我ながら改心の出来に活けられた花瓶を持ち、カイトは自分が多く日を過ごす座敷へ入った。
入ってみればそこには、夫が先にだらりと寝そべっている。くちびるには煙管を咥えて、暇を持て余す風情だ。
「あ、がくぽさま。いらしたんですね!」
がくぽを呼ぶカイトの声は、自然と弾んだ。
花菱
花を活ける自分の傍にいないものだから、てっきりまた、ふらっと出かけているものだとばかり。
カイトは声のみならず、表情も足も軽く弾ませてがくぽの傍らを通る。
飾る場所に花瓶を置いてきたら、存分に馴れ合おう。
そう思いながら、寝そべる夫へ花瓶とともに笑顔を向けた。
「ね、がくぽさま!お花、始音のお義母さまからいただいたんです。綺麗で…………っひきゃぁっ?!」
しかし皆まで言う前に、カイトのくちびるからは悲鳴が上がった。
「よ、っと………」
自堕落な姿勢一転、煙管も一瞬で放り出したがくぽは、傍らを通り過ぎようとしたカイトを強引に畳に転がしたのだ。
カイトが体を打ちつけて、痛めるようなことはしない。器用に受け止め、やわらかに畳へ転がした。
ついでに、転がり落ちかけた花瓶も器用に受け止めて、そっと置く。それでもさすがに乱れたところは、手を加えてざっと直した。
そのうえで、驚きに呆然と固まっているカイトに伸し掛かる。
「って、え、ちょ、が………がくぽさまっ?!な、なに、なにしていらっしゃ………ひきゃっ、ゃぁあっ!」
もちろんかわいいおよめさま相手に、がくぽが転がして伸し掛かるだけで終わるわけもない。
手馴れたしぐさでカイトの帯は解かれ、着物の下があられもなく崩されて肌が晒される。
さすがに我に返って慌てたカイトは、割り開かれる足をじたじたともがかせたが、がくぽが堪えることはない。
どころか殊更に大きく開かせた状態で、がっしりと押さえ込んだ。
「ま、真っ昼間っから………お、お花だってっ!い、いきなり、なになさるんですかっ?!」
じたじたもがきながら裏返った声で詰るカイトに、押さえこんだ足の間に顔を落としたがくぽは、きっぱり答えた。
「そなたを舐めたくなった。ゆえに転がした」
「な…………っめた…………………っっ」
悪びれる素振りもない、あまりに堂々としたがくぽの答えに、カイトは絶句する。
動きも止まって見つめるカイトを、がくぽは臆することなく見返した。
そうして見合うこと、数瞬。
ややしてカイトの目元は、ほわりと染まった。瞳が甘い熱を宿して、堪えようもなく潤む。
きゅぅうんと胸をときめかせつつ、カイトは胸の前で手を組むと、つぶやいた。
「がくぽさま、かっこいいっ………………」