Rub-a-dub-dub

「がくたん、こういうときは、目を閉じて………」

「ぬ……」

言いながら、カイトは上を向いたがくたんの両瞼に、ちゅっちゅとキスを落とす。

「ね、開けてちゃダメ。いいよって言うまで、目を閉じててね?」

「ぅむ」

頷き、がくたんはぎゅっと目を閉じた。カイトは念を押すように、がくたんの瞼にもう一度、キスを落とす。

「じっとしてるんだよすぐ済むから………いい子にしててくれたら、気持ちいいだけで終わるからね」

やさしく言ったカイトは、上を向いて目を閉じるがくたんを確かめると、その長い髪を軽く梳く。

いつもいつものこととはいえ、一度でも恐怖心や嫌悪感を抱かせると、後々が面倒になる。

カイトは慎重にがくたんの様子を窺い、しかしあまり長い時間を掛けるとそれはそれでストレスになるため、素早く用意を済ませた。

「いくよ………?」

「ぅむ。覚悟はできているでごじゃる………!」

ぎゅっと瞼に力を込めたがくたんに少しだけ笑うと、カイトは長い髪を梳きながら、頭をさりげなく押さえた。

「いい子にしててね…………すぐ終わるから」

「ぬぬ………っ!!」

がくたんが悲鳴を上げかけて、懸命に飲みこむ。

長い髪を幾度も幾度も梳いてやりながら、カイトは甘くささやいた。

「いい子、がくたん………男の子だね、偉いね、強いね…………ね、気持ちいい、気持ちいいだよすぐ終わるからね、大丈夫だから………」

「んぬ………っ、っっ、っっ!」

がくたんは顔を真っ赤にして、悲鳴を飲みこみ、堪える。

ややしてカイトは肩から小さく力を抜くと、押さえていたがくたんの頭から手を離した。

「はい、シャンプー流し終わった。もう目を開けても沁みないよ、がくたん」

「ぬぬ………っ」

シャワーを止めながら言ったカイトに、がくたんは恐る恐ると目を開いた。

カイトはタオルを取ると、わずかに顔に垂れる水滴も丁寧に拭ってやる。

「ね、大丈夫だったよねがくたん、今日もいい子に出来て、とっても偉かったよ」

「ぅむ。せっしゃ、オトコでごじゃるこれくらい、へーきのへーじゃでごじゃる!!」

さっきまでびくびくしていたのはどこへやら、がくたんは胸を張ってカイトに応える。

カイトはにっこり笑うと、今度はコンディショナーを取った。

「がくたんの髪は長いから、大変だよね。切りたい?」

訊かれて、がくたんは髪にコンディショナーを擦りこむカイトを振り仰いだ。

「かいちょは、せっしゃの髪、めんどーでごじゃるか」

「ううん。全然。がくたんの髪、きれいで大好き」

花の笑顔で答えるカイトに、がくたんはちょっぴり赤くなって、前へと向き直った。

「せっしゃも、かいちょに髪をいじってもらうの、しゅきでごじゃる。だから、切らなくていいでごじゃる」

ぼそぼそっと吐き出したがくたんに笑うと、カイトは後ろからぎゅっと抱きしめて頬にキスした。