昼休み終了五分前を告げるチャイムが鳴って、がくぽは小さくため息をついた。
騒がしかった体育館もボールの音が鳴り止み、ざわめきとともに生徒が三々五々に散っていくのがわかる。
スキトキメキトキス
「………おい、起きろ」
引き上げていくざわめきを聞きながら、がくぽは膝の上で眠るカイトに声をかける。
体育館の中ではなく、その裏庭だ。
ここ自体に人気はないが、生徒の腹ごなしの運動のために体育館が解放される昼休みは、そのざわめきが響いてうるさい。
背後の壁にボールがぶつかってけたたましい音を立てることもしょっちゅうだし、そうそう昼寝向きの場所とは言えない。
しかし昼食を食べ終わったカイトは当然のようにがくぽに膝を要求し、その上にちょこなんと座ると、安定感のある体に凭れかかって寝入ってしまった。
さすがは敏腕会長、根性の据わりが違うとでも感心すればいいのか。
「昼休みが終わるぞ、会長。授業に……?!」
「ん………」
寝惚けた瞳のカイトは手を伸ばし、がくぽの頬に添えると軽く招き寄せ、愛らしく口づけてきた。
ちゅ、ちゅ、と軽くくちびるに触れて離れ、触れて離れをくり返す。
「ん……ん」
「……っと、待てっ、このっ………っ」
「んー?」
混乱と、――わずかな、そして深刻な苛立ちと。
がくぽは羽ばたくようなキスをくり返すカイトの頭を掴み、もぎ離して睨みつけた。
「誰と間違えている?!」
小さく叫ぶと、カイトは寝惚け眼のまま、とろんと笑った。
「がくぽ」
「…………」
「がぁくぽ………」
思わず力の抜けた手から逃れて、カイトは再びがくぽへとキスをくり返す。
しばらく呆然としていたがくぽだが、ふとくちびるを引き結ぶと、カイトの頭を掴んで上向かせた。
「が………んんっ、ふ……っぁ、んんんっ」
口の中まで貪る激しいキスに見舞われて、カイトは甘く掠れた悲鳴を上げた。