副会長の初音ミク曰く、「キ○ガイ沙汰に重い」段ボール箱を、がくぽはどん、と生徒会室の机に置いた。
これで最後だ。
欲張りな君⇔あなた
「やったあ、終わったぁあああ!!」
「うわぁあん、もぉリン、へとへとだよぉおおお!」
段ボール箱が山と積まれて雑然とした生徒会室で、がくぽと同じく荷運びに従事していた役員たちが、泣き笑いの歓声を上げる。
「おっつかれ~、みんな☆」
「っああっ、逃亡会長っ!!どこ行ってたのっっ!!」
その生徒会室に、のほほんと顔を出したのが、荷運びの途中で姿を消したカイトだ。
仮にも生徒会長だ。
率先して現場を取り仕切るべきところ、部外者のがくぽまでも容赦なくこき使っておいての、逃亡。
至極当然の非難と抗議の声を上げる役員たちに、カイトは悪びれることもなく笑い、びらっと五枚、千円札を掲げてみせた。
「じゃんっ♪せんせーから、みんなへの『ご褒美』をぶんどって来ましたぁ☆」
「っきゃあああああああっっ!!かいちょぉ、だいすきぃいいい!!!」
ころりと態度を変え、役員たちは喜色満面でカイトに飛びつき、わやくちゃにした。
笑い合う彼らを遠巻きに眺め、がくぽはため息をつく。
「荷物番は俺がしてるから、みんなでいっしょにお買いもの行っておいで。喧嘩したり、先輩風吹かせたりしないんだよ?ちゃんとみんなで仲良く分けっこ。ね?」
「はぁーいっ!!」
やさしく言い聞かせたカイトに良い子の返事で応え、役員たちは疲れもどこへやら、笑いはしゃいで廊下を走って行く。
「こら、廊下は走らなーいっ!!もぉ………あれ?」
廊下に叫んで生徒会室に顔を戻し、カイトはきょとんとした。
振り返れば、段ボールに凭れて、がくぽがいる。
「がくぽ、がくぽも行っておいで。ご褒美の権利、ちゃんとあるっていうかむしろ、いちばんご褒美貰わないとでしょ?いちばんたくさん、それも、重いものばっかり運んでたじゃない」
「俺が菓子やらジュースやらで、喜ぶ性質だとでも?」
鼻を鳴らしたがくぽに、カイトは笑った。
「喜ぶとこ、見てみたいけど………しょーがないな。じゃあ俺が、直々になにかあげよう。なに欲しい?」
微笑んで覗き込んで来たカイトに、がくぽはぐ、と顔を近づけた。
「おまえが欲しい、カイト。今すぐに」
「…………俺?」
きょとんとくり返し、瞳を瞬かせ、しばらく沈黙してから、カイトはほわわ、と赤くなった。
「今すぐって…………ここ、で?」
「裏庭か屋上に行ってもいいが、荷物を放り出しては行けないのだろう」
「そ……なんだよ、ね」
遠回しだがきっぱりと、ここで、と告げられ、カイトはさらに赤くなって俯いた。
ややして顔を上げると、潤んだ瞳でがくぽを見つめ、その首に腕を回す。
「しょーがない…………いちばん、がんばったんだもん。……………俺をあげる」
熱っぽい吐息をこぼすくちびるに、がくぽは咬みつくようなキスを落とした。