「ぁ、がく………っ」

硬いまま、吹き出してもいない。

がくぽが終わっていないことはカイトも承知しているが、これまでにない快楽に襲われて、なかなか意識が整わない。

その前に始まりそうな予感に、よろよろと腕が伸びる。

After War of Bride-後半戦-

伸びた指にかりりと肌を掻かれ、快楽と紙一重の掻痒感にがくぽは満足そうに笑った。

「俺もイっておらんが、貴様にもまだ、あんあん言わせていないからな」

「ぁ、や……っん、ふぁっ!」

嘯くと、がくぽは腰を蠢かせ出した。

先とは違い、今度は奥のみを刺激するのではなく、中を掻きだしまた押しこむように、激しい抽送をくり返す。

達したことで快楽に痺れる襞を引きずられ、掻き混ぜられて、カイトは首を横に振った。

「んん、ぁ、ゃ、がく………っぅ、ゃ、ぃい……っ、ぃい……の……っきも、ちぃ………っ、ヘン、なるぅ……っ」

「成れ。構わん」

「ゃあ………っ」

涙声を上げ、カイトはがくぽへと懸命に手を伸ばす。がくぽは腰を打ちつけながらもわずかに屈んでやり、カイトが望むままにしがみつかせてやった。

きりりと、背中に爪が立つ。

「………ふ」

うねる襞に絡みつかれ、絞り上げられるのはこれ以上なく気持ちがいい。

しかし背中に走った痛みは、なにか別種の感慨を持って体を痺れさせ、繋がる雄にも堪えようのない感覚を運んだ。

陶然として呻いたがくぽは、逃げるようにも煽るようにもとれる動きで揺らめくカイトの腰に指を食いこませ、限界寸前の雄をきつく奥へと押しこむ。

「ゃ、ぁ、め………っぉく、イっちゃ………っ」

「堪えろ」

「ひゃぁあぅっ」

しがみつくカイトに招かれるまま体を倒したがくぽは、赤く染まって熱を持つ耳朶に吹きこみ、奥を掻き回した。

一際となったうねりに今度は堪えることなく、走る衝動ままにカイトの腹の奥へ、欲望の丈を吐き出す。

「な、か………ぁ………っ」

「………ああ。出した」

ひくひくと痙攣しながらつぶやくカイトに、がくぽも掠れる声で応えた。

膨らむほどの勢いで吐き出されるものに、カイトはきゅっとがくぽにしがみつき、可能な限り体を丸める。吹き出すリズムに合わせて体がびくびくと震え、堪える縁にきりりと爪が立った。

「ぉ、くに………ぁっついの………いっぱい………いっぱ………っ」

「っつ………」

その爪がさらに強くがくぽの背に食いこんだかと思うと、力を失くしてずるりと落ちる。釣られるように、がくぽの姿勢も崩れた。

たかが一度の放出だが、肉体的なものよりも、降り積もった重さに潰れかけていた感情を吐き出せた解放感が大きい。

ひどい疲労感を堪えながら、がくぽはカイトの中から抜き出すと、下に伸びる体を潰さないように気をつけてベッドに懐いた。

余波に震えるカイトの全身を眺め、怠さに空白となっていたがくぽの表情は笑みを刷く。

「………中に出されて、イったのか」

二度目となるカイトにタイミングを合わせてやれるほどの余力はなく、がくぽはとりあえず先に極めた。

その後にフォローしてやろうと思っていたが、必要もなく、カイトは腹に吹き出すがくぽの熱で、二度目を極めたらしい。

互いの腹で擦り合わせて再び兆したカイトのものは、新たに白く汚れてしんなりと力を失っていた。

純然と初めての行為ではないから、体が怯えることなく快楽を追えるようになっている。それでも、こうまで簡単に反応するほどではない。

瞳を細めるがくぽの首に、カイトは重い腕を伸ばして掛けた。きゅうっとしがみついて招き寄せつつ自分の体の向きも変え、わずかにぶれてくちびるの端にちゅっとキスをする。

「しあわせ………」

「………」

掠れても、声は甘く蕩けて響いた。

がくぽはなにも言わず、カイトを抱きしめてやる。宥めるように背中を撫でると、まだ煽られるのか、カイトはぶるりと震えた。

首に掛けた腕に力を込めて擦りつき、カイトはお返しとばかりにがくぽの胸にちゅっと吸いつく。

甘える仔猫のしぐさそのままに、辿るキスはかぷりと鎖骨に咬みつき、首を食みして、くちびるへと戻った。

「仕様のない甘えたが」

「ね、がくぽ……」

悪戯に対し、がくぽは幸福に満ちて腐す。いつも険しく尖り、ちんぴらに喩えられる目つきはやわらいで、愛おしさに溢れてカイトを見つめた。

そのがくぽへ、カイトは『甘えた』そのものの表情でとろりと笑う。

「おなかの中に出して、気持ちよかった?」

皮肉や嫌味ではない。

カイトは単純に、自分と同じくがくぽも気持ちよくなれたのか、まだ同情や思いやりで気遣われていないか、確かめたいだけだ。

わかるから、がくぽは抱く腕を辿らせてカイトの後頭部を掴み、こつりと額を合わせた。

「これ以上なく。――飽きたらず、悦い」

「ぅん」

がくぽの答えにはにかんで頷き、カイトはお礼のように、ちゅっとくちびるに吸いついた。

子供のような愛らしいキスで離れると、カイトはまだはにかんだまま、上目遣いにがくぽを見つめる。

「あの、あのね………俺もう、がくぽのおよめさんだから……ねこれからも、いっぱいいっぱい、中出し、していーから、ね?」

甘ったるい声音で吐き出される言葉に、がくぽはひくりと表情を引きつらせた。

構うことなく、カイトは羞恥に瞳を伏せて続ける。

「ぅうん………中出しして、おなかいっぱいにして………ね、旦那さま」

「そういえば」

カイトの言葉に被せるように、表情を空白にしたがくぽはつぶやいた。

「貴様、あんあん言っていないな」

「え?」

唐突としか思えない言葉に、カイトはきょとんとした。

そもそも『あんあん言う』がどこから出てきた話題なのかから、わからない。

なにか途中で自分が、『あんあん言います!』とでも宣言したのか。

きょときょとと瞳を瞬かせ、記憶を探るカイトを置き去りに、がくぽはゆっくりと体を起こした。

「やはり貴様の言語選択能力は破壊的だ」

「えがくぽ?」

「壊滅的だぞ。うすうすどころではない。確定だ」

「え、がくぽ………なんでそんな、オトコマエな顔して………」

再び伸し掛かられ、抵抗もしていない体を押さえられる。

カイトは醸し出される剣呑な気配にも負けず、警戒心も忘れてうっかりときめいた。

理性と堪え性とその他諸々を、めためたのぼこぼこに破壊することに長けた『奥さん』を貰ったがくぽは、ふっとナナメに笑う。

カイトはさらにうっかりと、ときめいて見惚れた。

「男前なのは、顔だけではないぞ。見ろ」

「え……………」

偉そうに顎をしゃくって促されるままに視線を流したカイトは、すでに十分に兆したがくぽの『息子』の雄姿に、ほわわんと頬を染めた。きゅっとシーツを掴み、瞬間的に痛いほど疼いた腹を堪える。

反省知らずにして、逞しいご子息だ。

どぎまぎとして視線を微妙に泳がせつつも結局は凝視し、カイトはうっとりと蕩けた声でつぶやいた。

「えとね、がくぽ……………いくら夫婦でも、こうやってがちがちに興奮したものを見せつけるのって、どうかと思う………しかも一度は中に入って、ヨゴレちゃってるし」

「貴様」

ぴきぴきと引きつるがくぽに構わず、カイトはうっとりほわわんと蕩けた表情を向けた。

「えと、口でする俺、およめさんだから、旦那様のおしゃぶりして、きれいにしてあげるよそれとも」

「どうしてそう、悩ましいんだ、貴様というやつは!!」

「えー………?」

がっくり項垂れ、崩れてきたがくぽの重みに眉をひそめつつ、カイトはその背中に腕を回す。宥めてやろうと軽く叩いたが、この場合は逆効果というものだ。

無自覚極まりないカイトに、がくぽはがばりと体を起こした。

回った腕ももぎ離すと、しどけなく投げ出されているカイトの下半身を掴む。

「貴様はやはり、あんあんとだけ言っていろ。いや、言ってなかったなとりあえず言え」

「がく………」

「言わせてやる。というより、言うまで離さん!」

「…………」

なにかしらぷっつりと切れたらしいがくぽをきょとんと見つめていたカイトだが、どちらにしろ理由は不明だ。

わかったことは、『旦那さま』がとてもやる気漲っているということ。

だとすれば、尽くしたい体質の『奥さん』として、答えはひとつだ。

「がんばる………」

「く……っ」

ほわわんと頬を染め、恥じらいながらこっくりと頷いて了承したカイトに、がくぽは苦鳴を漏らした。

危うく、押しこむ前に果てるところだった。

いくらなんでも、ここで果てるのはあんまりだ。『妻』を迎えたことは初めてで、そういう意味で初心になるのは仕方ないが、だとしても許容限界を超える。

なんとか堪え、男として最低限の矜持を守ったがくぽは、恥じらいと期待に満ちて見つめるカイトをきりりと睨み据えた。

「ついでに事が終わったなら、貴様のその歪んだ知識がどこで仕入れられたものなのか、根掘り葉掘りすべて訊き出すからな答え如何によっては、しばらくベッドから離れられないものと思えよ!」

「えなにっぁ、っ」

ちょっぴり涙目で落とされた、がくぽの宣言の意味を追う間はない。

きょとんとしたことでいい感じに力が抜けていた腹の中に、がくぽは痛いほど兆してカイトを求めるものを押しこんだ。