甘やかしたがりさんのホットケーキ
スクールバスからおりると、ヒメハナはバス停に立っていたがくぽにかけよりました。
「がくぽ、ただいま!」
「お帰り、マスター」
かけよったヒメハナを、がくぽはかるがるとだっこしてくれます。
ぺたんとほっぺたをくっつけるアイサツをすると、がくぽはヒメハナをだっこしたまま、あるきだしました。
いつもいつもカイトに、「おまえはマスターのことを甘やかし過ぎだ」ともんくを言うがくぽです。
でもヒメハナは、がくぽのほうがカイトよりずっと、ヒメハナのことを赤ちゃんみたいに甘やかすと思います。
「がくぽ、今日のおやつはなに?」
「ホットケーキだ」
「ホットケーキ!」
がくぽの答えに、ヒメハナはよだれをたらしそうになりました。
「カイトのホットケーキ……………!ヒメハナ、大好き!!」
首にうでを回してぎゅっとしがみついて言うと、がくぽはちょっとこまったみたいに、頭をふりました。
「ああ、いや……………すまん。今日は俺が作った」
「がくぽが?!」
ヒメハナはおどろいてさけびました。
がくぽは甘いものが苦手です。だからいつも、おやつはカイトがつくるのに――
「カイトになにかあったの?ぐあい悪いの?」
あわててきいたヒメハナに、がくぽは肩をすくめました。
「いや、マスターが留守の間にな……………カイトがあんまりにも可愛らしいことを言ってな?愛しさが募ってさっぱり抑えが利かず、思わず念入りに愛してしまってな」
「???」
がくぽはときどき、ものすごくむずかしい言い方をします。
ちょっと考えて、ヒメハナはがくぽの顔をのぞきこみました。
「つまりカイトは………がくぽにいっぱい愛されすぎて、とろけちゃったの?」
きいたヒメハナに、がくぽは声を上げて笑いました。
ヒメハナを片手にだっこしたまま、あいている手でちょっとらんぼーに、ヒメハナの頭をなでます。
「マスターはいい女だな。そのまま育てよ!」