「んっ、ぁ………っあ、ふゃあ………っ」

がくの欲望が腹の中に吐き出され、カイトは痙攣をくり返した。

すでにカイトは吐き出し、手に受け止めた欲望をがくぽが味見している。やめろとくちびるに噛みついたところで、がくが放ったのだ。

攻撃は中途半端に終わり、カイトは腹を満たす熱の感触に震えた。

Three Peace-後編-

「ぁ………っ」

「大丈夫か、嫁よ?」

「ん、……っ」

すぐさま体を倒して窺うがくに、カイトは手を伸ばす。嫁と呼ぶなといつもの反駁をする代わりに、きゅっと抱きついてくちびるを塞いだ。

「ん………ふ、ん………っ」

「ん………」

甘えるようにキスを強請るカイトに、がくは仄かに笑みを刷いて応える。

がくぽが放したことで、がくはカイトの体を完全に自分の膝に上げた。

入れたままだったが、すでに一度掻き回し、放出したことでうまい具合に動きがなめらかだ。カイトが苦情を上げるほどでもなかった。

「ん、がぁく………」

「ああ。すぐに…………」

次は兄の番だと言いかけて、がくは止まった。

いちゃつく嫁と弟の二人を見るがくぽが、愉しそうだ。とても愉しそうだ。

非常に嫌な予感がして、がくは腰を引いた。

未だカイトに入れたままで、しかも膝に乗せている。逃げられる距離はたかが知れている。それでも思わず、腰を引かずにはおれなかった。

がくの表情に気がついたがくぽは、さらににっこりと無邪気に笑った。

無造作に手を伸ばすと、がくを飲みこんだままのカイトの窄まりを撫でる。

「っゃあっ」

「っくっ」

達したばかりで、神経が過敏になっている。そうでなくとも、弱い場所だ。今はがくを飲みこんでいることで、さらに弱くなっている。

軽く撫でられただけでもカイトは腰を跳ねさせ、中のがくを締めつけた。だけでなく、きゅうっとがくに抱きつく。

締め上げられたがくは束の間呻いたものの、すぐにカイトを抱き返し、二人の様子に構うことなく同じところを探る兄を見た。

「兄者、なにを企んで」

「うむ。そなたが考えていることで合っておるぞ、弟よ」

「兄者………っ」

がくぽにしらりと言われて、がくは抱きしめたカイトの肩に顔を埋めた。

一方カイトは、そうやってがくに抱えこまれていることで、かえって逃げ場を失くしている。ひたすらに、甘く高い声で啼くしかない。

「んっ、や、ゃあ………っ、ぁ、がくぽ……っがくぽ、め………っそこ、いれたまんま、さわっちゃだめ……っ」

「うむ。緩んだな。そこそこ」

甘く迸るカイトの懇願に応えることなく、がくぽはがくを飲みこんだままの場所に軽く指を押しこむ。

びくりと跳ねたものの、カイトが大きく痛みを訴えることはなかった。

「兄者………っ、いくらどうでも、無理だ。嫁が壊れる」

「大事ない。我とて、嫁が愛しい。壊すようなことなぞせん」

「兄者………っ」

引きつるがくの諫言にもしらりと返し、がくぽは袷を開いて張り詰める己を取り出した。

おそらく、自分が先に抜き去ればいい。

そう思うものの、兄の意図を察し、そのうえそれが強固だとわかると、がくは身動き取れなくなった。

嫁がかわいい。愛しい。

酷いことはしたくないが、兄の意向に逆らうことは、難しい。あまりに難題だ。

言う通り、がくぽがカイトを愛していることに疑いはない。壊すようなことはしないと、その宣言も確かだ。

だから、できると判断してやる気になったなら、――

「がく」

「っっ」

滅多に呼ばない名前を呼ばれて見据えられ、がくはびくりと固まった。

がくぽは漲る己を構えたまま、うっそりと笑う。

「大人にしておれよ。嫁をきちんと、抱いておけ」

「………っ」

「っぁ、がく……ちょ、いた………っ」

怯えたがくにきつく抱きしめられ、背骨が軋んだカイトが小さな悲鳴をこぼす。

それでもがくは力を緩めることもできず、どころかカイトの頭を抱きこんで、兄を振り返ることがないようにした。

見れば、意図を察するからだ。そこから悶着が起これば、がくぽの思う通りには進まない。

どちらが大事かと言われると――つまるところ、そういう問題ではないのだ。がくにとって。

すでに兄から命令が下った。

だとすれば、その通りにするしかない。

固まって見つめるがくに、がくぽが浮かべる笑みはあくまでも愉しそうだ。ちゅっとカイトの肩甲骨にキスを落として体を跳ねさせ、未だにがくを飲みこんでいる場所に己を宛がった。

「っぁ、がく……がくぽ………っ?!」

「力を抜いておれ、嫁。これ以上なく、悦うしてやる」

「ぁ………っ?!」

耳朶を食みながら低く吹きこんだがくぽは、カイトがなにか応じるより先に腰を進めた。

「っひ、ぁ……っ?!ぁ、や、ぅそ……っゃ、あ、あ、がく……っがく、がく………っ」

「カイト……っ」

びくりと背を仰け反らせ、逃げようと腰を浮かせたカイトだが、がくがしっかりと抱えこんで離さない。

逃げるに逃げられず、ひたすらに懇願して名前を呼ぶだけになった。

がくにしても、大丈夫だと言ってやれない。

抱き締めておくのが精いっぱいだし、なによりカイトもきついが、自分もきつい。

ごりごりと押しこまれるがくぽのものによって、圧されているのはがくもだ。

しばらくはひたすら抱きしめていたが、そのうちがくは自棄になった。逃げようと伸び上がったために目の前に来たカイトの乳首に齧りつき、吸い上げる。

「ひぁん………っ」

「ふ………っ」

弱いところ多々あれ、そこもまた、カイトの弱点だ。しかも唐突で、用心もしていない。

咄嗟に意識が向いたことで、下に集中し、強張っていた体が緩んだ。その隙に、がくぽは一気に己を収める。

「でかした、弟よ」

「兄者………っ」

たぶん、本気で褒められている。

しかしうれしくない。

ほとんど涙目で、がくはカイト越しに兄を見つめた。それからおそるおそると、肝心の嫁の表情を窺う。

案の定、カイトはあまりの事態に呆然としていた。

こんなことは、初めてだ――想定もしていなかったのだろう。まさか自分の腹に、雄を二本も押しこまれるなど。

押しこまれて、飲みこめてしまうなど。

「人間ではない。ロイドゆえな。柔軟性が違う」

「兄者は冷静だな………」

多少声を上擦らせながらも説いたがくぽに、がくはなにかしら脱力してつぶやいた。

「とはいえまあ、初めからは無理だ。二度目以降よな、やはり。………カイト、動くぞ」

「ゃ、ぅそ、………っめ、だめ、がくぽ……っ、がく、がく、………っ」

「すまん、カイト………」

「ゃぁあ………っ」

縋るように呼ばれたが、こうなってしまうとがくには止めようがない。せめて早く終わらせてやるのが、唯一できることだ。

がくはカイトから顔を逸らし、兄に合わせて腰を突き上げた。

がくぽにしても、入れられたから動かすのもいつも通りにいくとは、思っていない。愉しげだが、あくまでも慎重にカイトの中を探った。

「ゃ、や………っおばか………っおばかども……っぬいて………っぬぃて、むり…っ………むり、こんなの、むりなんだからぁ………っ」

「よしよし、嫁よ………悦くしてやると、言ったろうが。すぐゆえ、泣くな」

「おばかぁ……よくないもん…………っ」

しらしらと言うがくぽは、ぼろぼろと泣くカイトの涙を啜る。顎を捉えていた手を滑らせて胸へと這い、つぷりと尖ったままの乳首をつまんでひねった。

「っひゃぁあっ?!」

「っっ」

「っ…………」

弱いことは確かだが、その瞬間に走った感覚はこれまでにないものだった。

そうでなくともきつい場所をさらにきつく締め上げたカイトに、がくぽとがくも一瞬、動きを止める。

ややして、がくぽは納得したように頷いた。

「なるほど」

「………わかった、兄者」

「うむ」

がくも頷く。疲れたようだが、その表情には少しばかり明るさも戻った。

がくぽはさらに下へと手を滑らせ、濡れるカイトの男性器を掴んだ。がくのほうは体を屈めて、カイトの乳首に直接に食らいつく。

カイトの反応は顕著だった。

「っや、ひぁあんっ、ぁ、あああっゃ、だめっ、さわんな………っさわんな、でっ………っぁ、ヘンなっちゃぁ……っヘンなっちゃうぅうっ………もちぃ、きもちぃ、すぎて、ヘンなるからぁあ……っっ」

「……っ」

「ふ………っ」

乳首に食らいついたままのがくはそのまま眉をひそめ、がくぽはくちびるの端を持ち上げて笑う。

絶叫に近い嬌声を上げるカイトは自分から腰を振り、無茶苦茶をやるおばか亭主どもを二人まとめて、きちんと味わっていた。

締めつけ、絞り上げ、中の動きは堪らないものがある。

「兄者……っ」

「まあ、良かろう」

弟の苦鳴に、がくぽも堪える声で応えた。

ほろほろと雫をこぼすカイトのものを扱く手に力をこめ、スピードを上げる。がくは食らいつくだけでなく、片手を上げてカイトのもうひとつの乳首も嬲った。

「ん、ゃ、や、やぁあ……………っっっ」

「っ」

「………っ」

一際かん高い声とともにカイトの体が激しく痙攣し、がくぽの手が濡れる。同時に、二人はカイトの腹の中にたっぷりと欲望を放っていた。

「ぁ………っ」

しばらく痙攣していたカイトだが、その体が唐突に力を失くして崩れる。

「カイトっ」

「ふ……っ」

慌てて抱えたがくに対し、がくぽのほうは軽く支えただけであとは弟に渡して、カイトの中から己を抜きだした。

「弟よ」

「あ、ああっ」

促しながら、カイトの体を受け取る。

がくも抜け出ると、兄の腕の中でくったり崩れるカイトを覗きこんだ。

「軽く、処理限界を超えたのだろう。すぐ目覚める」

「兄者………」

「悦かったろう?」

恨みがましい弟の呼びかけに、兄は堪えた様子もなくしらりと問う。

がくは崩れかけてから、胡坐を掻いて座った。

疲れ切った顔のカイトと、愛おしげに見つめるがくぽとを交互に見比べながら、ぶっすり膨れる。膝に肘をつくと、そこに顎を乗せて吐き出した。

「悦かったとも。これ以上なく!」

「では、良かろう」

「良いわけなかろう、兄者。嫁が起きたら、それで通ると思うか布団隠れコースだぞ、間違いなく。しかも半日のことでなく、三日くらいは篭もるぞ」

「………………………」

指摘されて、ようやくがくぽは黙りこんだ。考えこむ間が空いて、至極真面目に弟を見つめる。

「忘れさせたら、どうだ」

「どうやって」

記憶を弄るのは、あまりいい発想ではない。そもそも、それが赦されるのはマスターとラボと、複合での認証が必要になる。

ぶすくれる弟に、兄はあくまでも真面目な顔だった。

「いや、だから………上書きすれば良い。起きたなら、考える隙を与えずに怒涛のごとくに快楽漬けにし、事を曖昧にしてしまえば」

「…………………………兄者」

悪いにもほどがある対処法だ。

がくはすっと顔を上げ、肘をついていた手をがくぽへと伸ばした。

兄の手をがっしり握ると、真面目な顔でこっくり頷く。

「これ以上なき良案だ。兄者は頭が良いな!」

ようやく機嫌を直した弟に、がくぽはほんのりと笑った。

「いや、なに………ほんの嗜みの程度だ」