「にーさまぁ……」

がっくりと項垂れた弟に構わず、カイトはチョコレートの包装を剥いた。軽い足取りでベッドへ行き、ぽすんと座る。

ぱく、と口にチョコレートを咥えると、微笑んでがくぽに突きだした。

「ひゃぃ」

うちのおとーとは、ちょっと食いしん坊です→

「ぅ~………」

それもかわいくていいが、もっと直接に「兄」が欲しい。

突きだされたくちびると、そこに咥えられたチョコレートをしばし見つめ、けれどがくぽは結局、くちびるを寄せた。

チョコレートごと、カイトのくちびるを食む。

「ん……んん………」

ほろりと、口の中で溶け崩れるチョコレート。

粘度を増した舌をカイトのくちびるに差しこみ、がくぽは名残惜しく甘みを味わう。

「………足りません、にぃさまぁ………」

「もぉ……しょぉがない子………」

くちびるを離して情けなく訴えたがくぽに、カイトはほんわりと笑う。

その体がわずかに離れて、足を開いた。

「…………『おやつ』、なんだからねいっかいだけ、だよ………?」

「兄様…!」

念を押すように言いながら、カイトはファスナーに手を掛け、スラックスの前を寛げる。羞恥に染まりながら、まだしんなりと力無い性器を取り出した。

「いーよ、食べて………」

「兄様!」

「んっんんっ」

喜色に輝いたがくぽが、カイトに口づける。歓びそのままに荒っぽく口の中を弄り、カイトがくたりとしたところで離れた。

屈みこむと、兄が差し出した「おやつ」に口をつける。

「兄様の……」

「ぁふ……っん………」

唾液をたっぷりと乗せた舌で、がくぽはぬろりと先端を舐める。ちろちろとくすぐるように舌を這わせて、手を竿に添えた。

「ん……」

「ぁ、がくぽ………」

深く咥えこまれて、カイトは震える。舌が波打ち、絡まるのを感じた。

ねっとりした粘膜に包まれて、絞り上げられる感触は、いつでも背筋に震えが走る。

垂れる唾液を追うように、がくぽの手は奥へと忍んでいく。伸ばすようになすりつけるように揉みながら、指先が窄まりを撫でた。

「が、くぽ………『おやつ』、だから………っ」

「大丈夫です」

先端をちゅうちゅうと吸っていたがくぽは、笑って兄を見上げる。てろりと裏筋に舌を這わせつつ、指先が窄まりを押した。

「おやつだから、指だけです」

「ふ、ぁっ」

言いながら、指が一本、入りこむ。中を広げるように関節が曲がり、押された粘膜が痺れを訴えた。

「ん、んん………っ」

びくりと身を竦ませ、カイトはがくぽの髪を掴む。

後ろと前を同時に刺激されると、堪えられない。そうでなくてもがくぽの口淫は巧みで、カイトはすぐにも追い上げられてしまうのに。

「ぁ………んんぅ………」

入りこんだ指とはまた別に、親指がひくつく襞に触れ、ぐ、と中を開く。入口をしつこく揉まれて、カイトは咄嗟にくちびるを噛んだ。

「ん、もぉ、イくぅ………っ」

言葉とともに、指を飲みこむ場所がきゅっと締まる。がくぽの口に咥えられたものが激しい痺れを訴え、カイトは痙攣した。

が、あと少しでイく、というところで、がくぽのもう片方の手が、根元をぎゅっと押さえてしまう。

「ゃああ………っ」

放出を寸前で止められ、痛みに似た感覚が襲う。

口元を押さえて悲鳴を上げたカイトを、がくぽは楽しげに見上げた。

「だめです、兄様。これ一回きりなんでしょうそんなに早くイかれたら、がくぽは物足りません」

「ぁ、そ、んな………っ」

「もっともっと、いっぱいおしゃぶりさせてください」

「ゃぅう………っ」

自分から言いだしたこととはいえ、カイトは瞳を潤ませた。

だからといって、何回でも好きなだけ舐めていいよ、とは言えない。おなかがいっぱいになるならない以前に、カイトが持たない。

好きにしていいと許したがくぽの求めは際限がなく、限界を知らないのだ。

そうはいっても、一回で物足りるまで舐められ続けるとなると、それもそれで一種の拷問だ。

がくぽがどこまで堪能すれば満足するのかがわからないから、イきたいのにイけないままに、夕飯まで耐えさせられる可能性もある。

「が、がくぽ………」

「おやつですからね。軽く済ませますけど……」

上擦る声で呼ぶカイトに、がくぽは笑う。先走りをこぼす先端に口づけ、ちゅっと音を立てて啜った。

「ふぁ、おいしぃ、兄様……」

「ひぅ……っ」

そのまま、ねこが水でも飲むような音を立てて先端を舐め啜られ続ける。

あからさまに射精を誘う行為なのに、根元はしっかり押さえられていて、しかも波が来ると、がくぽはわざとタイミングをずらすようなやり方に変える。

「ぁ、ふぁあ……っぁ、もぉ……っ」

「んん、にぃさま、おいしぃ………あっつくって、とろとろで………」

「ゃ、がく………も、ぉねが………イきたいぃ……」

カイトの腰が、がくがくと震える。その震えは全身に及んで、カイトは声も詰まって仰け反った。

せめても、二回くらい、といえば、こうまでされなかったのだろうか。

拷問にも似た快楽の中で、カイトはぐすぐすと洟を啜り、下半身に顔を埋めるがくぽの髪を掴む。

押しつけるようにも、引き離すようにも取れる動きで撫でられ、がくぽは笑った。

「ん……んん………」

溢れる先走りと、たっぷりと塗しつける唾液とが流れ、指を入れた場所がしとどに濡れている。指の動きとともにはしたなく口を開閉する場所にも、がくぽは舌を這わせた。

音を立てて吸うと、カイトはびくりと震える。

「そ、そこは、なめちゃだめぇ………っ」

「大丈夫です。指だけしか入れません」

がくぽは約束を守れるんですよ、と笑う弟に、カイトは涙を散らして瞬きをくり返した。

違う。

そこをそうまでされたら、自分のほうが――

「が、くぽ……っ」

「そろそろ…」

呼ぶと、がくぽはようやくつぶやいた。

膨れ上がる先端がこれまでになく熱心に舐められ、吸い上げられる。添えた手が激しく竿を扱き上げ、カイトは大きく腰を揺らした。

「ん、ふ、あ、………っイっちゃ……イっちゃう、がくぽ………たべて、ね………ちゃんと……っ」

「はい。がくぽの口の中にください」

うれしそうに応えるがくぽに、カイトはきつく目を閉じた。

「んん………っふ、ぁあ………!」

「ん…」

腰を突きだすようにして、カイトはがくぽの口の中に精を放った。ようやく赦された放出に、性器が痛いほどに痺れる。

絶頂はなかなか治まらず、だらだらと放出が続いた。

「ぁ、んん………っんぅう………っ」

「は、いっぱい………にぃさまの、いっぱい……ぉいしい………」

「ぅ……っ」

うっとりとつぶやきながら残らず舐め啜るがくぽに、カイトは腰を突きだすようにしてしまう。

やがて長い放出が終わると、がくぽは窄まりから指を抜き、体を起こした。

「ごちそうさまでした、兄様。おやつ、おいしかったです」

「んく………っ」

うれしそうな弟に、カイトは呻いて顔を逸らす。

咄嗟には応えられないカイトを気にすることなく、がくぽはティッシュを取ると濡れそぼる下半身をきれいに拭いていく。

「………」

カイトは小さく身じろいだ。

疼く。

がくぽに弄られた場所が――だから、中途半端に弄らないで欲しかったのに。

おやつの時間も過ぎて、もうすぐお夕飯なのに――我慢が。

「………にぃさま。兄様も、ナイショのおやつ、食べますか?」

耳元でささやかれ、カイトはふるりと震えた。

威厳もなにも皆無だとわかっていたが、それでも懸命に瞳を尖らせると、弟を睨む。

「食べない」

「兄様」

「お夕飯ちゃんと食べたいし……」

言いながら、尖らせた瞳が熱に甘く蕩け、伸びた手ががくぽを抱き寄せた。

「おやつなんかじゃなくて、ちゃんと、おなかいっぱい、がくぽのこと、食べたいもん………」