燈籠荻萩

勝手口に凝然と立ち尽くしたカイトは、羞恥といたたまれなさと諸々が相俟って、全身を朱に染めた。豪勢な着物に包まれていてすら華奢だとわかる体が、ぷるぷるわなわなと震える。

追い詰められた獣の風情で、カイトは喘ぎ喘ぎ、涙目できっとがくぽを睨んだ。

「み、みた……っ、み、みっ、みまっ、したっ?!」

「あー………ああ。まあ……なその、カイト………」

言葉まで覚束なくなるほど動揺しているカイトに、がくぽはそわりと目を泳がせた。因業で鳴らす印胤家の当主らしくもなく、珍しくも困ったように、媚びる笑みを浮かべる。

「見た。が………とりあえず落ち着け、カイト。いいで」

「や、やっぱり見られたぁあっっ!!」

宥めようとするがくぽの言葉を皆まで聞かず、カイトはこの世の終わりとばかりの絶叫を上げた。

「みっ、みられっお、おれ、俺の、俺のあんな、あんなはづかしいところ、がくぽさまに見られたなんてっみ、見ちゃったなんて、がくぽさまっっ!!」

いつもいつも大人しく、おっとりと穏やかなおよめさまらしくもなく、そのまま絶叫が続く。

潤んだ瞳からは今にも雫が溢れそうだし、このまま放っておくとろくな結論に至らない、危機的な予感がある。

「いやだから、落ち着けカイト良いではないか、この程度のこと恥ずかしいとは言うが、俺からすれば愛らしい所作というものだし、なによりも見たのは他ならぬ俺」

「がくぽさまだからだめなんですぅうううっっ!!」

ろくでもない結論に至る前になんとか丸め込もうと、言葉だけでなく伸ばしたがくぽの腕を、カイトはするりと避けた。全身を朱に染めたまま、ずびびっと盛大に洟を啜る。

愛らしい顔が歪み、悲愴な色が宿った。

「いくらがくぽさまでも……いいえ、がくぽさまだからこそ……っ!!」

「カイト!」

「俺が、ぼたもちのつまみ食いしちゃってるとこなんて、ぜったい、ぜったいぜったい、ぜぇえっっっっったいにっっ!!見られたくなかったのにぃいいいいいっっっ!!」