カイトの両手が、がっしりと握られる。

「KAITO!!ボクが大きくなったら、ボクとケッコンしてくれ!!」

ひのあたるばしょ

日本で言うと小学校の高学年といった年だが、遥かに年上のカイトと、同じくらいの背格好――の、少年。

二人が住むアパートメントの別の部屋に住んでいるのだが、つまりは男。幼かろうとも。

顔を真っ赤にして熱烈に迫る少年に、カイトはへらんと笑った。

「え~、やだぁ~。俺、がくぽのヒモだも~ん」

「………」

公園のベンチで、カイトの傍らに座ったがくぽは通訳しつつ、そっと項垂れた。

なにを通訳させられているのかと思う。

少年は真剣そのもので、嘘偽りない愛をカイトに告げている。

幼いとはいえ、『ライバル』のプロポーズを通訳させられるのも業腹だが、対するカイトの返答もなかなかだ。

泣きが入る。

「…………っ」

少年は顔を真っ赤にして、カイトの傍らで亭主然とした顔でベンチにふんぞり返り(註:少年目線)、通訳してくれるがくぽを睨んだ。

それから、にこにこと笑うカイトへと視線を戻す。

「ぼ、ボクは!!ボクだったら、カイトのことを、きちんと奥さんとして迎えるヒモだなんて、そんなヒカゲモノになんかしない!!」

「え~」

内心、さらにがっくりと項垂れていくがくぽには構わず、カイトは相変わらずへらんへらんと笑っている。

「でもやだぁ~。俺が好きなのは、がくぽだも~ん。レオンの奥さんより、がくぽのヒモのほうがいいも~ん」

へらへらしてはいるが、きっぱりと言い切った。

カイトはそうやってへらへらとしたまま、さらに迫ろうとする少年に握られた手を振りほどいた。

身を返すと、見た目はとりあえずベンチにふんぞり返って偉そうな態度のがくぽに、うれしそうに抱きつく。

ぎゅっと腕を組むと、へらへらからきらきらに笑みが変わった。

「大体にして、ヒカゲモノになんか絶対にならないもん。俺にとっては、がくぽがお日さまなんだから。お日さまがこんなに傍にいて、俺のこと愛してくれてるのに、ヒカゲモノになんてなりようがない」

「…………」

おひさま、というなら、がくぽにとってはカイトこそが、そうだ。

その笑顔も、言葉も、存在のすべてが――

身を起こすと、がくぽはカイトがしがみつく腕をほどいた。傍らに座る体を抱き直すと、もう片手で顎を掬って顔を寄せ、口づける。

「ん……っ」

「ぅううっ、KAITO~っっ」

悔しそうな少年の声を聞きつつ、がくぽはカイトのくちびるを堪能した。

ややして離れると、翳りもないしあわせな顔で微笑むカイトの瞼に、くちびるを当てる。

そう、カイトこそ、自分の太陽。

道を示す光。

この太陽を翳らせるようなことは――

「日陰者になど、しない。決して、絶対に………」