキスを落とした。

掴まれたままの手を抜くと、足を広げるカイトを抱き上げる。

「今日は、留守番で寂しい思いをさせたからな。抱っこしてやってやろう」

「ぁ、んんん……っ」

抱き上げたカイトの下に腰を入れ、硬く屹立したものの上にゆっくりと落とす。

自分から手を添えて挿入の手伝いをしたカイトの頬に良い子だとキスをしてやり、最後まで埋め込んだ。

「ん、ふか、ぃ、よ………にーに……っ」

「奥まで届くだろう奥だけ突いてやろうか?」

「ぁ、んんん………っにーにぃ………」

ひくひくと痙攣をくり返しながら、カイトはぎゅっとがくぽにしがみつく。がくぽもぎゅっと抱き返してやり、軽く腰を揺さぶった。

「にーに………にーに………っ」

「ああ、ここにいる。ちゃんと傍にいる。カイトのことを、抱きしめているだろう?」

「にーにぃ………っ」

切ない声で何度も呼びながら、カイトは腰を振る。合わせて揺さぶってやりながら、がくぽはカイトの背を、後頭部を、何度も撫でた。

「ぁ、あ、にーに………いっちゃう、カイト、いっちゃう……っにーに、にーにぃ……っ」

「ああ、いいぞ。にーにも、カイトの中に出してやるから……」

「ふ、ぁあ……ん………っんんんっっ」

一際大きく仰け反ったカイトが、きゅうっと腹の中を締める。同時に腹の間で擦られていたものが爆ぜる感触があり、がくぽもぶるりと震えてカイトの中で爆ぜた。

「ぁふ………っ」

「ふ……っ」

何度も何度も痙攣する体を抱きしめ、がくぽは肩口に顔を寄せた。いつもより濃くなった弟の体臭を吸いこみ、その感触を確かめる。

「………にーに」

ややして一度目の衝動が落ち着くと、腕の中のカイトが小さく身じろいだ。

わずかに体を離すと、がくぽのくちびるにちゅっとキスをする。ねこの仔のようにぺろりと舐めて、甘える瞳で兄を見つめた。

「カイト、おなかすいた」

「………」

甘い声が吐き出した言葉に、がくぽはリビングの壁に掛けられた時計へと視線を投げた。

そもそもが終業時刻をとっくに過ぎて、慌てて帰って来たところだった――それから拗ねているのを宥めて、こうして兄弟にあるまじき行為に耽って。

すっかりと、普段の夕食の時刻を過ぎている。

「カイト、ひとつ訊くが……」

「やっぱり口でもらえばよかったな、最初。そしたらおなか、ちょっとはましだったのに………ちゃんと膨らむのに、下から入れても、おなかいっぱいにならないの、なんで?」

「カイト」

「あ、そーだ。今からでも、口に」

基本的に弟と会話を成立させることは、言葉だけでは出来ない。

がくぽは諦めて、カイトの頭をがっしりと掴んだ。

「にーに?」

「話を聞きなさい、カイト。そもそもおまえ、お昼ご飯は食べたのかおやつはこの前衛的なリビングの改装に、どれくらい時間をかけた?」

矢継ぎ早に訊いたがくぽに、カイトは頭を押さえられたまま、しばらく考えた。

それから、チェシャ猫のように笑う。

「そーいえばお昼前から始めて、にーにが帰って来るまで夢中だったから………なんにも食べてない☆」

「…」

「い、いたぃっにーに、手、手!!いたい!!潰れる、頭潰れるよ!!力ぬいてぇ!!」

悲鳴を上げる弟の頭から手を離し、がくぽは膝の上の体を抱きしめた。

正直、一度してしまうと、立て続けにしたいのががくぽの体だ。

しかし昼からなにも食べていない弟を、これ以上空腹状態で置いておくわけにもいかない――彼が言おうとしたように、口から『がくぽを食べ』させればいいという問題ではない。

いくら弟に手を出そうとも、そこまで不健康を極める気はない。

なによりそれでは、てんてこまいだというのに、カイトが心配だから、と帰してくれたマスターに申し訳が立たない。

「にーにんんんっ」

きつくくちびるに吸いついてから、がくぽは弟を膝から下ろし、立ち上がった。

「オムライスとチャーハン、どちらがいい?」

素早く身だしなみを整えつつ訊いたがくぽに、無邪気な弟はにっこり笑った。

「にーに!」