呼ばれていようがいまいが、関係はない。今日もがくぽは、勝手に生徒会室へと顔を出した。
そして誰になにを言われる前から、カイトの前の席に座る。
サディスティック・スレィヴ
プリントを眺めて眉をひそめていたカイトは、顔を上げることもない。
それでも構わず、がくぽはだらりと椅子に伸びた。
「がくぽ」
「なんだ」
名前を呼ばれて、応える。カイトはプリントを睨みつけたままだ。
「『おすわり』」
「………」
すでに座っている。
瞳を瞬かせるがくぽを、カイトが見ることはない。ただ、片手を差し出した。
「『お手』」
「………」
反射で、がくぽは差し出されたカイトの手に、右手を乗せた。
カイトはその手を軽く弾き返し、手首を閃かせる。
「『おかわり』」
がくぽを見ないまま、渋面で吐き出される、カイトの『命令』。
なにかしら機嫌が悪いらしいと察して、がくぽは反論の声を上げるでもなく、おとなしくカイトの手に左手を乗せた。
カイトは乗せられた手を辿って、がくぽの手首をきつく掴むと、自分の方へ引き寄せる。
逆らうことなく引き寄せられたがくぽと額を突き合わせると、瞳を尖らせて睨みつけた。
「がくぽ、君、知ってる?最近の君の評判。『神威がくぽは会長が足を舐めろと言ったら、舐める』って」
「………………舐めさせたいのか」
端然と訊いたがくぽに、カイトは盛大に眉をひそめ、顔を引いた。
「舐めたいの、がくぽ?」
「おまえが舐めろと言うなら、逆らわない」
「………」
がくぽの答えに、カイトは思いきり顔をしかめた。
手首を放すと、椅子にふんぞり返る。机の下から片足を伸ばし、乱暴なしぐさでがくぽの膝に乗せた。
「舐めて」
「……」
とっておきに機嫌を損ねたことだけは、よくわかった。
がくぽは肩を竦めるとわずかに身を引いて、カイトの足を捧げ持つ。
靴と靴下を剥ぎ取ると、筋張った足の甲にくちびるを落とした。
「んっ」
びくりと竦んだのをきつく掴んで逃がさず、がくぽはそのまま舌を伸ばして、甲を辿って足首を舐めた。
くるぶしにてろりと舌を這わせて形をなぞり、骨に咬みつく。
「っひ、ゃ………っ」
びくびくとひくつくカイトは真っ赤に染まって、瞳を潤ませている。
その顔から険が取れたことを確認して、がくぽは足首にくちびるをつけたまま、笑った。
「足を舐められるのも、悪くないだろう?」