「かいちょ……」
呼びかけの途中で、くちびるを塞がれた。
肝心の、会長――カイトのくちびるに。
図書室の、特別に許可を得たものだけが入れる、倉庫の中だ。カイトとがくぽ以外に人はいないが、それにしても。
calling
触れただけで離れたくちびるを凝然と見つめるがくぽに、カイトはいたずらっぽく笑う。
ぴ、と人差し指で自分のくちびるを叩いて、示した。
「お仕置き。俺のことは、『カイト』って呼んでって、言ったよね?」
「…」
軽く告げて、カイトは再び本棚に顔を戻す。一冊抜き出すと、がくぽが持つ段ボールの中に放り込んだ。
重みを増した段ボールを抱え直し、がくぽは一度、首を傾げる。
それから、くちびるを開いた。
「会長会長会長かいちょうかいちょう」
「ん?」
連呼されて、カイトはきょとんとがくぽを見上げる。
がくぽは素知らぬ顔で、本棚を眺めた。
「『お仕置き』するのだろう。おまえのことを『会長』と呼んだら」
「……」
カイトは瞳を瞬かせる。
がくぽの言葉の意味を考える間があり、それから、ふ、と吐息のような笑い声をこぼした。
「……………お仕置き、されたいの、がくぽ?」
「おまえには逆らわない」
がくぽの答えは婉曲的だ。カイトはますます笑った。
「困ったやつ」
「『問題児』だから、生徒会長直々に『監視』しているのだろう」
「もう……」
減らず口にも、カイトは笑うだけだ。
手が伸びて、がくぽが持つ段ボールを、ぽん、と叩いた。
「ちょっと下ろして」
「…」
言われるままに、がくぽは素直に段ボールを足元に置く。
相対して見つめると、カイトの手が首へと伸びた。
「いっぱい言ったから、いっぱいお仕置きするよ?」
「ああ」
「お仕置きなんだから、いやがること、するんだからね?」
「ああ」
首に腕が回り、がくぽは軽く震える。けれど抵抗することなく、身を屈めた。
瞳を伏せたカイトのくちびるが近づき、くちびるに触れて、離れる。何度も、何度も。
「がくぽ……っんんっ」
甘く呼ばれて我慢出来ず、がくぽはカイトの体に手を回して抱えこみ、開いたくちびるに舌を差しこんだ。