「おかえりなさいませ、がくぽさ…………ん?」

満面の笑みでがくぽを迎えたカイトだが、ふっと眉をひそめた。

茶屋噺

傍らに座ったがくぽが手を伸ばすのを避けて、着物の袖を掴む。

「がくぽさま、こんなとこに鉤裂きなんてこしらえて…………また、やんちゃなさってきましたね?」

「……………大人にしておったぞ」

一瞬だけ目を泳がせたものの、しらっと答えたがくぽを、カイトはきりっとして見た。

「誤魔化されませんからね危ないことはしないでくださいと、あれほど……んんっぅくっ」

お説教の途中で、カイトは口を塞がれた。

強引に体を抱き寄せて口づけたがくぽは、説教する舌が痺れて役立たなくなれとばかりに、熱烈に口の中を漁る。

「ん………ふぁ………っ」

蕩けかけて、カイトは懸命にがくぽの胸を押して抵抗した。

「ご………誤魔化され……ませんから…………っ」

「カイト、愛しているぞ」

「ふぁっ」

どろりと蕩けた声で甘くささやかれ、カイトの体がびくりと跳ねる。

「ご、ごま……ごまか…………っ」

「カイト、そなたは言うてくれぬのかもう俺には、愛想が尽きたか」

「そんな、そんなこと………っ」

耳に吹きこまれる声は、毒にも似て甘く身を灼く。

胸を押して抵抗していたカイトの手が、がくぽの首に回った。

「愛してます、がくぽさま………」

「そうか」

「…っ」

とろりと溶けた声で告げた瞬間、がくぽが閃かせた笑みはあまりに無邪気で、うれしそうだった。

カイトは陶然となって、見惚れる。

「がくぽさま……」

「愛しているぞ、カイト」

「はい…………はい、俺も………っん……っ」

甘く溶け崩れるカイトのくちびるを、がくぽは思う存分に味わった。