「がぁあくぽっ!元気ないっ!!」
「っっ」
一人で昼食を食べ終わり、ぼんやりとしていた体育館裏だ。
不透明ドロップ
がくぽは学校内に複数箇所、隠れる場所を持っている。
しかしそのすべては今、目の前に立つ生徒会長――カイトに、筒抜けだ。
さらにどういうわけかこの会長、複数箇所あるというのに、がくぽの現在地を確実に当ててくるという、わけのわからない特技を持っていた。
今日も今日とて特に探し回ったふうでもなく、カイトはがくぽの前に膝を抱えた恰好でちょこんと座る。
「お昼も一人で食べちゃうし。てか、食べた?なに食べた?ちゃんとしたもの食べた?」
「いちいちうるさいな。おまえは俺のなんだ」
不貞腐れたように顔を逸らして腐すと、カイトはわずかに沈黙した。
いつもいつも、なんでもいいからとにかく即答してくる相手だ。
思わず視線をやると、カイトは意外にもまじめな顔でがくぽを見つめていた。
「なんだろうね。がくぽは、なにがいい?なんだと思ってるの?」
「………」
まさか、問い返されるとは思わなかった。
――そしてまさか、自分がなにも言えなくなるとは。
赤の他人だとか、生徒会長と問題児だとか、監視する者とされる者だとか、いくらでも。
突き放す言葉ならいくつもいくつも頭に浮かぶのに、声帯を震わせ音として発することが、出来ない。
「俺は、がくぽの、なに?」
「……………」
じっと見据えられて、問われる。
視線を外すことも出来ずに、がくぽはひたすらカイトに見入った。
膝を抱えていたカイトは腕を解くと、魅入られて動けないがくぽへと、ゆっくり身を乗り出す。
「がくぽ。答えて」
くちびるに、吐息が触れる。
間近過ぎて見えないカイトを、がくぽはそれでも見つめた。
「がくぽ。君は、俺のなに?」
やわらかな感触が、くちびるを撫でたような気がした。
がくぽはこくりと唾液を飲みこむと、口を開いた。
「犬」