あらまほし
相対して座ったカイトを、がくぽは厳しい目で見た。
「飯を食わなかったそうだな」
「ぅ………はぃ………」
悄然と項垂れるカイトに、がくぽはますます瞳を険しくする。
「なにゆえ食わぬ」
「ぉなかが、いっぱいで…………」
カイトの言い訳に、がくぽは鼻を鳴らした。
「なにも食うておらぬで、いっぱいもクソもあるか。正直に言え、カイト。なにが不満だ」
「ほ、ほんとに、ほんとですぅ………っ」
詰問されて、カイトの瞳が潤む。その顔が、羞恥に紅く染まった。
「が………がくぽ、さまの、……で、ぉなか、いっぱいなんですぅ………っ」
「……」
かん高い声で吐き出された言葉に、がくぽは瞳を丸くした。
いたたまれない沈黙ののち、がくぽはくるりと瞳を回す。
「美味かったか」
「ぅ………っ」
きまじめな問いに、カイトはうなじまで真っ赤に染まり上がった。口を金魚のようにぱくぱくさせ、ぐすりと洟を啜り――
「………はぃ…ぉいしかった、です………」
「……っ」
甘く吐き出された答えに、がくぽはそっぽを向いて、口元を覆い隠した。
いけないとは思っても、笑いに顔が歪む。
「ぅ………っう~う~………っ。が、がくぽさまの、ばかぁ………っ」
「よしよし」
カイトは泣きべそを掻いて、がくぽの膝をぺそぺそと叩く。
がくぽは笑いながら、その手を取って体を引き寄せ、膝に乗せた。これ以上ないというほどに紅く染まったカイトの顔を上向かせて、軽く口づける。
「それはそれとして、飯は飯だ。きちんと食え。箸が進まぬというなら、俺が口に突っこんでやる」
「ぅ………っひぅ………っ」
引きつるカイトに、がくぽはにんまりと口を裂いた。
「俺に突っこまれるのは、好きだろう?」
「……っ」
カイトは仰け反って固まり、しかしすぐにがくぽの首にしがみついた。
「だいすきです………っ」
言葉とともに、くちびるの端に口づける。
がくぽは声高く笑い、カイトを抱きしめた。