「(゜Д゜)」
「え?」
並んで縁側を歩いていたところで、下弦が急に立ち止まった。
説教爺
気がつかずに数歩先に行ったボクが振り返ると、下弦は座敷のひとつをのぞきこんでいる。
「<(=゜゜=)>」
「え………んむっ」
おっきい声を上げそうになって、ボクは慌てて両手で口をふさいだ。
もぐもぐごっくんと声を飲みこんでから、そっと足音を忍ばせて下弦のそばにいく。
となりに立つと、座敷の中をのぞきこんだ。
座敷の中にいるのは、十六夜と九重。
ねこの座り方って、そもそもが正座みたいよね。
その、正座してるみたいな九重の前に、十六夜が正座してうなだれていた。
「………」
「(-_-)」
無言で振り返ったボクに、下弦はこっくんとうなずく。
そうよね、これってまさに――
「………」
「あ、気がつかれちゃった」
「<(=>×<=)>」
静かに見てたボクたちだけど、さすがに九重は歴戦ののらねこ。すぐに気がついて、ぱったんとしっぽを振った。
十六夜へと軽く首を振ると、のそっと立ち上がって座敷から出て行く。
「ぅうう、ごめにゃさい………」
「十六夜………」
見送る十六夜の言葉は、力ないうえに謝罪だった。
ボクと下弦は顔を見合わせると、座敷に入る。
そばに行くと、正座したままうなだれている十六夜の顔をのぞきこんだ。
「十六夜、あのね?」
「(゜△゜)」
「うん、そう…………」
ボクと下弦に訊かれて、十六夜は耳もしっぽもたれんとしょげさせたまま、うなずいた。
「いい年なんだから、もうちょっと落ち着きなさいって、おこられた………そんな頼りないことじゃ、朔のことを安心して任せられないって………」
「十六夜………」
九重は、ねこだ。のらねこ。
そして、十六夜はキツネで寝惚けてるけど、千を超える年を経た神さま。
神さまが、いくら長生きおじーちゃんとはいえ、のらねこにお説教されて――
なんとも言葉を継げないボクに構わず、十六夜は悩ましいため息をつく。
「爺のことを哀れと思うなら、もう少ししっかりしてくれないとって………朔のことが心配で、寿命が縮まるって」
「………」
なんていうか。
なまじきれいな顔してるだけに、そうやって悩ましくため息つくと、さまになるわよね。
神さまなのにのらねこに説教されて、ヘコんでるっていう状況でも。
かける言葉が思いつかなくて下弦を見ると、下弦はふるふると首を横に振った。
「(-_-)」
「まあ、そうね………」
とくになんにも言わなくてもいい気はするわね。
ボクと下弦はうなだれる十六夜の膝にへちゃんと頭を乗っけて、いっしょにヘコんであげた。