カイトも年頃の少年だ。こういうことも、当然ある。

とはいえ。

ぴんきっしゅ・ぶるーん

「カイト、あのね」

「ぅっ、ぁあうっ、あぅあぅっ!!」

呆れたようながくぽに、カイトが上げるのは意味不明な呻き声だ。

勉強机の前、付属の学習椅子に座ったカイトは、耳まで赤く染まって喘いでいる。

追い詰められている子供がさらに追い込まれることがないようにと、声のトーンと表情に気をつけつつ、がくぽはひょんなことからベッド下で見つけた雑誌を、軽く振った。

「隠し場所…………こんなところだと、私どころか、お母さんにもすぐに見つかるよ私はまだいいけれど、お母さんが見つけた場合」

「ぅっ、ぁううっ!!」

「……………成人指定雑誌を息子が持っているのは、それなりにショックじゃないかな」

「ひ、ひぃいんっ!!」

耳からうなじから真っ赤になったカイトは、とうとうベソ掻き声を上げた。

――がくぽはカイトを責めたいわけではないし、怒っているのでもない。複雑ではあるけれど。

がくぽだって男だし、若い。

はっきり成人指定と書かれている、いわゆるエロ雑誌を読んでみたいという少年の好奇心は、否定しようがない。

それを、頻繁に年を忘れるほどに無邪気なカイトが持っていることが複雑ではあっても、まったく納得できないとは言わない。

気になることといったら、どこで手に入れたのかということと、どの女性に催したのかということ――

「カイト、私は君を責めているんじゃないんだからね君も男の子なんだし、こういうかわいい女の子の裸が見たくなることも」

「ちがうもんっっっ!!!」

複雑な胸中ながらも、なんとか少年の心を解きほぐそうとしたがくぽに、カイトは涙声で叫んだ。

うるうると潤んだ瞳で、きっとがくぽを睨む。

「べ、べんきょーしようと、思ったんだもんっ!!い、いやらしいことしようと思ったんじゃ、ないもんっ!!」

「――勉強?」

言い訳としては、お粗末だ。

鼻白んだがくぽに、カイトはこれ以上ないほどに真っ赤になり、膝の上できゅっと拳を握って俯いた。

「だ、だって俺、え、えっちの仕方、知らないから…………っ。が、がくぽせんせとするとき、どーしたらいいのか、わかんないし」

「……………」

「どうやったら、がくぽせんせ、悦んでくれるのかなって……………っっ」

きゅううっと拳を握るカイトは、羞恥のあまりに椅子の上でどんどん丸まっていく。

ふわふわとしたつむじを呆然と見つめていたがくぽだが、ややしてため息をつくと、雑誌を放り出した。

腰を屈めてカイトに顔を寄せると、潤んだ瞳を厳しく見据える。

「カイト。君はこういう勉強はしなくていい」

「っでもっ!!」

ぱっと顔を上げたカイトに、がくぽはあくまで真顔のまま、告げた。

「こういう勉強も、私が教える。それこそ手取り足取り、実地でね。私以外から学ぶなど、赦さないよ、カイト?」