「かーいーちょっ♪ミクが調理実習で作ったクッキーあげるー♪」
「あ、会長、リンもリンもっ!マドレーヌ作ったから、あげるねっ!」
かわいくラッピングされた小袋を渡され、カイトはうれしそうに笑った。
「ありがと、ミクちゃん、リンちゃん。こんなかわいーラッピングまでしてくれて……。もしかして、わざわざ用意してくれたの?」
「「もちっっ!!」」
力いっぱいに頷く女子生徒から、人気者の生徒会長へのプレゼント――が、すでに、紙袋二つ分。
スイート・スイーツ
「……………………………どうする気だ、それ」
下駄箱から靴を出しつつ訊いたがくぽに、カイトはごく当然と笑った。
「全部食べるよ?」
「はっ」
なにを訊くのかとばかりに答えられ、がくぽは鼻を鳴らす。
面白くない。
まったくもって、ちっとも、物凄く、面白くない。
生徒会長が愛されキャラであることは重々承知していたが、しかしいいか――カイトは自分のものだ。
誰に公言することがなくても、秘した関係であろうとも、カイトは自分のものなのだ。
なにをひとの目の前で、女子生徒から手作りお菓子を貰っているか。
それも、至極うれしそうに!
「食べても大丈夫な子からしか、貰ってないし♪」
「そうか」
楽しそうなカイトから顔を背け、がくぽは靴を履き替える。
カイトが甘いもの好きであることも、もちろん承知していて――それでもどうしてもどうしても、蟠る、思い。
カイトは笑って、鞄の中からひとつ、青いリボンでかわいくラッピングした小袋を取り出した。
中身はクッキーだ。
「はい、がくぽ」
「俺は甘いものは、った?!」
見向きもせずに歩き出そうとしたがくぽの後頭部を、カイトは取り出した小袋で殴る。
大した痛みではないとはいえ、思わず振り返ったがくぽを見上げるカイトの笑顔は、怖いようだった。
「神威がくぽくん?サボりの常習犯である君は、知らないだろうけどね。世は現在、男女共同参画の時代なのだよ。調理実習を受けるのが、女子だけだと思うな?」
「…っ」
がくぽは瞳を見開き、カイトが差し出す、かわいらしいラッピングの施された小袋を見つめた。
ややして、ひったくるように袋を取る。
「有り難く貰う」
「よろしい」
偉そうに頷くカイトに、がくぽは笑い崩れた。