「オラトリオ」

「ん?」

袖を引かれて、オラトリオは振り返る。

「だいすき」

ピンクペッパー・マジョラム

満面の笑みを浮かべてのオラクルの告白は、唐突で脈絡がない。

うれしいことはうれしくても、そのあとに続くなにかしらの罠まで思って、オラトリオは苦笑いを返した。

「急になんだよ?」

それでも声が甘くなる。

蕩ける砂糖のような声で訊いたオラトリオに、オラクルは無邪気に笑い返した。

「おまえのこと、すっごく好きだって思ったんだ。そしたら物凄く、『だいすき』って言いたくなった」

「………」

罠などあるわけがない。

オラトリオは軽く天を仰ぎ、それから真摯な表情を浮かべた。

恭しくオラクルの手を取り、膝を折る。

「オラクル」

「なんだ?」

「愛してる」