膝の上にはイトがいる。

単に甘えて座っているわけではなく、むしろ『奥さん』として、旦那さまのがくぽを『甘やかし』中だ。

ミーシャとお人形のおうち-02-

そのイトは苦しい腹を堪えて足を踏み鳴らし、叫んだ。

「おれの話を聞けっ、神威がくぽっ!!」

未だ涙目ながら、ちょっとばかりぷんすかぷんと、怒り気味だ。

「カイをスキモノって、言うなっ神威がくぽがえっちぃことするから、カイがえっちになるんだろっあとおれはもう、じゅうっっぶんに気持ちいーから、これ以上ヘンなこと考えるなっ!!」

「概ね断る」

「え、僕、スキモノでいーよ、いっちゃん?」

「ぎにゃっ!!」

二人に同時に反論され、イトは悲鳴を上げた。

きゅうっと竦んだイトに、カイはおっとりと笑いかける。

「インランえっちなスキモノになっちゃうくらい、がくぽのこと、とっても大好きって。言葉だけじゃなくて、体でもがくぽのこと大好きだいすきって、言ってるってことだもの。僕、がくぽにスキモノって言われるの、………すきっ」

「っっ」

「………っ」

きゃーーーーー☆

――とでも続きそうな風情で、カイは愛らしくもきっぱりと言い切った。同時にイトがぎっとがくぽを睨み、睨まれたがくぽはさっと目を逸らす。

「……………いちいちおっきくするな、神威がくぽ」

「限界になっていない以上、大きくなる」

目を逸らしたまま苦しい言い訳を吐いたものの、がくぽは軽く左手を上げた。

「しかしまあ、いくら好かれていても、今後は自重する」

反省の弁を述べると、非常に疑わしそうな目つきをしているイトへ視線を戻す。

一度は離した腹へ手を戻すと、中のものを意識させるように、わずかに押し気味に撫でた。

「っぁ、ちょ………っ!」

びくんと跳ねたイトに笑みを取り戻し、がくぽは一瞬で潤んだ瞳にくちびるを寄せた。

「だが、こちらは断る」

「えな、こち………っゃ、あ?!」

腹を撫でた手は肌を滑りながら降りて、ぷるぷると震えながら勃ち上がっているイトの性器を通り越し、その先、『奥さん』として健気に『旦那さま』の雄を飲みこんでいる場所まで行く。

先にカイが言ったように、限界まで開いているようなそこを、器用な指がゆるりと撫でた。

「ぁ………っ」

「――お主は気持ちがいいと言うが、俺は足りん。言っているだろう?」

「だから、動けって動いていいって、むしろ動け………」

「違う」

喘いで裏返り、ひっくり返った声で、イトは懸命に叫ぶ。

その言葉を無情に叩き落として、がくぽは顔を上げた。びくびくと波打つ腹を、そのさらに下を、怯え揺らぐ瞳で見つめるイトに、くちびるを歪める。

嗜虐に染まり、同時に欲求がこれ以上なく満たされている、肉食の獣に似た顔だ。

「『俺が』足らないと言っているのではない。『お主の気持ちいい』が、足らんと言っている」

「じゅうぶんだって、っ」

がばりと顔を上げたイトへ、がくぽは爽やか胡散臭い好青年な笑顔を向けた。

怯えのあまりに毛を逆立てたイトに、笑みはますます爽やかとなり、胡散臭さを増す。

「いいや、足らんぞ俺にとって、お主が気持ちいいという最低限の状態はな――泣き喚いてもう赦してと請い叫び、最終的には意識を飛ばすことだからな?」

「ゃぁあああっ!!」

「あ、あの、がくぽっ!」

最低限どころか、突き抜けて行き過ぎだ。

戦慄して悲鳴を上げたイトに、カイもまた、がくぽを宥めようと腰を浮かせる。

そのカイに向けたがくぽの笑みは、淫靡に堕ちて蕩け、嗜虐に染まって愉しげだった。

「ぁ」

腰が抜けてぺたんと布団に戻ったカイに、がくぽは軽く顎をしゃくる。

「転がれ、カイ。言ったろう。『嫁』としての責務を果たさせてやると。同時に、悦うもしてやると」

傲然と命じると、ぷるぷる震えるイトの顎を掴み、自分へと向かせる。浮かべる笑みは、成年男性であっても稚気の強いイトには過ぎる、正真正銘の大人の雄のものだ。

カイと同じく腰が抜けたも同然の状態となったイトに、がくぽは笑うくちびるを寄せた。

「イト、主もな俺の『嫁』としての責務だけでなく、カイの『夫』としての責務も、果たそうな」

「えぁ、かむ………っんっ!」

笑い声を吹き込まれ、そのままくちびるを貪られる。問い返すことも、そもそも言われたことの意味を考える暇もない。

激しく口の中を蹂躙しながら、がくぽの手がイトの体を這い回り、ぷくりと膨れた胸の果実をつまんで転がす。肌を掻いてうねる腹を撫で、とろりと蜜をこぼして濡れるイトの雄を掴むと、やわらかな手つきで揉んだ。

「ん、ぁ、んーーーーっ」

悲鳴を上げようにも嬌声をこぼそうにも、声の出口はがくぽによって蹂躙され続けている。

イトはきゅっと目を閉じ、がくぽが与えるきつすぎる快楽にただ、悶えた。

「ぁ、ふぁ………っ」

「ふ……っ」

ややしてイトが蕩け、なにかを言われても反論の言葉も思いつかないほどになって、がくぽはようやくくちびるを離した。

そうとはいえ、もともとが『最中』だ。長く掛かることもなく、わずかな時間でイトの体は力を失くし、がくぽに好き勝手されるだけと化した。

堪え切れずに笑って、がくぽはイトから布団へと目をやる。

訳も分からないまま転がって待っていたカイと目が合って、表情はやわらかに綻んだ。

「いい子だ。よく待ったな」

「ぁ、えと、がく………」

「俯せになれ。イトゆえな……おそらくそのほうが、良い」

「え?」

カイは蕩かされたわけではないが、やはりがくぽの言う意味はわからない。

きょとんとして咄嗟に応じられないカイに、がくぽが向ける笑みはあくまでもやわらかく、やさしかった。

「俯せになれ。尻を向けて、こちらへ掲げて見せろ」

「………っっ」

――笑みと声のやさしさと、命じられることの差が大きい。

カイは音が聞こえるようなさまで真っ赤に染まり、きゅっと足を閉じた。しかし逡巡は、長くない。

これがイトだと、恥ずかしい、えっちだ、神威がくぽのどヘンタイえろえろサドサド等々、語彙の限りを尽くして詰り罵ってくれるだろう。

挙句にできないと泣いて、なだめすかして言うことを聞かせる羽目になる。

――つまり最終的には、概ねいつでもがくぽが我を通す。余程のことでもない限り折れないので、イトの罵倒にも特には反論しないがくぽだ。

なんだかんだあっても、イトは『奥さん』を自称するだけあって、最後にはがくぽを甘やかしてくれる。

あまり過ぎれば愛想を尽かされ、『離婚』を言い出されるかもしれないので、がくぽもそれなりに手加減しようとは思う。ただし、努力義務程度で。

カイもイトも二人とも、愛らしいのだ。しかも無自覚なあまりにかえって小悪魔のように性質が悪く、がくぽのことを誘って止まない。

煽りに煽って、堪え切れずに体を開けばさらに、蕩けてがくぽを受け入れ、溺れさせる。

「………こ、お?」

羞恥で強張る体を懸命に反し、がくぽの言う通りにしたカイは、恐る恐ると顔だけ向けて訊く。

意識が覚束なくなっているイトの性器を弄びながら待っていたがくぽは、素直に言いつけに従ったカイへ、やさしく頷いてやった。

「尻に手を掛けて、開け。両方の手だ。お主が今いちばん、疼いて寂しいと思う場所が、よく見えるようにな?」

「………っっ」

――相変わらず表情と声と言うことに、ギャップが大きい。

カイはこれ以上ないと思ったにも関わらず、さらに赤く染まった。熱が上がり過ぎて、処理限界を超えそうだ。

きゅうっと体を縮めたものの、やはりカイはイトほどに抵抗がない。気持ちがいいことも好きだし、健気に尽くす気質でもある。

そろそろと手を伸ばすと、がくぽが言うように手を掛けて、きゅっと締まる肉を開いた。恥ずかしいことこのうえないが、同時に期待と被虐的な悦楽から、晒された場所は淫猥にひくついて男を求めている。

「が………くぽっ」

「いい子だ。カイ。そのままな!」

さすがに声を掠れさせたカイを即座に褒め、がくぽは腰を浮かせた。理解が出来ないまま、蕩けた中に不可解を混ぜた視線を寄越したイトの瞳を、誑かす笑みで覗き込む。

「気持ちいいか、イト?」

「ぅん」

素直に頷いたイトのこめかみにくちびるを当て、がくぽは機嫌よく顎をしゃくった。

「カイのことも、気持ちよくしてやれれば、良いと思うな?」

「……ぅん」

恥ずかしい格好での待機を強いられているカイを認め、ほわりと頬を染めたイトはわずかに腰を引いた。それでも確かに頷いたイトを、がくぽは強引に前へと押し出す。己の雄は押しこんだまま、抜くこともない。

「ぁ、かむぃ、がく」

「律儀だな、本当に」

どうでもいいことをつぶやき、がくぽはなにかを察知したイトが逃げようとするのを押さえこんだ。力の差に物を言わせると、俯せで待つカイに諸共に伸し掛かる。

「ぇ、あ、がく……っぁっ?!」

「ふぁ、あっ?!ぁ、ぅそ、ぉっっ?!」

上げた嬌声は悲鳴と驚愕も含みながら、同じKAITOシリーズであるカイとイト、二人の特性ままにきれいに重なって、憐れなほどに美しい旋律となった。

耳から思考を蕩かされたがくぽは、上手く行った試みもあって満たされた笑みを浮かべる。

しかし言うなら、まだ初手だ。終わってはいない。これから仕上げがある。

「な、なに、ぁ、あ、おなか………っおなか?!」

「ぁ、あ、あっ、きつ、ぁあっ、ゃっ、ぁああ!」

カイも言葉にならないが、それ以上に言葉にならないのが、イトだ。がくぽとカイに挟まれ、体の自由も少ないが、なによりも――

「カイ。どうだ、『夫』のものは初めてだったな。しかし俺で馴らしてあるし、そういう意味では『初めて』ではないだろう。きちんと奉仕してやれよイトのほうは正真正銘、『初めて』だろうからな」

「え、ぁ、………っぁ、い、いっちゃん?!」

がくぽの言葉から起こったことを察して、カイは布団に半ば潰れたまま、懸命に顔を巡らせた。

がくぽに支えられても崩れて、イトが伸し掛かっている。ただ伸し掛かるのみならず、ぴたりと密着した下半身は、密着以上にカイの体を割り開き、腹に押し込んでいる。

なにをと言って、確かに覚えがある。まったく同じではないが、似たものを知っている。

これまでにも何度も、がくぽに与えられた――けれど、がくぽではない。とするなら。

「い、いっちゃんの………いっちゃんの、僕の、なか………?!」

「イトはお主の夫で、お主はイトの嫁だろうおかしなことがあるか?」

「ぇ、あ………っ!」

しらりと訊くがくぽに、驚愕に染まっていたカイの表情が徐々に緩み、甘く蕩けていく。

「ぅうん………っ」

布団に半ば潰れて埋もれたまま首を横に振り、カイは『お嫁さん』としてのしあわせいっぱいに、微笑んだ。

「きもちぃい………っ」

「っぁ、ひぁああっ!」

あっさり納得したカイに対し、間に挟まれたカイの夫にしてがくぽの奥さんは、ほとんど悲鳴となった声を上げた。

初めて、『男』として経験した。

がくぽで馴らされたカイは抵抗もなく蕩けてイトを受け入れ、しあわせだと歓んで、突き入れられたものをきゅうっと締め上げる。初めて経験するに、カイの体は極上品だ。初心者向きではない。

かてて加えて、イトの腹には未だがくぽが押し込まれたままだった。

正真正銘の男ながら、『男』としての経験はなかったが、『奥さん』としてはそこそこ経験を積んでいるイトだ。腹に押し込まれて掻き混ぜられることで、快楽を得ることを知っている。だけでなく、後ろだけで極められるようにすら、なっている。

「………しまったな。己でやっておいて、うっかり妬いた」

過ぎる快楽にほとんど意識が飛びかけているイトを抱えたがくぽは、ぼそりと反省の弁をつぶやいた。

しあわせだと笑ったカイに、嘘はなかった。だからといって、がくぽに向ける愛情が騙りというわけではない。

がくぽだとてカイとイト、双方に情を与えているのだ。カイだけに一途を望むつもりなど、ない。ないはずだ。ましてや、相手はイト――言い分はあれ、がくぽのかわいく愛しい奥さんだ。

しかしあまりにしあわせそうで蕩けたカイの笑みに、漲るのと同時に腹がもやついた。心理様態は素直にイトを貫くものに反映され、そうでなくとも押し広げる場所をさらに開いた。

前と後ろと、惑乱しているところで揃って与えられた刺激だ。快楽に弱いイトが、堪えられるものではない。

「動くぞ」

「ゃっ、やっ、やぁっ!!」

「っぁ、ふぁああ?!ぁ、ぁあんっ!」

諸々誤魔化すためと、全員の限界やタイミングを読み、がくぽは一方的に宣言して腰を打ちつけ出した。

イトは意識が整わず、事態に追いつけてもいない。イトに比べれば落ち着いていたカイだが、がくぽ自身に腹を抉られるのと、がくぽの動きに伴って付随的に掻き回されるのでは、感覚があまりに違った。

そもそもイトは初めてで、しかももともとが詳しい性質でもない。そのうえカイは筆おろしには過ぎるほどの極上品で、実のところイトは突き入れただけで、軽く絶頂を味わわされている。

カイのいいところを探してやるだの、労わって抱いてやるだのという余裕はまったくない。

後ろから二人を眺めるがくぽは、一応はカイのことも気遣って動いていたが、万全とはならない。なにしろイトは惑乱しきりで、ある意味でまったく使い物にならないのだ。

「ゃっ、もぉゃぁあっいいっいすぎるよぉおっ!」

ほとんど絶叫しているような声で、イトは啼く。天を仰ぐ瞳からはぼろぼろと涙がこぼれ、正気の色がない。がくぽが打ちつけるだけでなく、カイの腰を掴んで自分からも押しこむようになっていた。

初めは困惑してタイミングがずれていたカイも、すぐにコツを飲みこんだ。がむしゃらなだけのイトに合わせ、懸命に腰を振り、緩めて締めてとして、腹の中のイトをあやしてやる。

「めっ、だめぇっもぉや、ゃぁあっいすぎるの、ゃああっまえとうしろ、やだぁっいいっ、いいっ、いいぃイいっ!!」

「ぁっ、あ、ぁあんっ、ぁああ、いっちゃ………っいっちゃぁ………っ」

絶叫するイトの下で、カイは甘く啼く。

激しく揺さぶられて布団に埋まりながらも、蕩けて涙をこぼす瞳は巡り、結果として二人を同時に支配することに成功した男を映した。

狂ったように泣き叫び、悶え悦がるイトを眺める顔は、嗜虐を満たされてこれ以上ない喜悦に染まっている。

高くあって、仄明かりしかない部屋では色もうまく見えないがくぽの瞳が、ふとカイを見た。

笑う。

「っっ」

「っぁあああっ、イくっ、い、っっっ――――!!」

カイに締め上げられたイトは背を仰け反らせて叫び、声は途切れて体だけが激しく、痙攣を起こして跳ねた。

「ぁ………っ」

呻いて、カイはさらにきつく腹を締めた。注がれているものがある。

ぶるりと震えるカイの上で、イトが再び大きく跳ねた。

「ぁ、あ……………」

もはや大きな音にもならず、掠れて絞り出された呻きは、力なく消えていく。

見上げたカイの目に、崩れるイトを嗜虐の欠片もない、甘やかな顔で抱き留めるがくぽが映った。