Hush-a-baby

泡だらけのがくたんが、胸を張る。

「かいちょはせっしゃの嫁でごじゃるせっしゃはかいちょの婿でごじゃる!!」

「ばぁっか」

堂々言い放ったがくたんの額を、浴槽に浸かっているレンが、ぴんと弾いた。

「そんな粗チンで、偉そうな口聞くな」

「そ………?」

「れーんーくーんっ!」

「だっ!!」

レンの額を弾いたのは、がくたんの体を洗っていたカイトだ。珍しくも怖い顔で、渋面で赤くなった額を押さえるレンを睨む。

「がくたんにヘンな言葉、教えない!」

「ちぇー………」

「??」

額をさすりながらそっぽを向いたレンと、珍しくも怖い顔のカイトを見比べ、がくたんは首を傾げる。

スポンジを握るカイトを振り仰ぎ、訝しげに眉をひそめた。

「かいちょ、そ……」

「がくたん!」

言葉の意味を訊こうとしたがくたんに皆まで言わせず、カイトは小さな体を膝に乗せた。

ぎゅうっと抱きしめると、ぷにぷにのほっぺたにちゅっと音を立ててキスをする。

「忘れるそんな言葉、覚えちゃダメ忘れたら、いっぱいちゅうしてあげるから……」

「わすれたでごじゃる!!」

がくたんは迷うこともなく、即座に疑問を投げ捨てた。

抱きしめるカイトに擦りつくと、期待に輝く瞳で見上げる。

「せっしゃ、わすれたでごじゃるだから……」

「ん キス、いっぱいあげる!」

「あーもー…………。にぃちゃんはがくたん、甘やかし過ぎだっての………」

がくたんの顔中にちゅっちゅとキスの雨を降らせるカイトを横目に眺め、レンは浴槽に沈みこみながらぼやく。

がくたんはさらにカイトに擦りついたが、泡だらけだ。手が滑って、カイトの胸を引っ掻いてしまった。

「ぁ、ん………っって、ぁわわっ!」

思わず漏れた甘い声に、カイトはぴたりとキスを止め、恐る恐るとレンに顔を向けた。

頭痛を堪えるように額を押さえていたレンは、ややして疲れたようにつぶやいた。

「にぃちゃん、…………………………そいつが粗チンのうちは、いろいろ堪えとけ………………」