毛布を投げてかっ飛んでくるライナス

「いーか、がくぽ。かぼちゃ大王は、オバケだ。オバケは、絵本の中にはいるけど、ほんとーには、いない。いないんだから、俺はかぼちゃ畑に行かないし、かぼちゃ大王はつかまえない」

膝の上に座ったカイトに懇々と説かれ、がくぽは首を傾げた。

なにとははっきり言い難いが、なにかが理不尽な気がして、腹がもやつく。

同時に、感慨もある。ウチの子ったらいつの間にかこんなこと言うようになって的な、あれだ。

がくぽは複雑な腹の内を持て余しつつ、微妙にふんぞり返るような姿勢で膝の上に座るカイトを見た。

「まあ、わかった――かぼちゃ大王は、いないのだなしかし、カイト……サンタクロースは、いるのだよな?」

「もち!!」

窺うような問いに、即答が返る。まるで迷いも躊躇いもない。

複雑さを増す腹の内を堪えるため、きゅっとくちびるを引き結んだがくぽへ、カイトはにこぱっと、満面の笑みを向けた。

「だってがくぽ、がくぽはかぼちゃ大王コワイけど、サンタはコワくないんでしょ?」

「…ん?」

――確かにがくぽは、かぼちゃ大王を苦手としている。そのものがというより、芋づる式に厭な思い出が引き出されるのが、苦手なのだ。

対してサンタクロースには、ことに思い入れがない。可もなく不可もなくといったところだ。カイトは毎年のように、今年こそ捕まえると息巻いているが。

だからなんだときょとんとしたがくぽに、カイトは明るく言い切った。

「がくぽがコワがらないから、サンタはいてもいい」

「…っ!」

はっと花色の瞳を見張ったがくぽの首に腕を回し、カイトはぎゅうっと組みついた。

反射だけで抱きしめ返したがくぽに、それでもカイトは懐いて擦りつき、笑う。

「がくぽ、がくぽ今年はサンタ、つかまえるそんで、がくぽにあげるね!!」