紅鬼灯と鈴音色

座敷に入って来たがくぽを、カイトはふわわっと頬を染めて見た。

「あの、がくぽさま………こんなお願い、はしたないってわかっているんですけれど…………でももう、自分ではどうしようもなくって」

もじもじもじもじと盛大に恥じらいながら、カイトは色めいたしぐさでがくぽの傍らににじり寄る。

背を撓めると殊更に上目遣いとなり、うるるんと熱っぽく潤んでがくぽを見つめた。

「あの、………しばってください、がくぽさま………」

熱っぽく潤むのは瞳だけではなく、おねだりを吐きこぼす声もだ。蕩けて甘く、カイトはさえずる。

「俺………自分のことなんですけど、自分ひとりじゃあ、どうにもうまくできなくて。こんなこと、夫であるがくぽさまにお願いするなんて、はしたないって、わかっているんですけれど……」

「………」

恥じらいながらもおねだりを吐きこぼすカイトに、がくぽはくちびるを半月型に歪めた。笑みだ。強いて言うなら。あまりに凶悪であっても。

そうやってがくぽは、しどけない姿であられもないお願いをするおよめさまを、上から下までさっと検めた。

帯は解けて垂れ、着物は半ば脱げかけだ。

そしてがくぽを見つめる、潤んで熱い、期待に満ちた瞳。

「ふ、カイト………」

凶悪に歪んだくちびるから笑いを吹きこぼし、次の瞬間。

「そなたな、いったい何年着物を着てきて、そういう言葉遣いをするか、カイト帯は『結ぶ』ものであって、『縛る』ものではないわ言葉は正しう使え!!」

「ひぁあああんっがくぽさまっ、がくぽさまっ、くるし、くるしっっぃいい!!」

くどくどしい説教をこぼしつつ、がくぽはかわいいおよめさまが強請ったまま、結い上げられずに垂れている帯をぎゅぅううううっっときつく巻き、そうでなくとも華奢な体をさらに締め上げた。

さすがに呼吸が詰まったカイトが、背を反らせて悲鳴を上げ、じたじたしながらがくぽに容赦を乞う。

ふっとひとつ息を吐いて気を落ち着かせたがくぽは、帯の端を握ったまま、こっくりと生真面目な表情で頷いた。

「そうか、カイト苦しいかではそんな帯、解いてしまおう」

言うや否や、おっとりとしたおよめさまが反応するより早く、巻いた帯を解いた。

ついでに着付け途中だった着物も諸共に剥ぐと、無防備な姿で呆然とするカイトを畳へ突っ転がし、その上に迷いもなく伸し掛かるや、くちびるを吸いつかせた。