「ふっふっふっふっふ、見よ、この点数!!」

「あー…………」

びらびらっと目の前に突きつけられたテストの解答用紙数枚を見つめ、がくぽは言葉に詰まった。

がくぽの人生、小学校から考えたとしても、一度も縁のなかった点数が並んでいる。

愚衆、平伏セル結実

胸を張ってそんなものを見せつける生徒会長は、ひたすらに偉そうだった。

「すべて赤点回避!!」

「ああうんうん、そうだな。赤点は回避しているな………」

主張は正しい。ぎりぎりのところで、赤点を回避している。

しかし、あくまでぎりぎり。余裕で取っている数字ではない。

それ以上の評価のしようもないがくぽに対し、他の生徒会役員の反応はまったく違った。

「会長、キセキって起こるんだねまさかボクがキセキの立会人になれるなんて感動だよ!!」

「かいちょぉ、かいちょぉリンたちみんなでおこづかい出し合って、ケーキ買ってきたよ!!会長の好きな、アイスケーキ!!」

「会長、生徒会役員全員でお金を出し合って年始に買っただるまさんに、おめめを描きいれてもらえませんかしら。ああ、今年でようやく、だるまさんに両目が揃いますのね………!」

嘘の欠片もなく、お祝いムード。

「みんなありがとぉ!」

おめでたさ満開で飾り付けられた生徒会室の中で、カイトは無邪気に役員の祝福に応える。

若干以上に引きつつ、がくぽは呆れた顔でカイトを見た。

「……………愛されているな、会長………」

「もちろん☆」

皮肉とも受け取れる言葉に、カイトは自信たっぷりにウインクを返す。

思わず見惚れたがくぽに、カイトの顔が近づいた。

「がくぽは?」

「…」

訊かれても、咄嗟に答えられない。

くちびるを引き結んだがくぽの胸座を掴んで引き寄せると、カイトはその頬に音を立ててキスをした。

「………全部、べんきょー教えてくれたがくぽのおかげだからね。あとで『お礼』してあげる。なにが欲しいか、考えておいて?」

「っっ」

あまりに甘く、熱っぽく吹きこまれた声に、がくぽの頭が高速で空回りだした。

動揺のあまりにいつものように表情を隠せなくなっているがくぽに、カイトは声高く笑う。

さらにくちびるを寄せると、耳朶を食んだ。

「なんでもいいからね言うこと全部、聞いてあげる…」

なおも煽りたてることを吹きこむとカイトはあっさり胸座を放し、役員が用意してくれたアイスケーキへと飛んで行った。