ふと、なにかが気になって、がくぽは読んでいた本から顔を上げ、ベッドから立ち上がった。机の上の携帯電話を見る。

メールも着信もなし。

need me

「…」

なにが気になったのかと首を傾げながら、がくぽは携帯電話を元の場所に置こうとした。

その瞬間の、着信を告げるバイブレータ。

「っ」

ぎょっとして、画面を見た――メール着信、一件。

件名はなしで、本文のみ。

『出て来い、はくじょーもの』

慌てて、窓から外を見た――垣根越しに、わずかに覗いた姿。

携帯電話を放り投げ、がくぽは家から飛び出した。

「やっほ、神威がくぽくんたのしー長期休みを台無しにする、生徒会長の突撃家庭訪問だよ☆」

「カイト……」

神威家の玄関先に現れたカイトは、いつもの見慣れた制服姿ではなく、私服姿だった。

携帯電話を片手に、がくぽへぱちりとウインクを飛ばしてくる。

笑顔だ――が。

「拗ねるな」

「拗ねてない。怒ってる」

仄かに笑って言ったがくぽに、カイトも笑顔のまま答えた。

「こんっのはくじょーものときたら、休みに入ってから、一回も会いに来やがらないときた。学校行ってたときは頼みもしないのに、毎日まいにちまいにち、送り迎えまでしてたくせに」

普段のおっとりした口調が、とげとげと尖って荒っぽい。

確かにこれは、怒っている。

堪えきれず、がくぽは体を折って笑った。

「会いたかったか」

「会いたくなきゃ、わざわざお宅訪問なんてしない」

がくぽはさらに瞳を尖らせるカイトの肩を抱き寄せると、そこに顔を埋め、ささやいた。

「俺は、おまえから会いに来て欲しかった」