雨風凌げて、二人きりになれる場所――学校で。

裏庭も、屋上も却下。校舎の空き教室も、微妙に落ち着かない。

そんなふうに消去法で探して行って、残ったのが、校庭の隅に建つ体育倉庫――だとしても。

No man's Land

「ん………もぉ、……がく……んん」

掛けられていた南京錠は、がくぽがあっさり外した。

引きちぎったわけではない。少しばかり捻ったら、簡単に外せたのだ。

――南京錠は、外すのにコツがある。それさえわかれば難ない。

悪びれる様子もなく言ったがくぽは、陸上用のマットの上にカイトを押し倒した。

そうしてカイトに降り注ぐ、キスの雨。

外に降る雨は冷たく体を凍えさせるけれど、この雨は――

「ん………んく………がく……ふぁ」

伸し掛かるがくぽに縋りつき、カイトは焦れた声を上げる。

降り注ぐ、キスの雨――やさしく、ふわふわと。

けれど、ふわふわ、触れるだけで離れられて、火が灯りつつある体にも心にも、ひたすらにもどかしい。

そういうキスも、もちろん好きだけれど――そろそろ、キスの湖に、溺れたい。

息もつかせぬほどに深く貪られて、苦しさに喘いで。

「がくぽぉ……」

「ん……」

触れ合う体が熱くなっているのは、確か。がくぽだとてきちんと、煽られている。

その感触に気がついてしまえば、なおのこと体が熱くなって、もどかしさが募って。

堪えきれずに、カイトはがくぽの胸座を掴んだ。引き寄せると、くちびるを合わせて舌を伸ばす。

「ふ………んぅ、………ぁ……っ」

「は……っ」

応えるがくぽが、深くカイトに沈みこんで来る。

重い。

重い――けれど。

「がくぽ……」

カイトは甘く呼びながら、首に辛うじて引っかかっているだけのがくぽのネクタイを、軽く引く。

するりとほどけたそれから、シャツのボタンへ。

「………ね?」

重なっているだけでなく、体が熱い。

潤む瞳で熱っぽく見上げるカイトに、がくぽは笑った。

「人も来ない、押し倒しても体が痛いと醒めない――か。いい場所だ」

その言葉に反論を紡ごうとしたカイトのくちびるが、実際にこぼしたのは甘い悲鳴だった。