「…?」

風呂から出て一通り体を拭き終わり、さて寝間着を身に着けようとして、がくぽは首を傾げた。

確認したわけではないが、上下セットで持って来たはずの、甚平。

そもそもが今日買ってきたものを、早速着てカイトを悦ばせてやろうと、袋から出してそのまま持って来たので、セットになっていないというのはおかしい。

しかし、どう見ても用意しておいたそれは、下穿きしかない。

うちのおとーとは、とっても甘えたです→

「……袋の中に、置き忘れたか………落としたか?」

不可解さに首を傾げつつ、一応、脱衣所を探してみる。が、ない。

「………となると、部屋か……」

とりあえず下穿きは身に着け、がくぽは脱衣所から出た。

そろそろと辺りを窺う。

彼のマスターは若い女性だ。いくらロイドとはいえ、上半身裸の男が家の中をうろついているようでは、落ち着けないだろう。

――いや、いい加減マスターに夢を見るのは止めようと、がくぽも思う。

マスターはうら若き女性だが、そこらへんの情緒やへったくれはなきに等しい。なにがあって、ああも雄々しく育ったかと思うような性格だ。

むしろ弟のカイトのほうが、まだ乙女に見える――見えてはいけないのだが。

家庭環境に少しばかり頭痛を覚えつつ、がくぽは自分の部屋に戻った。

「あ、にーにっ!」

「カイト……」

言いたいことが山と積み重なり、がくぽはさらに頭痛を覚えて眉間を揉んだ。

そのいち、ここはがくぽの部屋だ。そこにどうして、弟が勝手に入りこんでいるのか。

そのに、床にへちゃんと座りこんだ弟が着ているそれは、今日がくぽにと買った甚平の上着ではないのか。

「ちゃんと着てくれたんだぁ」

「あのな、おまえ……」

脳天気な声を上げるカイトに、がくぽは呆れた目を向けた。着てくれたもなにも、その半分をカイトが着ている、意味不明な事態。

元はと言えば、がくぽのために買ったものだ。小柄な弟には大きく、だぼついている。

部屋に入って扉を閉めると、がくぽは大股で弟に近づき、上着に手をかけた。遠慮なく紐をほどいて、前を開く。

「カイト、それはにーにのっ?!」

「ゃん、にーにのえっちぃvv」

「っっ」

がばりと大きく開かれた前を押さえるでもなく、素直に体を晒したカイトは、茶目っ気たっぷりに吐き出す。

そのあほ過ぎる言葉に咄嗟に応じることも出来ず、がくぽは凝然と弟の体を見下ろした。

床にへちゃんと座っていたカイトは、そもそもが大きくだぼつく甚平を着ていた。そのせいで、足が隠れていた。

足というか、下半身が。

「にーにったら、そんなじっと見ちゃって、ほんっとえっち☆」

「っ」

甚平の袷を掴んだまま固まる兄に、カイトは笑って言って、膝を立て、足を開いた。

だぼつく上着の下。

カイトは、下半身になにも着けていなかった。

それこそ、下穿きも、下着も。

上着を開いてしまうと、そこには滑らかな素肌が晒され、隠すものもなくすべてが明らかになる。

開かれた足の間に、遊んでいない証の初心な色をしたものがあり、そのさらに奥には――

「か、カイト……っ」

「はぁい」

掠れる声を絞り出したがくぽに、カイトはやっていることとそぐわないほどに明るい声で応える。

「な、なにゆえおまえ、下着を着けていない………」

「マスターが、伝統美って言うから」

「?!」

カイトの返した答えの意味がわからず、がくぽは瞳を見開いた。

兄の受けた衝撃に構わず、カイトは笑ってくちびるに指を当て、首を傾げる。

「ん伝統美様式美まあ、どっちでもいいけど。パジャマ半分こするんなら、男物の下着を着けるのは邪道だって。どうしても下着がないといやなら、女の子のすけすけぱんつがぎりで許容範囲って」

「ま、マスター………っっ!!」

カイトが連ねる言葉に、がくぽはがっくりと項垂れる。

うら若き女性であることに夢を見てはいけないと思うが、それにしても、もう少しなんとか。

「さすがにカイトも、女の子のすけすけぱんつはやだなーと思って。それだったら、のーぱんのほうがマシだから」

「待ちなさい、カイト」

「ん?」

平然と言葉を継ぐカイトに、がくぽは頭痛を堪えながら顔を上げる。

きょとんとしたカイトは、ひどく無邪気で幼気に見えた。が。

「そもそもどうして、寝間着を分ける」

「どうして?」

問いに、不思議そうに首を傾げられた。

「だって、にーにとカイトだもん。そういうものでしょ?」

「カイト、説明になっておらん………」

呆れるというより、どちらかというと諦めの境地で、がくぽは額を押さえた。

弟の感性は少し明後日な方向に向かっていて、本人的にはまったく疑問のない常識で、説明が説明として成り立たないことが多い。

「んと、にーには、すけすけぱんつのカイトが良かったのカイトはちょっとアレだけど………にーにが、そっちのほうがいーなら、次からそうするし」

「そういう話はしておらんのだ、カイト……」

すけすけぱんつ、で思わずカイトの下半身へと視線をやってしまい、がくぽはごくりと唾液を飲みこんだ。

いつ見てもかわいらしい色だと思う。

小柄な体に相応の大きさで、とはいえここのサイズについてはいくら兄弟でも微妙過ぎて、出来るだけ話題にしないようにしているのだが。

「………にーに、そんなに、じっと見ちゃや………」

「……」

じっと股間を見つめるがくぽに、カイトの声から、からかう調子が消える。羞恥に染まって、開いた足をわずかにもぞつかせた。

「ん………にーにぃ………」

袷を掴んでいたがくぽの手が滑り、今にも閉じようとするカイトの太ももを掴む。

開いたまま固定され、兄の熱心な視線に晒されて、カイトは口元を手で覆った。

「ふ………ゃだ、にーに………こんなの、ヘンタイみたいだよぉ………ぁ、カイト、ヘンタイみたい………っ」

カイトの肌が、徐々に徐々にすべて、赤く染まっていく。同時に、触れられてもいないものが、震えながら首をもたげてきた。

「ゃ、にーに………からだ、もぞもぞするぅ………さわられてないのに………ん、んん………っ」

掠れる声で言いながら、カイトはじっと見つめるだけの兄に手を伸ばし、垂れる髪を引っ張る。

「にーに、みてるだけじゃなくて………っぁんっ」

強請ろうとしたところで、太ももを掴む手に力がこもった。肌に爪を立てられて、カイトはきゅっと瞳を閉じる。

「触ってもないのに、にーにに見られているだけでこうなってしまうのか、カイトえっちなのは、カイトのほうじゃないのか?」

やたらと「えっち☆」とからかわれた意趣返しのようにささやく兄に、カイトは涙目を向ける。ぐすりと洟を啜ると、下半身に手を伸ばした。

腰を突きだすように体勢を変えると、兄に向かって奥まった場所を広げて見せる。

「か、カイトがえっちだとしたら、そーしたの、にーにだもん………にーにがカイトのこと、えっちにしたんだもん………だから、えっちなのはにーになの……っ」

「そうやって…」

がくぽは太ももから手を滑らせ、弟が自ら割り開いて見せた場所に触れた。ひくつく場所を撫で、親指で入口を開く。

「ぁ……っ」

「なんでも、にーにのせいにしない………にーにがいくらえっちなことをしても、カイトにえっちの素質がなかったら、こんなふうになるわけないだろうこんなにひくひくして………えっちじゃなかったら、見られただけでこんなにひくひくしないだろう?」

「ゃ、んっ………ふぁあ……っ」

入口をやわやわと揉まれて、カイトは起き上がっていられず、床に伸びた。びくんびくんと痙攣しながら、足を曲げる。

そのまま、足元に座る兄の下半身を、ぐ、と踏んだ。

「……カイト」

「にーにこそ………カイトのこと、みてるだけで………ここ、硬くしてる………っは、こんな………ぁ、かた………っぁん……っ」

「ふ……っく」

責めるようだったカイトの声が、足裏で兄の硬さを感じるうちに、甘く溶け崩れていく。

ぐにぐにと足裏で揉まれて、がくぽのほうも心地よさに呻いた。

「ん、にーに………カイト、硬いの欲しい………にーにの、欲しい……えっちでいーから………カイト、自分がえっちだって認めるから………にーにの、おなかのなか、ちょぉだい………」

「……く」

甘い声で強請られて、がくぽはカイトの下半身から手を離した。悪戯な弟の足を掴んで退かすと、下穿きを脱ぐ。

逞しく屹立するものが露わになって、カイトは陶然とした視線を向けた。その体には、未だにぶかぶかな上着が羽織られたままだ。

肌蹴られたそこから薄紅色に染まる肌が覗き、胸の突起がつぷんと勃ち上がっているのがわかる。

がくぽは舌なめずりすると、カイトの足を掴み直した。

「にーにぃ……」

「カイトは、本当にえっちだ」

「ん……っぁあ……っ」

言いながらがくぽが入って来て、カイトはぶるりと震えた。

自分を収めきると、がくぽは体を倒し、曝け出されたカイトの胸にくちびるを寄せる。硬くしこった場所に舌を絡め、音を立てて吸った。

「ぁ、にーに……っ」

「ふ……」

きゅう、と中が締まり、がくぽは満足そうに鼻を鳴らす。

「ぁ………ぁあ………っは………っゃんん………んん………っ」

ちゅくちゅくと音を立てて胸を舐め回され、カイトはきゅうきゅうとがくぽを締め上げる。

その刺激だけでも十分イけそうな気がしたが、がくぽはゆっくりと腰を使い出した。

「ぁ、にーに………っ両方だめ………っ頭ヘンなっちゃうからぁ……っ」

「カイト、まだまだだろう肝心の場所は弄ってないんだから」

笑って言い、がくぽは殊更にカイトと体を密着させた。そのまま腰を使う。

がくぽが腰を使うたびに、お互いの腹に挟まれたカイトのものが、いっしょに擦り上げられる。

「ぁ、あ、いた……っぁ、や、きもちい………っぁん、また痛い………っぁあんっ」

もがくカイトを押さえつけ、がくぽは腰の動きを徐々に早くする。追い上げられて、カイトは何度も仰け反り、逃げようとしたが、兄の力に敵うわけもない。

「ゃ、ぁあ、あ、にーに、にーにぃ………っいっちゃう……いっちゃうよぉ、にーに……っ」

「ああ、いいぞ。いくらでも……」

「や、ちがうのぉ……っ」

達かせてやるためにピッチを上げようとしたがくぽに、カイトは腰を挟んだ足をじたばたさせる。

「にーにと、いっしょにいきたいの………っにーにが、おなかのなかにだすのと、いっしょに……っ」

「……」

可愛らしいおねだりに、がくぽは束の間動きを止めた。カイトは涙に霞む瞳で、そんな兄を見つめる。

「とめちゃやぁ……」

「………ああ」

ふと笑うと、がくぽはカイトの下半身に手を伸ばした。破裂寸前になっているものの根元を、きゅ、と掴んで押さえる。

「ぃた………っ」

「にーにといっしょがいいのだろうもう少し我慢だ」

「ぁう………っひぃんっ………っ」

押さえつけたまま、がくぽは中を擦り上げる。それも、自分の快楽を高めるだけならともかく、カイトの弱い所だけを的確に責めながら。

「ゃ、にーに、にーにっ、だめっ、そこばっかり、も、にーに……っ」

「ふ……」

押さえこまれて達することも出来ず、けれど達するに十分な刺激をたっぷりと与えられて、カイトは滂沱と涙をこぼしながらもがいた。

その弟を眺めてタイミングを計りながら、がくぽは腰を使う。

「っひ、ぁ…………ぁあ………っ」

「………そろそろか……」

ふとつぶやくと、がくぽは一際強く腰を押しこんだ。カイトのものを握る手に、ぐ、と力をこめる。

「ひぃあ?!あ、あ…………ぁああ?!」

「………っく」

「ぁああ…………ゃああ……っ?!」

がくぽのものが腹に注ぎ込まれているのを感じながら、カイトは仰け反って震えていた。

兄は、カイトのものの根元を押さえこんだままだった。いっしょにいきたいと強請って、それを叶えたかのように見えたのに。

「ひ、ぅ………ぁ………っやぁ、なにこれぇ………っ」

「ああ、上手くいったな」

いつまで経っても絶頂の痙攣が止まらない弟を眺め、がくぽは満足そうに頷いた。

激しく噴出するというより、だらだらとだらしなく蜜をこぼし続けるカイトのものを撫でる。

カイトは震えながら喘ぎ、ひどく満足げな兄を見つめた。

「に、にーに………っゃ、とまんな………きもちい、の………とまんな………なんで………ぇ……っ」

「射精してしまうと、一瞬で終わるが……しないで『イク』と、そうやってしばらくの間、気持ちいいのが続くんだ」

基本的には詳しくない弟にもわかるように、言葉を砕いて説明してやる。

言ってから、がくぽは堪えきれず、震える弟を抱きしめて笑った。

「……カイトはえっちだが、そのえっちなカイトが好きで、カイトをえっちにしたのはにーにだから、やっぱりにーにがえっちだな」