ぴーかんお天気。
こういう日は、おふとんを干すのです。
おひさまおふとん
って、このあいだ、ラヂヲで言ってた。
おふとんがふかふかのふわふわになって、お日さまのいーにおいがして、すっごく気持ちよく眠れるんだって。
「どこに干そうかな」
一日中、お日さまの当たっているところがいい。そう、いちにちじゅう……
「っていったら、やっぱり…」
屋根?……かな。
俺は庭に出ると、ぴょんこと跳ねて屋根に上る。
さすがに風雨にさらされてて、ちょっと汚いかも。このままおふとん干したら、汚れちゃうよね。
「あ、そだ」
裂き布にしようと思ってた、古い敷布がある。あれを一枚、下に敷いたら。
「よし!」
ぴょんこと屋根から下りて一度社に戻り、敷布とふとんを持って庭に出る。
おふとんは、もちろん、朔の。
毎日忙しい朔が夜寝るとき、おふとんがふかふかのふわふわで、お日さまのにおいだったら、きっとうれしいよね。
それでぐっすり眠れたら、元気になって、すっごくすてきだよね。
「よし」
屋根の上におふとんを干して、俺はしっぽをぱたたんと振った。
うん、働いた!
あとは、ふかふかになるのを待つだけ。まーつーだーけー………
「…」
おふとん、気持ちよさそう。
お天気の下で、ふかふかおふとん、きもちよさそう……
「ちょっとだけ、なら、いいかな」
まだまだお日さまお空にいるものね。俺がちょっところんってしても、だいじょうぶだよね。
ちょっとだけだから。
「えへ」
おふとんにころんとすると、やっぱり気持ちよかった。
「あ……朔のにおい」
ふかふかあったまったおふとんからは、お日さまのにおいじゃなくて、朔のにおいがした。
こうやって寝転んでると、体中、全部抱きしめられてるみたいに、朔のにおいでいっぱいになる。
「ぅふ」
俺はしっぽをぱったんぱったん振った。
***
「こなたは確か、ねこではなくきつねのはずなのに、どうして屋根の上に、それも布団まで運んで用意周到に寝ているのだろうな」
「あれ?!」
朔の声に、俺は飛び起きた。
お日さまが、そろそろ西のお空に沈もうとしている。
「起きたか」
「えええ?って、えええ?!俺どれだけ寝てるの?!!」
信じられない気持ちで叫んだ俺に、おふとんのはしっこに座った朔が肩をすくめる。
「少なくとも数時間単位だ。年単位では寝てないから、心配は要らん」
そうじゃなくて!!
「ふ、ふかふかおふとん……おひさまおふとん……っ!!」
俺が寝てたら、ちゃんと干せないもの、全然意味がない。
それこそ朔が言ったみたいに、なんで屋根までふとん運んで寝てるんだって話。
しゅんとしてうなだれた耳を、朔は愉しそうに掻いた。こんなときだけど、気持ちよくてしっぽが揺れる。
「今日一日こなたが寝ていたなら、きっとこなたの香りが移ったろうな。十六夜布団か」
「ふにゅぅうう」
ふかふかふわふわで、お日さまのにおいのおふとんに朔を寝かせてあげたかったのに。
しっぽを振りながらも肩を落とす俺に、朔は明るく笑った。
「俺はそれでまったく構わん。むしろそちら希望だ!」