ぽかぽか、おひさま。
「ふゃあ………」
俺はおおきく、あくび。
そのまんま、ころんと縁側に転がった。
うとうと、うとうと……………………。
古風の便り
さらり、ほっぺたが撫でられる。
――ねているの?
やさしい声。
ああ、知ってる。この声は…………
――ちっちゃくまるくなって、神様じゃなくて、キツネみたい。
笑って、耳を掻かれる。
うん、そう。
俺は神様だけど、キツネなんだ。
そうやって耳を掻かれるの、大好き。
そうやって、大好きなあなたに、耳を掻いてもらうのが――
ふんわり、ほっぺたを撫でる風。
ぽかぽかの、おひさま。
きもちいい。
それで、大好きな――だいすきな、が、耳を掻いて呉れるから――
俺はうっすら目を開けた。
飛びこむ、笑顔。
――いま、しあわせ、?
「ん………」
訊かれて、口を開く。
「十六夜!っと、悪い、寝ていたか」
「ん、朔!」
ぱたぱたと駆けてきた朔が、慌てて立ち止まる。足音を忍ばせて、半身を起こす俺に近づいた。
「悪い、騒がせたな。急ぎの用でもないから、寝ていていいぞ」
「ん………っ」
朔はかりかり、耳を掻いてくれる。
きもちいい。
俺はうっとり目を細め、首を伸ばす。
「もっと」
「やれやれ、甘えたな式神め」
「ぁは」
ねだると、朔は俺の傍に腰を下ろしてくれた。
その小さな膝に頭を乗せて、すりつく。朔はかりかり、耳を掻いてくれる。
ぽかぽか、おひさま。
耳を掻いて呉れる、大好きなひと。
それから――
「…………俺ね、今、すごく、しあわせだよ」
――
つぶやくと、笑いながらほっぺたを撫でて、風が吹き過ぎていった。