煙管を求めて、手が伸びる。
「あ、がくぽさまっ」
「ん?……ん??」
呼ばれて顔を向けると、傍にやって来たカイトがへちゃんと座り、触れるだけの口づけをして寄越した。
表菅原、花見酒
にこにこ笑う彼の意図は不明でも、その気になったなら、見逃すがくぽではない。
「ぁ…………んく」
カイトの体を引き寄せると、くちびるを合わせた。舌を伸ばして、舐めあう。
「ん………んふ…………」
とろんと蕩けたカイトが凭れかかって来て、がくぽは機嫌よくくちびるを離した。
さらに手を伸ばして体を探ろうとすると、カイトは困ったようにその手を押さえる。
「だめ……です。口づけだけ、です………」
「なにゆえだ?」
笑って訊くと、カイトは凭れたまま、記憶を漁るような上目遣いになり、首を傾げた。
「聞いた話なんですけど………煙管が欲しいときって、口寂しいときなんですって。だからがくぽさまも、口寂しくなると、煙管が欲しいのかなって思って………」
「ふうん?」
そういうことも間々あるが、それだけが煙管を好む理由でもない。
しかし特に訂正もせず、先を促したがくぽに、カイトは頬を染めて俯いた。
「………口寂しくていらっしゃるなら、俺が口づけしたらいいんじゃないかって、思ったんです……そしたら、気が紛れるでしょう……?」
「……」
誰かは知らないが、いい仕事をしてくれた。
がくぽはにんまりと笑うと、俯くカイトの顎を掴んで上向かせた。
「一度では足らぬぞ?煙管を吸う間と同じくらい、していて貰わねば」
性悪に吐き出された言葉に、カイトは束の間、瞳を見張る。
しかしすぐにうれしそうに笑うと、がくぽの首に手を掛けた。
「はぃ、がくぽさま………」
恥じらいながら頷いた顔が、近づいてくる。
笑みに歪む口を覆う熱に、がくぽはさらにカイトの体を抱き寄せた。