夢繚乱噺-14-

ぐずぐずに溶け崩れているカイトから指を抜き、がくぽは力の抜けた腰を支えた。

「少しう、身を立てろ」

「はぃ……」

力の入らない足で膝立ちになり、カイトは懸命に体を浮き上がらせる。畳に手をついて、ひくつく場所をがくぽへと差し出すようにすると、そこにはすぐにも熱が宛がわれた。

「ぁ…っ」

期待に震えるカイトの中に、がくぽはゆっくりと身を進める。

「ぁ……っぁ………っ」

「支えていてやる。乗れ」

「ひぁあ…っ」

体を持ち上げてがくぽに乗せられ、カイトは堪えきれずに精を吐いた。

畳に手をついて支えていた体が、がくぽの上に乗っている。自分の重さでいつもよりさらに深く穿たれ、それだけで快楽を仕込まれた体は頂点を極めてしまうのだ。

「悦いか」

精を吐いて濡れるものを撫でながらがくぽに訊かれ、カイトはこくこくと頷いた。

「ぁ……っきもち、いぃ、です………っ、がくぽさま、の………ふか、くて………ふとく、て………ぁ、ぉなか、ぎゅうぎゅうです………っ」

「好きだろう?」

「はぃ、すき……すきです………っ」

背後でがくぽが笑う。ともすれば崩れ落ちそうになる体を支えているだけの手にまで痺れて、カイトはぼろぼろと涙をこぼして頭を振った。

「もっと悦うしてやる」

「ひぁ………っぁああっ」

達したばかりで尖る体を、がくぽはゆっくりと責めはじめる。ぴったりとくっついているから、それほど激しくは突き上げない。けれど、重さでいつもより深いところを抉られる。

「……くぽ、さまぁ……っ」

「うれしいか。食い千切られそうなほどに締めつけているぞ」

「ふぁあ……っ」

耳朶を咬みながらささやかれ、カイトは逃げるように体を折って畳に手をつく。がくぽは離れることなく体を追って腰を浮かせると、わずかに動きを激しくした。

「ぁ、ふぁあっ、っゃっんっ」

崩れたカイトの体に、がくぽは手を回す。尖る胸をつまみ、かりりと掻いた。

「ゃ、だめ、ぁっ」

「駄目ではなかろう触れた瞬間に締まったぞ」

「ん、ひぁあっ」

惑乱して頭を振るカイトの耳に、がくぽは笑い声を吹きこむ。涙に歪む視界で首を巡らせて懸命に見上げれば、がくぽの顔もまた愉悦に染まっている。

カイトのことを想って、ただカイトが気持ちいいようにとだけ動くがくぽも、きちんと気持ちよくなっている。

わかって、カイトは少しだけ笑った。

カイトを蕩けさせたい、とばかり言うがくぽが、蕩けた自分でいっしょに気持ちよくなってくれている。

安心するし、わかるだけでさらに体に火がつく。

「が、くぽ、さま………がくぽ、さまぁ………っ」

甘い声で呼ぶカイトに、がくぽは瞳を細めた。

ほんとうなら、もう少し激しくしたほうが、がくぽ自身は煽られる。だが、一度目でまだ解れきっていないカイトはそれでは痛みを感じるし、そもそもがあまり快楽に強いほうでもない。

初めからあまり激しく煽ると、そのあとずっと、怖いと泣いてしまう。

だから我慢が大きすぎて物足りないほどに、ゆっくりと穏やかに。

それでも不満もなく、カイトの中で煽られてしまうのは、この甘い声がひっきりなしに呼ぶ自分の名前ゆえだ。

呼ばれるだけで、甘やかに胸が満たされ、ともすれば気を遣りそうになる。

さすがにいくらなんでも、名前を呼ばれるだけで気は遣りたくないから堪えるが、強請る色を帯びたカイトの声はそれだけで愛らしく、ひどく煽られる。

それが懸命に縋りつくように自分の名を呼べば、募る愛しさは咽喉を塞ぐほどだ。

「ぁ、もぉ………がくぽさ、ま、……ぉねが、もぉ……っ」

畳に崩れるカイトが、仰け反って振り返る。抱いて胸に仕舞い、がくぽはぼろぼろとこぼれる涙を啜った。

「強請れ、カイト。どうして欲しい。中に吐き出して内腑を灼くか、外に出して肌を灼くか」

「ぁ……っ」

訊かれて、カイトはきつく瞳を閉じた。がくぽはその内襞の弱いところだけを突き上げ、抱いた手を尖る肌に彷徨わせる。

容赦なく煽られて、カイトは首を振った。

「な、かに………なか、に………っぉなかの、なかに………だして、くださぃ………っぉく、の………いちばん、ぉくの、とこに………っ」

「ははっ」

笑って、がくぽはカイトを抱きしめた。

貞淑で、貞節な、妻。

奥手で、自分で慰めることも覚束なかった体を開き、仕込んだのはがくぽだ。恥ずかしいと泣きながらも抵抗出来ないのをいいことに、体をつくり変えたのも、がくぽだ。

はしたない口上もおねだりも、すべてがくぽが教えた。

がくぽが望むままに、がくぽのためだけに、淫らがましく咲く体。

懸命に見つめてくる瞳は、いつでもがくぽだけを追う。

「そなたが望むままにしてやろう、カイト。奥深くを抉り、そこに精を叩きつけてやる」

「ぁ……っ」

言葉だけで期待に震え、カイトは中を擦り上げるがくぽを締めつける。がくぽはその腰をやわらかに撫で、軽く爪を立てた。

「ひっ」

「そうだな。精を放つだけではなく、もっと悦うしてやろう」

「ぁ、ゃ、がくぽさまっ」

「少しう、激しくするぞ?」

「がくぽさまっ」

悲鳴のような声には、恐れと、期待とが混在している。

がくぽはカイトの腰を抱え直し、きつく楔を打ちこんだ。

「ひぁあっ、ゃ、ぁあっ」

「カイト……」

仰け反る背に、がくぽはくちびるを落とす。数えきれないほど散る痣花に、さらに新たな一輪を加えて、笑った。

カイトの体に表も裏もない。

すべて愛しく、すべてにそそられる。

畳に崩れた体を抱えると、力任せに起こして自分の上へと乗せた。

「ゃ、ふか………っっ」

「っくっ」

一際奥を抉られて、すでに散々煽られていたカイトは頂点へと押し上げられて精を放った。締めつける内襞に、がくぽはくちびるを噛む。

痙攣するそこをさらに擦り上げると、達したばかりで鋭敏に尖るカイトは悲鳴を上げて仰け反った。

その体を押さえつけ、奥深くへと自分を押しこむ。

「達く、ぞっ」

「ひぁああっ」

呻き声とともに、奥深くにあるものが爆ぜる。内腑を灼かれる感触に、尖っていたカイトの感覚は精を放つことなく、再び頂点を極めてしまった。

「ひ………っぁ……ぁ………っ」

仰け反って瞳を見張り、カイトはびくびくと震えた。間歇的に吹きだすがくぽの精が、内腑に満ちていく。その感触にすら、また感じてしまう。

くり返されて終わりの見えない絶頂感に、カイトはぼろぼろと涙をこぼした。

「カイト……」

吐き出したことで一時的な満足感を得たがくぽがこぼす声は、低く穏やかだ。その手は約束したように、びくびく震える体を抱きしめていてくれる。きつく、きつく、宝物のように。

煽られ過ぎて治まりのつかない感覚は恐ろしくても、胸を満たすのは幸福感で、カイトは泣きながら笑った。

泣きながら笑って、がくぽを振り返る。

歪む夫は、止まらない涙を啜り、頬を辿ってくちびるを舐めた。

そのまま喘ぐくちびるを塞ぐと、縋りついてくるカイトを確かに受け止める。

苦しくても逃げることなく、カイトは差しこまれた舌に軽く牙を立てた。

「がくぽ、さま………」

「ああ」

口づけが解けて、カイトは喘ぎながら、がくぽを見つめた。やさしく微笑むがくぽの体を、爪で掻く。

おねだりをするとき特有の上目遣いになり、まだ中に入ったままの夫をきゅ、と締めつけた。

「もう一回………」

強請って、瞳を伏せた。がくぽの胸へと、頭をぶつける。

「今度は、がくぽさまのお好きなように、なさって……。虐めてくださって、いいですから………」

甘くさえずるカイトにがくぽは瞳を見張り、それから笑った。

後ろから抱いたままのカイトの体を抱え直し、自分に正対させる形にする。

「……」

がくぽは戸惑う瞳を向けるカイトの手を取り、背中へと誘った。

「掻き毟れ。朝になって、こんなにしたのかと泣きじゃくるほどに」

「がくぽ、さまっ」

「望むままに、虐めてやる。存分に泣かせてやろう」

逃げようとする体を抱えこんで、がくぽは再びくちびるを塞いだ。畳へと押し倒すと、すぐさま肌を探る。

追いこんで理性を蕩かしてしまえば、カイトはがくぽの背に縋らずにはおれない。

そう仕込んだのもまた、間違いなくがくぽだ。