危機管理意識がなっていないと思う。
無防備だ。
無警戒。
無思慮。
ありとあらゆる言葉を尽くしても最後には、危機管理意識がなっていない、という結論に落ち着く。
膝の上のおひさま
「ん……ふにゅ…………」
「………………」
健やかな寝息。
緩やかに上下する胸と、薄く開いたくちびる。
閉じた瞼に余計な力はなく、心から安らいでいるとわかる。
「……………………っ」
なにか叫びたいような思いが突き上げて、がくぽは歯を食いしばった。
叫ぶ代わりに、膝に抱いたカイトを強く抱きしめる。
「ん……ふっ、……………………ふにゅー……」
一瞬だけ呼吸を詰めたものの、カイトの寝息はすぐさま、健やかさを取り戻す。
「くそ」
小さく、ちいさく。
がくぽのくちびるから、罵倒がこぼれた。
生徒会室が、生徒会長であるカイトのテリトリーで、安全域だという意識があるにしても。
昼休みの今は、他の役員がいるでもない。カイトとがくぽの、二人きりなのだ。
名高い『問題児』である、がくぽと――
それなのに。
――んー、ねむいー。がくぽ、だっこぉ……。
ごく当然と縋られて、甘えられ、安らがれた。
「ん………………くふ、………ふ」
こぼれる寝息は、安らかで。
落ち着いて、緩やかに。
問題児の膝の上に乗って、胸に凭れて、抱きしめられて――
どうして、安らぐのだろう。
どうして、安らいでくれるのだろう。
全身を預けて、言葉にも因らずに、信頼していると告げられる。
差し出される手も、向けられる笑顔も、与えられる言葉も、すべてすべてが得難く心に降り積もるけれど。
「……………………っっ」
膝の上の、ぬくもり。
判然としないままになにか、叫びたい思いを堪えて、がくぽはカイトをきつく抱きしめる。
預けられる頭に顔を埋めると、太陽の香りがした。