くら

「あーんっ!」

「ん」

ご機嫌なカイトの口に最後のお菓子を放り込み、がくぽは屑のついた指を軽く舐めた。

「んーっ、んっ」

「………」

もぐもぐまぐまぐと、カイトは至極うれしそうに菓子を咀嚼する。

しばらくじっとその様子を見ていたがくぽだが、カイトがごっくんと飲みこむのと同時に軽く首を傾げた。

「カイト………そういえば、おまえばかりが菓子を強請っているが………俺に菓子は?」

「んぃ?」

唐突にも過ぎる言葉に、カイトは瞳を大きく見張り、思いきりきょとんとした。

構うことなく、がくぽは膝に乗せたカイトへ向かい、片手を振ってみせる。

「Trick or Treat……だ。菓子を寄越さないなら、悪戯するが」

「………」

あくまでも真面目な顔で主張するがくぽを、カイトはきょときょとと、不思議そうに見つめる。

しかしすぐ、にこぱっと笑み崩れると、自分のコートの襟元に軽く、指を引っかけた。

「いいよ、イタズラして俺のこと、食べて………?」

無邪気な悪戯っ子の顔ままだが、わずかに色が混ざっている。声やしぐさからも稚気が抜けないままで、かえってひどくそそられる色香が含まれ、危うい。

膝に抱いたカイトの醸し出す、アンバランスであるがゆえに逆らい難い色香に瞳を細めたがくぽは、腰に回した腕に力を込めた。

「カイト………」

「ぅん」

「ちょっとそこに座りなさい」

「――へ?」

カイトはすでに、がくぽの膝に座っている。

ちょっとそこってどこだときょろきょろするカイトに構わず、がくぽは腰を抱く腕にさらに力を込めた。

「いったいどこの鋺-かなまり-に、そういうみだらな言葉やしぐさを教わってくる。悪い鋺の言うことは聞いちゃいけませんと、常日頃から言っているだろう。おかーさんはかなしーぞ」

「えと、ごめんなさい、おかーさん?」

きびきびと言われても、今日のカイトは腰をがっしり抱えこまれていて、逃げられない。そのせいもあってか、カイトは珍しくもおどおどとして、素直に謝った。

そうしてから、きりりと引き締まった男らしい表情のがくぽを、小首を傾げて見る。

「えと、あのさ、がくぽ………がくぽって最近、マスターに似てきた………」

「っっ?!」

ずがびんっと衝撃を受けて固まったがくぽに、カイトは甘えるように顔をすり寄せた。