いととし背の君さま

「がくぽさま、がくぽさまっ」

「んどうした」

てててっと小走りでやって来たカイトは、あぐらを掻くがくぽの傍らにへちゃんと座った。

にこにことうれしそうに笑いながら、がくぽの耳にくちびるを寄せる。

「………………です」

「………」

こそこそっとささやくと、がくぽは花色の瞳を見張った。

ややして、愉しそうに笑み崩れる。

「そうか」

「はい」

頷いたがくぽに、カイトもうれしそうに頷く。

がくぽはいたずらっぽく瞳を輝かせると、カイトへと手を伸ばして耳たぶをつまんだ。

「耳を貸せ」

「はい」

寄せられた耳に、がくぽはくちびるを開く。

「っひぁ?!」

「っはは!」

舌を伸ばして耳たぶを口に含み、咬みついてやったがくぽに、カイトは素直に悲鳴を上げる。

目元がさっと朱を刷いて、悪戯ものの夫を睨んだ。

「がくぽさまっ」

「よしよし」

笑いながら、がくぽは再びカイトの耳元へとくちびるを寄せる。

「……………」

「…っっ」

ささやいてやった言葉に、カイトはさらに赤く染まった。

恨めしげにがくぽを見つめてから、そっと耳元へくちびるを寄せる。

「………………です…」

「っはは!」

「もうっ!!」

笑うがくぽの首元に、カイトは抱きついた。

笑って抱きしめると、がくぽは瞳を細めてカイトの頭に顔を埋めた。