わずかにくちびるが離れたところで、カイトはがくぽの髪を掴み、軽く引いた。
「これ」
がくぽは口づけを休み、笑いながら眉をひそめてみせる。
桐島、あのよろし
そのがくぽを、カイトは茫洋と潤んだ瞳で、熱っぽく見返した。
「もぉ…………だめ、です………がくぽさま………」
口づけの余韻で舌足らずに啼きながら、がくぽの首をかりりと掻く。
がくぽは瞳を細め、意地の悪い笑みになった。
「なんだ?もう降参か?」
わざと呆れたような声音で訊けば、カイトは恥ずかしそうに、けれど素直に、こっくりと頷く。
「はい、降参です………俺の負けです。だから…………ね?」
甘い声は、乞う色を含んでますます艶めく。
強請るとき特有の上目遣いで見つめられて、がくぽは軽く天を仰いだ。
降参だ。
どんなにか焦らして、意地悪をしてやろうと思っても、いつもいつもこの愛らしさに負ける。
「勝てる気がせんな」
「?がくぽさま?」
つぶやきに首を傾げられ、がくぽは笑って誤魔化した。
厄介なことには、負けることが心地いい。勝ちたい気がまるでしない。
「強請れ、カイト。そなたが強請るなら、望むものを望むだけ呉れてやる」
がくぽなりの降参宣言に、カイトは花開くように笑った。