目を据わらせて、カイトは憤然と迫る。

かわいい弟がそんなことをしてもかわいいだけだが、そこはそれ。

こちらには負い目やら罪悪感やらがある。

下手にかわいいのはさらにそこを煽ってくれて、がくぽは心理的にかなり追い込まれた。

うちのおとーとは、とっても初心です→

「にーに………カイトの初めて………責任………」

「ぅう………」

怨念がましく地を這う要求に、がくぽは高速で思考を空転させた。

だから、がくぽはそこそこやんちゃで――弟はあまりに初心で。

そう。

初心で。

「………」

「にーに……ん、わっ?!」

がくぽは唐突に、弟を抱き寄せた。後頭部をがっしりと押さえこんで、驚きに開くくちびるにくちびるを寄せる。

舌を伸ばし、くちびるが閉じる前に口の中に捻じ込んだ。

「ふ、ぁ………っ?!ぅ、ぅふ、う………っ!」

口の中を弄られ、慌てたカイトが腕の中でもがく。やんちゃな弟だ。しかしがくぽとの力の差は、歴然としている。

いつもはなんだかんだで弟に負けてやるがくぽだが、本気を出せば押さえこむことは容易い。

もがいても腕の力が緩むことはなく、がくぽはカイトの口の中を漁り続けた。

不慣れな弟の舌は、がくぽの舌から逃げ惑う。戦慄くくちびるは唾液を飲みこむことも出来ずに、とろとろと濡れていく。

「ん……っふ、ぅ……ぅあ………ぁ………っ」

抵抗が力を失くし、突っ張っていた腕ががくぽに縋りつく。

追い出そうとしてか、はたまた無意識の学習なのか、逃げ惑っていた舌がおずおずと伸びてがくぽの舌に触れた。

「ふ………っぁうっ」

がくぽは伸びた舌を自分の舌で絡め上げ、誘い出して軽く咬みついた。カイトの体が、大きく跳ねる。

再び逃げようとしたのを、ちゅ、と音を立てて吸い上げた。

「ふ………っ」

「………」

抵抗するしないの次元を突き抜けて、カイトの体から力が失われる。

くったりと腕の中で伸びたところで、ようやくがくぽはくちびるを離した。

糸を引きながら一度離れ、飲みこみきれなかった唾液でしとどに濡れた弟の口の周りを丁寧に舐めてやる。

がくぽの舌が肌を這うたびに、崩れるカイトの体はびくびくと跳ねた。

「カイト………」

「……」

ぼんやりと霞んだ瞳を覗きこみ、がくぽは甘く爛れた声を吹きこんだ。

「大人の、えっちなキスをしたことは?」

問われて、カイトはふるりと震えた。

「…………はじめて………」

当たり前だ。

くちびるにほんの少し、やわらかく触れただけのキスが初めてだったのだから、ディープキスなどしたことがあろうはずもない。

舌足らずで覚束ない口調で答えた弟に、がくぽは微笑んだ。

力なく崩れているカイトのマフラーを外し、コートの前を開く。シャツの上から、やわらかに体を撫でた。

「ん………っゃ………?!」

キスで感覚が尖ったらしいカイトは、ぶるりと震えて甘い声を上げた。垂れていた腕が持ち上がり、兄の胸を押す。

あえかな抵抗を無視して、がくぽは晒された白い首にくちびるを落とし、肌をぬろりと舐めた。

「ふぁ………っぁ、ぁあっ………」

マフラーでいつもいつも隠しているからなんとなく疑っていたが、やはりカイトは首が弱いらしい。ほんの少し舐めただけで抵抗は消え、胸を押していた手はがくぽに縋りついた。

「ぁ、ぁん、にーに………っひぅっ」

縋りながら下半身をもぞつかせるカイトの首に、がくぽはきつく吸いついた。

びく、と跳ねた体から一度顔を上げ、揺らいで震える瞳を覗きこむ。

「カイト………誰かに、こうして首を舐められたことは?」

「に………にーにが、はじめて………」

「咬まれたことも?」

「にーにが………」

やさしい声での問いに、カイトは呆然としたまま答える。

がくぽはカイトを覗きこんだままシャツをまくり上げ、露わにした胸に手をやった。手触りのいい肌の感触を楽しみながら、胸の突起をつまむ。

「ふっぁっ?!」

びく、と震えて、カイトは兄に縋りつく手に力を込めた。

救いを求めるように見つめるカイトに、がくぽは微笑んだまま、つまんだ場所をこねくり回す。

「ぁ、は………っぁ、やぁ………っふ、なに………っ?!」

「カイト、誰かにこうして、胸を触られたことは?」

怯えて体を跳ねさせるカイトに、がくぽは訊く。

カイトは首を振り、いつもやさしい兄を見た。

「ない………ない、にーにが………っぁ、やぁっ……」

首を振るカイトに満足そうに頷き、がくぽは顔を落とした。指でこねくり回され、ぷっくり勃ち上がった胸の突起を口に含む。

「ゃぁあ、にーに……っぁ、ゃ、ひぁ……っ」

ころんとした突起を舌で転がし、ちゅっと音を立てて吸う。もう片方の突起にも手をやって、両方を同時に攻めてやった。

カイトは仰け反って悶え、がくぽへとさらに胸を突きだすような格好になってしまう。

「ぁ、は、ぃや、にーに………っおなかへん………っふ、おなかが………ぎゅうぎゅうする………っおっぱい舐められて、おなかぎゅうぎゅうするよぉ………っ」

涙声でむずかるカイトに、がくぽはわずかに顔を上げた。胸から手を離し、『ぎゅうぎゅうする』という腹へと撫で辿る。

「ひ……っぅ……っ」

跳ねる体を抱えたまま、がくぽはカイトのくちびるに軽くキスを落とした。

「カイト。誰かにこうして、おっぱいを舐められたり、吸われたりしたことは?」

「ぁ……っあ」

敏感に尖った肌を撫でられて、カイトは言葉にならない。

がくぽは束の間腹から手を離すと、カイトをさらに抱き寄せ、潤む瞳を見据えた。

「カイト、答えなさい。誰かにおっぱいを舐められたり、吸われたりしたことはあるのか?」

「……」

カイトはふるふると首を横に振る。くちびるが戦慄いて空転し、震える舌が懸命に言葉を紡いだ。

「ない………ない…………だれにも、いっかいも…………にーにが……にーにが、はじめて………」

「良し」

頷くと、がくぽは再びカイトの腹を撫でた。

「ゃあ、にーに……っ」

びくんと跳ねたカイトの、本当に疼いているだろう場所を撫でてやり、がくぽはくちびるを舐めた。スラックスの中に押しこまれていては窮屈だろうと憐れむほどに、そこは張りつめている。

カイトの体を抱え直して膝の間に座らせ、自分に凭れかけさせると、がくぽはスラックスのボタンを外し、ファスナーを下ろした。

「にーに………っ?!」

足の間で竦んだ体をそれとなく押さえこみ、がくぽはスラックスと下着をあっさりと抜き取ってしまった。

ぷるんと震えて、反り返るカイトのものが露わになる。大人の形はしていても、遊んでいない証にきれいな色だ。

がくぽはこくりと唾液を飲みこみ、晒されたものへ手を伸ばした。

「ふ、ぁ…っぁあっ………」

やわらかに手に取って、軽く扱く。カイトはぶるりと震え、がくぽへと背中を押しつけた。

「にーに……っん……っ」

懸命に見上げてくるカイトに、がくぽはくちびるを落とす。やさしいキスをしてやって、熱を持つカイトの性器を扱き上げた。

「ん、ぁ………ぁあ、ふ……ぅ………っは、ぁあ………っ」

限界まで膨らんだものが、とろりと蜜を溢れさせる。濡れる先端に指をやって全体に広げると、ぴちゃぴちゃと水音が響いた。

「ふ……っ」

カイトがぎゅっと瞳を閉じ、顔を背ける。震える手で兄の袴を掴み、体をすり寄せた。

がくぽはさらに先端に指を這わせ、わざと大きく水音が立つようにする。

「ぁ、や……っん、きちゃぅ………きちゃぅ、いっちゃう………っ」

「カイト」

痙攣するカイトの耳に、がくぽはやわらかな声を吹きこんだ。

きゅ、と根元を掴み、射精を押さえる。

「ひ、にーに……っ」

「カイト。誰かにこうして、ここを扱かれたことは誰か別の人の手が、カイトの恥ずかしいところに触ったことは?」

「ぁ、にーに………にーに………っ」

押さえこまれ、カイトはぼろりと涙をこぼす。丸くなった足指がしきりと床を掻き、悶える体ががくぽに擦りついた。

がくぽは根本を押さえたまま、先端を撫で回す。

「ぅ、ふ……………にーに、だけ…………カイトのはずかしーとこ、さわったの………にーにが、はじめて………っ」

しゃくり上げながら吐き出した弟に微笑み、がくぽは根元を押さえていた手を緩める。

そのまま数回扱いてやると、カイトは堪えることも出来ずに精を吐き出した。