縁側から、ふ、と空をみた。

どんより、くもり空。

今にも、しとしと、お空が泣きだしそうな……………

天の子

「十六夜」

「ん?」

呼ばれて、となりをみる。朔が、じっと俺のことを見上げてた。

俺は笑う。

「なぁに?」

「ん………」

朔は爪先立って、めいっぱい背伸びして、俺のこめかみを撫でた。

俺はちょっとだけ、背をかがめる。

ようやく届いた朔の手が、かりかりと耳を掻いて呉れた。

「泣きたいなら、こなたの主の胸を貸そう」

「ん?」

瞳を細める俺に、朔は静かにいう。

「こなたの気が済むまで、抱いていてやる。だから、泣きたくなったら、きちんと俺を呼べ」

「………」

俺はしぱしぱ、まばたき。

ちっちゃい、ちっちゃい、朔をみる。

――そんなにも、「ちっちゃい」なんていったら、きっと怒るけれど。

でも、朔はまだまだ、ほんとにちっちゃくて。

なのに、こんなにかっこよくって、やさしくって。

「ぁは」

俺は笑うと、ぺったり、縁側に座りこんだ。

朔の胸に、頭をすり寄せる。

「よしよし」

「ぁは」

ぎゅっと抱きしめられて、髪を梳かれて、俺はまた笑った。

お空は、どんより、くもり空で。

今にも、しとしと、泣きだしそうだけど――

「朔。おひさまのにおいがするよ」

つぶやくと、俺は朔の胸に鼻を埋めた。