カイトの尻が、がくぽの上でにじる。

「だいたいにして、にーにはさっ!」

ぷりぷりと怒りながら、カイトはぐ、と掛ける体重を増やした。

スラックスがあるから直に触れることはないが、そこに硬い感触がある。

うちのおとーとは、朝からとっても元気です→

「………ここはもぉ、朝だよ、おきよーよってしてるのに、なんで『本体』がいつまでたっても、眠そうなのさ!」

「…………………そことにーには、たまに意見の食い違いを起こすんだ」

上がりそうになる呻きを堪え、がくぽは適当なことを吐き出した。

そうでなくても、眠くて頭の働きが鈍い。

だというのに、確かにカイト曰く、体の一部はしっかりと起きようとしている。なによりも、カイトが腰に跨っているというのが、この場合、大きいだろう。

愛おしい弟だ。

昨夜もさんざんに、愛おしさに翻弄された――

「ふぅううんっ」

がくぽの適当過ぎる答えに、カイトは嫌な予感のする鼻声を上げた。

腰に跨っていた体が降りて、がくぽの足の間に座りこむ――開いていたわけではない。カイトが無理やりに入りこんだのだ。

そうやっておいて、カイトはにんまりといたずらっ子の笑みを浮かべると、『意見の相違』から『勝手に起きている』兄の体の一部を撫でた。

「っ、ぅ」

「じゃあカイトは、『起きてるにーに』に、遊んでもらおーっと。『起きてるにーに』はきっと、カイトと遊ぶの好きだしね」

「カイ、っ」

ものは言いようと言うべきなのか。

カイトはがくぽの寝間着を肌蹴ると、撫でられてさらに硬度を増した場所を露わにした。そしてがくぽが反論や抵抗をするより早く、屈みこんでぱくんと口に咥える。

「ん………っふ」

「……っふ……ぅ…………っ」

まずは咽喉奥まで飲みこんでから、抜き出す。

その動きを何度かくり返しながら、唾液を集めて舌に絡ませ、朝日に浮かんで卑猥さを増す兄のものをびちゃびちゃに濡らした。

「ん………んん………ちゅ………んふ………ぅ、ちゅ……っ」

「………っく……」

眠い。

そもそも昨夜だとて、さんざんにカイトと『遊んで』やったのだ――どうして弟はすでに元気いっぱいなのかが、むしろ謎過ぎる。

そしていくら眠くても、かわいい弟が夢中になって自分のものを舐め啜っているのかと思うと――

「ぁ………はっ」

わずかにくちびるを離し、カイトは笑っているような声を上げる。

そそり立つものに手を添えて、雫が垂れるほどに濡れそぼったものにうれしげに頬ずりした。

「にーに………きのーの夜だって、カイトの口とおしりに、いっぱいいっぱい出したのに…………朝になったらまたすぐに、こんなになるんだから……」

「………カイト…」

「んん………ちゅ………んちゅ、ふ………っ」

カイトは瞳を細めて、愛撫に応える兄にくちびるを添わせる。

熱と硬さを持って漲っていくものに舌を絡め、襞のひとつひとつまで伸ばすように、丁寧に舐め辿った。

「ん………んんん………んん………ふ、ぁ………あっさぁ………あっさだっち、あっさだっちちn♪」

「どういううたをうたっているか、カイト!」

「んくっ」

ご機嫌が極まって来たのだろう。

ちゅうちゅうと吸いつきながら口ずさまれるうたに、がくぽは慌てて体を起こした。カイトの頭を掴むと、小さな口の中に漲るものを押しこんで、無理やりに言葉を塞ぐ。

「んん………ふ、ぅく………っ」

「………カイト。どこでそういう、下品なうたを覚えてくる?」

「んく……んんんふ、むんん、んぅぁぷふ」

「……っっ」

疲れ切った兄の問いに、押しこまれたまま、カイトは何事か答える。

口の中が複雑にうねって、いっぱいに頬張ったものを著しく刺激した。

堪えきれず、がくぽはつい、押さえたままだったカイトの頭をさらに押し、咽喉奥を突いてしまう。

「んんっふぷっ」

「ぅ、あ、すまん」

えづいたカイトに、がくぽははたと我に返り、掴んだままだった頭を持ち上げた。ずるりと口の中から抜き出したところで、手を離す。

「けほっ」

「カイト、すまん……大丈夫か?」

「ん、けほ……っ……へーき。びっくりしただけ………」

自由にならない舌でたどたどしくつぶやき、カイトはうっとりと笑った。

「………カイト、ノド突かれるの、キライじゃないもん……」

「…………そうだったな」

頭を抱えたくなり、がくぽはなんとか堪えた。

それから気を取り直すと、懲りる様子もなく濡れたくちびるを舐めるカイトの顎に手をやる。軽く掬い上げて瞳を覗きこむと、眉をひそめてみせた。

「それで誰にああいう、下品なうたを教わる?」

「マスター」

「………………」

永眠しようかな、とがくぽはわずかに考えた。

マスターは女性だ。うら若き。

そこに夢を見てはいけない性格だとは重々承知しているが、それにしてもあんまりだ。

項垂れる兄に構わず、カイトはちょこんと首を傾げる。

「カイトといっしょに朝ごはん作りながらね、『昨晩も励んでいたようだが、がくぽは朝勃ちすることがあるのか?』って訊くから、うん、毎朝するよーって答えたの。そしたら、『元気だな。私も見習わなければ』って言って」

「頼む、カイト………」

がくぽは項垂れきって、容赦を乞うた。再び力なく、布団に転がる。

がくぽがいたところで、おそらくその会話は普通にくり広げられたとは思うが、うたに入る前に阻止は出来たはずだ。

がくぽがいないとどこまでも、二人の会話はずれて戻れない道に入りこむ。

「ん、だいじょーぶだよ、にーに」

項垂れるがくぽの、意見の相違から項垂れていないものを再び掴み、カイトはくちびるを舐めた。

「カイトがちゃんと、朝のにーにもめんどー見るから毎朝元気でも、カイトはぜんっぜんへーき!」

そういうことは訊いていない。

「カイ………っふっ……」

反論する間もなく、カイトは濡れる先端にくるりと回すように指を這わせた。

思わず呻いた兄を見つめ、再びくちびるを舐める。

「にーにのことは、カイトが朝も昼も夜もぜんぶ、めんどー見るから、だいじょーぶ。朝も昼も夜も、毎日元気でも、カイトはぜんっぜんへーき………」

「………カイト」

「はふ………っ」

つぶやいていたカイトの顔が、堪えきれずに歪む。がくぽのものから手を離すと、自分の下半身を押さえてもぞつかせた。

「ぅ………ふ………んん…」

「………」

切なさに呻き、下半身を押さえる弟を、がくぽはじっと見つめた。夜の明かりの中で見てもそそられるが、朝の光の中で見るとさらに、淫猥さが際立つ。

意見の相違もなく、弟の気持ち良さを知るそこも、びくりと脈打った。

「カイト」

「ぁ………ほしー………うずうずする………っ」

苦しそうにつぶやくと、カイトは体勢を変え、足を伸ばした。思いきりよくスラックスを脱ぎ、下着も剥ぐ。

下半身を露わにすると、躊躇いもなくうずうずする場所に指を宛がった。

「ん………んく……ぅ」

「………」

自分でその場所を弄るカイトから、がくぽは目が離せなくなる。

無邪気な弟だ。

とりもなおさず無邪気ということは、淫奔さに対して羞恥が低いということにも繋がる。それが淫奔な振る舞いだと、わかっていないからだ。

「ぁ………にーに……」

「カイト…」

切なく呼ばれて、応えるがくぽの声も掠れた。

煽られて放っておかれた場所が、乱れるカイトを欲して痛い。

横たわったまま腕を差し出したがくぽに、カイトは切なさに歪みながらもわずかに笑った。

そそり立ってカイトを欲する場所を軽く爪弾き、びくりと揺れて顔をしかめた兄に、いたずらっぽく瞳を眇める。

「にーにとここ、仲ワルイんでしょ意見合わないんだよね………今、カイトのことほしーのは、どっちこっちの、起き上がってるほうのにーにだけ………?」

「………カイト」

その場凌ぎに適当なことを言ってしまうのが、がくぽも自覚する自分の悪癖だ。適当なことを言ったあとは大体、弟によって後悔させられる羽目に陥っている。

学習能力は低くないはずなのに、どうしてかこれだけは治らない。

がくぽはくるりと瞳を回して、窓の外から差しこむ明るい光を見た。

瞳をカイトに戻すと、差し出した手を招くように揺らす。

「……たまにだと、言っただろう今は、意見が一致している………。カイト、おいで……にーには今、カイトが欲しい」

「………ぇへ」

していることの淫猥さから考えるとあまりに無邪気な勝利の笑みを浮かべ、カイトは腰を浮かせた。にじってがくぽの腰の上に来ると、自分でほぐした場所を殊更に広げる。

「にーにだって、ほんとーは、カイトと遊ぶの、好きだよね」

先端を宛がってつぶやいたカイトの腰に添えた手に、がくぽはわずかに力をこめた。指が食いこんで爪が立ち、カイトは瞳を見開いてびくりと揺れる。

「ぁ、にーに……っ」

「本当は、じゃない、カイト」

招かれるままに、痛いほどに張りつめるものをずぶりと飲みこむカイトに、見ていようがいまいが構わず、がくぽは眉をひそめた。

「にーにとそこは、意見が合わないこともあるが………カイトがかわいいということだけでは、いつでも一致するんだ。こうやって、にーにと遊びたがるカイトが欲しいということだけでは……いつでも」

「ぁあ、ん………ふ、ぁあ……っ」

びくりと揺れて仰け反り、カイトは最後まで腰を落とす。奥深くまで飲みこんだがくぽを確かめるように、きゅう、と締め上げた。

「ん、は………にーに………」

無邪気さが勝つカイトの声にも、さすがに艶が混ざって色を刷く。

がくぽを飲みこんだときにだけ聞ける、特別な声だ。

「………カイト…」

「ぁう………ん、ふ……っ」

瞳を細め、がくぽは掴んだままのカイトの腰を軽く揺さぶった。促されて、カイトはゆっくりと動き始める。

「ん…ぁ、ふ……ぅく………」

「カイト。気持ちいいところは、わかっているだろうそこに、にーにを当ててご覧」

「ぁん………ん、ゃ………にーに……ごりごり、ゃなの……」

カイトは言われるがままに、気持ちいいところにがくぽを擦りつける。腰とともに首を振って、喘ぎながら抵抗を口にし、けれど止めることもできずにそこにがくぽを擦りつけ続けた。

「ゃあ………にーに、ごりごり、ぃやあ………っ、カイ、カイト、よくなっちゃう………ぁんん、カイト、止まんなくなっちゃうぅ………っ」

「そういうのは、厭とは言わないだろう自分から、そんなに腰を振ったりして……」

「ぁう、ぁうぅ……だって、きもちい………きもちい、よぉ………とまんないぃ……っ」

「ふ……っ」

擦り上げながら、カイトはきゅうきゅうとがくぽを締め上げ、絞り上げていく。がくぽも小さく声を漏らし、腰の上で乱れる弟の姿に瞳を細めた。

上着はきっちり着たままなのが、わずかに惜しいような、それだからかえって煽られるような。

その上着の端から、触らないままに勃ち上がって濡れるものがちらりと覗く。

「………」

「ぁ、んんっ?!」

ちろりとくちびるを舐めたがくぽは、カイトの腰を掴み直し、持ち上げて落とす。動きを激しくして、さらにカイトの弱点を強く突いた。

「ゃ、ぁあ、っあ、にー…っにーにっめっ、だめぇ………っぁう、ぁあうっ、にぃ………きちゃう、カイト、きちゃぅう………っいっちゃうよぉ、にーにっ」

「いいぞ、カイト………にーにも、カイトの腹の中に出してやるから………」

「んんぅ……っ」

びくんびくんと大きく震えたカイトが、がくぽに腰を掴んで揺さぶられながら自分のものを掴み、扱き上げる。

きゅう、と一際そこが締まるのと同時に、限界の刺激を待っていた場所から、白濁した体液が吹き出した。

「ぁあぅ………っぅ……っ」

「く………っ」

うねる襞に絞られて、がくぽもカイトの中に限界を極めたものを吐き出す。

達した粘膜を灼かれて沁みこむ感触に、カイトは顔を歪めてさらに震えた。

「ひぅ………っふ……っぁ…………」

「っと……」

放出の余韻で怠いのはがくぽもだが、倒れこむカイトを支えるために体を起こした。

「ぁ………ふ…っ」

「………」

びくびくと震えながら、カイトはがくぽに縋りつき、頭を擦り寄せる。

痙攣する背中を撫でてあやし、がくぽは縋るカイトをきつく抱きしめた。

「………ぇへ」

ややして落ち着いたカイトは、小さく笑う。

「やぁあっと、起きたね、にーに。まったくもー、手間のかかるにーになんだから!」

「………起こされたな…」

顔を上げたカイトは、目尻に名残りの涙を溜めたまま、得意そうに笑う。

がくぽも苦笑を返し、くちびるを寄せてその涙を啜ってやった。

「おまえには、敵わん…カイト」

「あったりまえだし!」

元気いっぱいに言って、カイトは再びがくぽに擦りついた。

「起きた以上は今日も、いーっぱいいーっぱい、カイトと遊べ、にーに!」

強請られるというより命令だが、がくぽは笑ってカイトを抱きしめた。その手が滑り落ちて、未だにがくぽを咥えたままの場所を緩やかに撫でる。

「ぁ……っふ……っ」

途端に声が艶めく弟に、がくぽは瞳を細めた。

「いっぱいいっぱい、遊んでやろうな、カイト………?」

ささやきに、がくぽに縋りついたカイトは言葉もなく、ただこくんと頷いた。