朧ほろやの

「ん……?」

ふっと意識が浮かび、釣られて瞼がうっすら開いていく。同時に違和感を覚えて、カイトは寝転んだまま小さく首を傾げた。

意識は浮かび瞼まで開いたが、覚醒したとは言い難い状況だ。寝惚けた頭でカイトは違和感の正体を探った。

外は暗いが、真闇というほどではない。白んで来ているが、明けたとも言い難い。微妙な刻限だ。

「んんー……」

違和感はあるが、不快なものでもない。原因をどうしても追及しなければいけないという気もしないし、このまま放り置いて寝てしまおうか。

考えながら、カイトは傍らのぬくもりに擦りついた。

「………ん?」

気がつく。

そうだ。空が白むほどの刻限だというのに、眠る自分の傍らにぬくもりがある。単にぬくもりがあるだけでなく、弾力があり、弾力とはなにかといえば、

「ん、んぐっ、………っんぇへっ…ぇへへへへへえ………っ!」

「んぁ……?」

堪えきれず、怪しい笑い声を上げて擦りついたカイトに、ぬくもりもとい、がくぽもさすがに目を覚ました。がりりと頭を掻き、反対の手に組みついて怪音で笑うお嫁さまを胡乱に見る。

小さな吐息がこぼれ、がくぽのくちびるが歪んだ。笑みだ。

「仕様のない………なにぞいい夢でも見たか。寝惚けおって」

「んくふっ、ぇへ、ぇへへえ、ぁくぽさ……ぁく、さ……」

「よしよし……」

蕩けきった顔で笑い擦りついてくるお嫁さまの頭を、がくぽは幼い子相手のように撫でてやる。流れで乱れた布団を掛け直してやり、肩をしっかりとくるむと同時に擦りつく体を抱きこんだ。

「いい子だ、寝ろ。まだもう少しぅ、起きるには早いゆえな。俺が起こすまで、大人にしておけ」

抱きこまれ、背から後頭部から撫であやされとして、カイトはますますもって蕩けて夫に擦りついた。

いつもなら朝議に出るため、この刻限あたりで夫は布団から出てしまう。

昨夜の名残りを引きずるカイトがはっきりと目を覚ますのはずっと先で、その頃にはぬくもりも残っていない。

けれど今朝は違う。カイトがはっきりと目を覚ますその刻限まで、がくぽはこうして共に寝ていてくれる。

幸せだ。幸せとともに、眠気が心地よく戻って来る。

「んんくふふぅ………くすぅ…すぅ………」

「……余程に良い夢を見たか。あとで聞いてみるか…否、夢ゆえな。覚えておらんか」

苦笑とともにこぼし、がくぽもまた、目を閉じた。寝入ったと思われるが、相変わらず笑っているかのようなお嫁さまの寝息に耳を澄ます。

がくぽは寝起きがいい。

だとしても、この幸福に満ちた寝息を聞いていると、縁が切れたと思った眠気が戻って来て、自然と意識が落ちていった。