ぴーかんお天気。
こういう日は、おふとんを干す!!
…………………の、です………………………。
おひさまおふとん、よか
「ど、どーして………………っ」
屋根に上がった俺はうなだれて、がっくりと膝をついた。
べたんと手もつけば、カワラは肌が焼けそうなくらいにあっつい。
今日のお天気も、おふとん干しにサイテキということ。
でも、でも、肝心の屋根が……………。
「なんていうんだっけ、こういうの…………なんかあった…………あったよね…………ええと」
がっくんとしたまま、俺はうつろに考える。
朔に教えてもらったので、今の屋根の状態を表すのに、すっごくいい言葉があった気がするんだ。
確か、ヨジジュクゴとかいう、どこかの言葉で………。
「あ、うん。そぉだ、ええと確か、せん………『先客万歳』?」
なんだっけ、お客さんいっぱいでうれしいなーっていう意味だって、聞いたような。
でも。
「うれしーかな、俺…………今、うれしーかな…………?!お客さんいっぱいで、うれしーのかな………!!」
ぴーかんお天気の、屋根の上。
には、本日、お客さまがいっぱいです。
蝕に始まって、上弦下弦、それから朔のトモダチのおじーちゃんねこのここにゃーと、そのこねこたち。
あとはおっきい白いトラと、真っ赤な羽根のクジャクに、岩みたいにごつごつ尖った甲羅の、おっきいカメ。
みんなでナニしてるのって言ったら、お昼寝。
みんながみんな、ぐっすりすやすやと、おねんね。
蝕と上下なんかは、わざわざおふとんまで運んで寝ている。
いったいなんのお祭りが開催されて、こんなにみんなでそろってお昼寝しているの。
今日はいったい、俺の知らないどんなお祭りの日なの?
「ぅうう…………」
どちらにしても、これだけは言える。
お客さんいっぱいで、もう、おふとんを干せる場所はない。
そんなに狭くない屋根だけど、みんなぴったりくっついて寝てるわけじゃなくて、ひろびろのびのび使っている。
隙間は空いてるけど、おふとんを広げるには、ちょっと足らない。
詰めてくれればいいなとは思うけど、お日さまの下でのびのびお昼寝するの、気持ちいいよね。
ぐーんってのびして、ぽかぽかお日さまに全身干すのって、すっごく元気になる。
うん、バンザイだ。
そうか、あの言葉って、そういう意味だったんだ…………。
「………………あ。――なんか俺も、屋根で日干しして、バンザイしたくなってきた………」
や、ヤケじゃないからね!
……ヤケじゃないけど、だってみんな、すっごく気持ちよさそうで、のびのびして、ぽかぽかふかふかしてて。
おっきいおふとんを広げる隙間はないけど、俺がごろんしてバンザイする隙間くらいはある。
「…………ちょ、ちょっとだけ…………」
つぶやいて、俺はわりと広めな隙間にのへのへと行った。
ごろんして、のびっとする。
「ふぁわ………………っ」
やっぱり、気持ちいい!
下が直に屋根だから、固くてごつっとしてるけど、毛皮がふさって乾いて軽くなっていく気がするし、芯からあったまる感じもする。
からだの中に知らず知らず溜まってた、もやっとしたものがお日さまに乾かされて、そよ風に乗って飛んでいく。
「……ん。あれ、孤獨の片割れじゃん……。つかなにしてんの、おまえ………そのかっこで屋根に直寝じゃ、アタマ痛くなるじゃん……」
眠くなってうとうとしだしたところで、トラがつぶやいた。
のそのそとそばに来ると、かふっと俺の襟首を噛んで引きずり上げる。
「ほら、俺マクラにしていーから。相変わらず手間がかかるヤツだなぁ、もう……」
「んー………」
笑ってぼやいて、トラは自分のからだを俺のマクラにしてくれる。
ああ、すっごくふかんふかんのほわんほわんで、気持ちいい。
んと、ええと…………なんだっけ………こういうの…………なんか、覚えてる、気がする…………。
寝てる俺に笑って、アタマを持ち上げて。
――ほら、これでいたくないでしょう、?
***
「どうにもうちのが三人、ご迷惑をお掛けいたしまして」
「いや、まだご迷惑を掛けられてはいないな、今日に関しては。本当に揃って来てるのか?」
「そのはずですよ?クロとアケのみならず、シロまで揃って」
「にしては、静か……………ああまあ、静かなのも道理か。こういうこともあるんだな」
うとうと、浅い眠りの中に、朔の声が聞こえる。俺のしっぽは、勝手にぱったんと揺れた。
かたかた音がして、たぶん、朔は屋根に上がってきた。
俺の目は、まだ眠くて起きないと言っているけれど、きちんと気配は感じる。
「勢揃いで昼寝ですか。壮観ですね、六所の方」
「………まあ、そう表現するしかない貴様の気持ちはわかるが、青竜。落ち着け」
「シロを枕にしているのは、孤獨のでしょう。私のシロを枕にするとは、片環はなにをしているんです?!アレの面倒は、片環の責任でしょうが!!」
「だから落ち着け、青竜!!暴れるなら黄帝を呼んで封じるぞ?!!」
「ん………」
あれ、なんか起きないといけないかな…………朔が、困ってそう………俺、これでも朔の式神だし、困ってるなら。
と、思うことは思ったんだけど。
「んん………っふぁんっ」
そこで、起きようとする俺を抑えるみたいに、トラのしっぽがぱったんと回ってきて、くるんと俺をくるんだ。
ふかふかほかほかの、しっぽ。
トラだからキツネほどのふわふわさはないけど、やっぱり気持ちいい。
それが、くるんってからだに。
うん、離れるなんてムリ。気持ちよすぎるもん。
俺は起きるのをさっさとあきらめると、からだに回ったしっぽにきゅっと抱きついて、また夢の中に戻った。