「お菓子くれないと、イタズラするわよ!!」

「(*'▽')ノシ」

ぱっと手を差し出して主張したボクと下弦に、縁側でひなたぼっこをしていた蝕は一瞬だけ、細い目を丸くした。

きょときょとんとボクと下弦の手を見て、色づいたお山に目を移し、うなずく。

「なるほど。そんな時期か」

悪戯小強奪者

「イタズラするわよ、蝕!」

「(*`▽´)ノシ」

まったりのんびりとされて、ボクたちは重ねて主張。

蝕は笑って、自分のフトコロを漁った。

「まあ、待てまて。そなたらに悪戯されては難儀じゃ。今やろうから」

いいながら、お菓子の箱を取り出す。

「…………」

「(-_-)」

ボクは下弦と顔を見合わせた。

そんな時期かっていって、すっかり忘れてるっぽかったのに――

差し出されたお菓子の箱は、ちゃんと西洋式お盆仕様だった。

というかボクは、蝕がお買い物に行ってるのって、見たことがない。

でもどういうわけかいっつも、フトコロにお菓子が忍ばせてあるのよ。ナゾなんだけど!

もしかして、アレかしら。未来仕様の猫型機械人形の付属品的なものの原型が、蝕のフトコロにあったりするのかしら。

まあそうとはいえ、どうでもいいわ。

大事なのは――

「ありがと、蝕!」

「(^ω^)」

ボクと下弦はお菓子の箱を受け取ると、感謝の印でぺろぺろんと、蝕の口を舐める。

笑った蝕は、ボクと下弦の頭をなでながら、お返しでぺろぺろんと口を舐めてくれた。

「よしよし、喧嘩せずに食えよよいこに………」

「だがことわる!!」

「<(`^´)>」

「ん?」

たぶん蝕は、『良い子にしてろよ』といいたかったと思うの。

でもボクと下弦はお菓子の箱はきちんと抱えたまま、先にきっぱりいい切った。

きょとんとする蝕に、ボクたちはちっちゃい体でもめいっぱいに、胸を張る。

「お菓子をくれようとも、イタズラはするわなぜならそれがボクたち、眷属というものだから!」

「<(`^´)>」

「……………」

堂々主張するボクと下弦を、蝕は細い目を丸くしてまじまじと見た。

それでもめげずに、ボクたちは胸を張る。

だって、そうでしょ?

このお祭りで、お菓子くれないとイタズラするぞっていうのは、本来はモノノケよね。

つまり、『お菓子をくれたら、イタズラしない』っていうヤクソクは、モノノケのもの。

でもボクたちは、モノノケじゃなくて、蝕――神さまの眷属。

神さまの眷属であるボクたちは、お菓子をくれたらイタズラしないなんて、ヤクソクしてないもの。くれなくてもイタズラするけど、くれたってイタズラはするわ!

なぜならそれが、眷属だから!

しばらくして、蝕はこっくんとうなずいた。

「なるほど。一理ある」

「ナットクした!」

「Σ(((゜Д゜)))っっ」

――まあ、いってもボクたちだって、そうそうずうずうしいわけじゃないわ。

もし蝕がナットクしないなら、一応、折れるつもりだったんだけど。

「(-_-)」

「そうね、下弦」

ナットクしたなら、これ以上いうこともないってものだわ。

「イタズラするわ、蝕!!」

「(*'▽')☆彡」

力強く宣言して、ボクと下弦は蝕に飛びかかった。