「ふつーにって言いましたよね、兄様」
「ん…」
「兄様……もぉ」
うちのおとーとは、どこにでもついて来ます→裏
浴室に入って来たがくぽに、カイトはぎゅ、と抱きついた。その顔は熱っぽく蕩けて、あからさまに発情している。
カイトはがくぽの体がだめだった。服の上から見ているだけならともかく、こうしてきれいに晒されてしまうと、理性が消えてなくなってしまうのだ。
がくぽだとてカイトの裸を見れば発情するが、カイトのはそれ以上だ。
抱きつかれたまま背中を辿られて、がくぽは顔を歪めた。
そうでなくても裸の兄で煽られているのに、そんなふうに触れられたら、我慢できなくなる。
「兄様…」
「ん」
開いた口に、伸び上がったカイトのくちびるが合わさる。ちゅ、と吸われて、もどかしそうに舐められ、がくぽはとりあえず言いたいことを脇に除けた。
体を屈めてやり、カイトを支えてくちびるを押しつける。
「ぁ………ふぁあ………」
「兄様……あのね」
「ん…?」
がくぽはカイトの肌を辿りながら、笑いかける。
「お体、お流しするって言ったでしょう?がくぽに兄様のお体、洗わせて、きれいにさせてください」
「………もぉ」
カイトが微妙に不満そうに、がくぽを睨む。厚い胸板を、責めるようにかりりと掻いた。
「そんなことしなくていーったら…………体くらい、自分で洗えるし………」
「でも、兄様」
がくぽは笑ったまま、抱えたカイトに腰を押しつけた。カイトがびくりと震え、縋る肌に爪を立てる。
「…………がくぽが、いつも汚してしまうでしょう?たまには兄様をきれいにさせてください」
「……」
震えながらカイトはがくぽに縋りつき、肌に爪を食いこませる。恨みがましそうな目が、がくぽを睨み上げた。
「………がくぽのは、汚くなんかないもん………」
「………にーさま……」
ごくりと咽喉を鳴らす弟から、カイトはするりと離れた。今まで自分が座っていたバスチェアを指差す。
「座って。おにぃちゃんが洗ってあげる」
「兄様」
おとなしく座りながらも、がくぽはカイトの手首を掴む。
「がくぽも兄様のこと、洗いたいです」
「んー」
カイトはわずかに天を仰いでから、がくぽの足の間に座った。
「じゃあ、洗いっこしよ。おにぃちゃんががくぽを洗うから、がくぽはおにぃちゃんを洗って?」
甘く笑いながらの提案に、がくぽはくちびるを舐めた。
カイトは放り出していたスポンジを取り、ボディソープを垂らす。数回揉んで泡立たせると、膝立ちになった。
「いいこにしててね?」
座る弟に前から抱きつくような形になると、まずは長い髪を軽く束ねて胸へと流した。それから手を回し、背中を洗い出す。
「♪」
「……兄様って……」
楽しそうな兄に軽く天を仰いでから、がくぽは手のひらに直接ボディソープを垂らした。抱きつくカイトに手を回し、肌を辿る。
「ふぁ……っ」
「隅々まで、きちんときれいにして差し上げますからね」
「ぁう………っ」
ぬめりながら、手が背中を辿って行く。
隙間なく、どこもかしこも撫でられて、カイトはスポンジを取り落とし、がくぽに縋りついた。
「ゃ、んん………」
「お尻もきれいにしないとですよね」
「ぁ……っ」
「おとなしくしてください、兄様」
新しいボディソープを垂らしてぬめらせた指が、いつもいつもがくぽを受け入れる場所を撫でる。
押しこんできても、ボディソープによってぬめりを増した指は抵抗もなく、すんなりと入ってしまった。
「ゃ、なか……っ」
「だって、がくぽはいっつも、中に出しちゃうでしょう?ここがいちばん、がくぽので汚れるんだから、ちゃんときれいにしなきゃ」
「ぁく………っ」
ぐいぐいと指が中に押しこみ、掻き混ぜる。洗っているとは言うが、その動きはいつもの愛撫となにも変わらない。
「が、くぽ……のは、汚く、ない………ったら」
「兄様……」
悶えながらも頑固に言い張る兄に、がくぽは微笑んだ。
汚したと思っても、肝心の相手がそれを汚猥だと思っていなければ、なにも成立しない。
「はい。兄様はいつだってきれいで、汚れない、がくぽの兄様です」
「んん……っ」
「あ、そうだ」
悶えて擦りつかれる体に、がくぽはふと思いついた。指を抜くと、しがみつくカイトの体をわずかに引き離す。
「………がくぽ?」
「前も洗わないとでしょう?」
「っひゃっ?!」
無邪気に言いながら、がくぽはカイトの体に直接ボディソープを垂らした。軽く塗り広げてから、再び兄の体を抱えこむ。
「兄様、ちゃんと擦ってくださいね」
「こ、こすってって……ぁっ」
戸惑うカイトの奥に、がくぽはまた指を差し入れる。
「♪」
「ぁ、ぁうっ、んんぁっ」
愉しそうに弄りだされ、カイトは悶えてがくぽに擦りついた。
さっきとは違って、ボディソープが垂らされ、体がぬめっている。ぞくぞくとしたものが駆け抜けて、カイトは震えた。
「ゃああ………んんっ、ゃぅう………っ」
甘く啼きながら、カイトはがくぽに体を擦りつける。気持ちよさに、動きが止められない。
「兄様、乳首が当たってます。すっごい硬くしてる」
「ぁ、だって………」
笑われて、カイトは涙ぐむ。そこがいちばん痺れるから、つい押しつけるようにしてしまう。
「ここもがくぽがいつもしゃぶるから、きちんときれいにしましょうね」
「ぁ……っ」
指を抜き、がくぽはカイトの体を反した。背中から抱えこむようにして、すっかり泡だらけになった前へと手を伸ばす。
「がくぽはいっつも、舐めたり咬んだり吸ったりしちゃうから、ちゃんとやさしく洗ってあげます」
「ゃ、がくぽ………っふぁっ」
やさしく、と言いながら、がくぽは勃ち上がったカイトの乳首をつねるようにつまむ。仰け反ったカイトの背中ががくぽに押しつけられて、その滑らかな感触にうっとりとなった。
そのまま硬くしこった乳首を弄り続けると、カイトは甘く啼きながら体を押しつけてくる。
がくぽはくちびるを舐め、惑乱する兄を見下ろした。
「…………兄様。兄様も、がくぽのこと、洗ってください」
「ん……」
堪えられなくなり、がくぽはカイトの体を自分に向き直らせた。カイトの手を、煽られる自分へと運ぶ。
「ね、洗ってください、兄様の手で………」
「ぁ………」
熱を持たされたカイトの瞳が、揺れる。
くちびるを舐めると、カイトは上目遣いで弟を見上げた。がくぽは笑って、握ったままの兄の手にボディソープを垂らす。
「はふ……っ」
カイトはゆるゆると、がくぽのものを撫で始めた。いつも以上にぬめって、すでに一度、放出したあとのようだ。
「んく………っ」
ごく間近で見るものが形を変えていく様に、カイトはこくりと唾液を飲みこんだ。ちろりとくちびるを舐めると、自分の体のそこかしこを撫でているがくぽを見る。
「………がくぽ」
「はい、兄様」
弟の声は、甘ったれてはいても、涼しげだ。カイトはすでに、バス冷房を入れておかなかったことを後悔しているほど、熱くなっているのに。
ここをこんなにしておいて、そんな涼しげな声はない。
カイトは伸び上がると、がくぽの顎にちゅっと音を立てて口づけた。がくぽのものから手を離すと、後ろを向く。
壁に片手をつくと、洗うと称して解されたために疼くそこを、もう一方の手で広げるようにして、がくぽへと突き出した。
「ね、がくぽ………指じゃなくて……もっと深いとこ、洗って………」
「兄様………」
「もっと、深いとこ………なか、いっぱい擦って、きれいにして……」
がくぽがこくりと唾液を飲みこむ。その表情から余裕が消えて、カイトは微笑んだ。
バスチェアから立ち上がったがくぽは、背後からカイトの体を抱えこむ。泡だらけにされたものを宛がうと、ぐ、と押しこんだ。
「んんぁ………っ」
両方とも、いつも以上にぬめっている。挿入は驚くほどスムーズで、カイトは軽く絶頂を迎えてしまった。
「兄様………っ」
「ぁ、ん………ごめ………」
入れた途端に締めつけられて絞られ、がくぽが呻く。カイトは肌を粟立たせながら、懸命にそこに入る力を抜こうとした。
「も、我慢できません……っ」
「ぁ、や……っ、はや、がくぽ……っ」
努力の途中で、がくぽが腰を使いだす。いつもより引っかかりが少ない分、勢いよく奥まで抉られて、カイトはびくびくと波打ちながら仰け反った。
滑るタイル製の壁を、爪が虚しく掻く。ともすると崩れそうな体は、がくぽがしっかりと抱えこんで支えている。
その安心感といつも以上の感覚に、カイトは涙目で頭を振った。
熱い。
「兄様、いつもより………っ」
「ん、んんっ、がくぽ、はや、ぃ………っ、はげし、よぉ………っ」
「だめです、我慢できません」
「ぁぅうっ」
苦しげな声にささやかれて、カイトの膝が落ちる。一瞬崩れかけた体は、けれどしっかりとがくぽに支えられ、抱え上げられた。
そのまま激しく突き上げられて、カイトはがくぽの腕にしがみついた。その手がふと肌を辿り、尖りきった乳首を弾く。
「ゃ、ふぁあっ」
限界に来ていた体を押されて、カイトは再び快楽の頂点を極めた。締めつけるそこに、がくぽも限界を迎える。
「っく」
「ぁっ」
きり、と歯を食いしばると、がくぽは吹き出す寸前で、カイトの体から自分を抜いた。滑らかな背中へと、精を吐き出す。
「んん………っん………っ」
背中に飛び散る熱の感触に、カイトはくちびるを噛んだ。
***
「……ぐす」
「♪」
ぬるかった湯温はすっかり冷めて、ほとんど水風呂と変わらない。それでも沸かし直すことなく、カイトとがくぽはいっしょに湯船に入った。
狭いそこに成人男子二人で入ると、もはや隙間などないに等しい。
ゴキゲンのがくぽの上に座ったカイトは、膝を抱えてべそを掻いていた。
ふつーに入ろう、と言っておいて、おにぃちゃんの自分が先に理性を飛ばしてしまった。
一回ことを済ませて冷静さを取り戻すと、いたたまれないことこのうえない。なにより、情けない。
おにぃちゃんなのに、弟のことを誘って、煽って、してもらったなど。
だからがくぽと風呂に入るのを、躊躇うのだ。弟が理性を飛ばす以前に、自分の理性のほうがすっ飛ぶ。
そのうえさらに、情けなくていたたまれないのは――
「兄様、兄様のお尻ががくぽのに当たってるんですけど」
「上に座ってるもん………狭いから仕様がないんだもん……」
すっかり拗ねてグレモードに入っているカイトは、根暗い声でつぶやく。ぐすぐすと洟を啜る兄に、弟は軽く天を仰いだ。
確かに狭いとも。
そして確かに、膝の上に乗せたとも。
だが。
「…………そんなに擦りつけられると、がくぽは我慢できません」
どう考えても、兄は必要以上に、そのかわいいお尻を擦りつけて来ている。拗ねて膝を抱えているから、今日はこれ以上煽らないようにと、堪えているのに。
いつも甘く蕩けるカイトの声は、どこまでも根暗かった。
「知らないもん………我慢するがくぽなんて、おにぃちゃんのがくぽじゃないもん………」
「………にーさま…………」
たまにとても気難しくなる兄に、がくぽは腕を回した。
下半身へと辿り、擦りつけられる場所を撫でる。軽く指を押しこむと、名残りですんなりと開く場所を広げた。
「……っ」
「今度は、中に出しますよ?」
「っ」
ぱ、と顔を上げて振り返ったカイトに、がくぽは苦笑した。
やっぱりだ。
「あ………」
しまった、とカイトは慌てて顔を背ける。冷めきった湯の中にいるのに、その体がみるみるうちに朱に染まっていった。
がくぽは笑いながら、きれいに洗い流した場所を弄る。
最後の最後で、抜き出して背中に掛けた。洗うという名目上、中に吐き出さなかった――のが、兄のいちばんのご不満なのだろう。
後始末が大変になるのに、カイトは直接中に出されることを好む。
きっと物足らなさに疼いてくすぶっているだろう場所に、がくぽは自分を宛がった。
振り返ったカイトが瞳を揺らしてがくぽを見つめ、ちゅ、と軽くキスを寄越す。
「おにぃちゃん、淫乱でごめんね?」
謝られて、がくぽは笑った。
「そんな兄様が、大好きです」